Benthamと私


2023年10月29日、新宿LOFTとLOFT BAR往来のイベント「FASTMUSIC CARNIVAL」が行われた。

このイベントの主催バンドであるBenthamは、私が大学生の頃に”パブリック”という曲で初めて知った。なのでおよそ8年ほど前から知っているバンドだ。


その頃大型フェスにもちょこちょこ参加していた私にとっては、当たり前のように様々な場所や媒体で名前を見ていた。これから売れるバンドだというイメージがとても強かった。それこそKEYTALK全盛期、四つ打ちダンスビートが邦ロックを支配していた時に、Benthamはその世相を捉えながら、独特で耳から離れない歌声、そしてメロディで私の心をグッと掴んだ。

先述した"パブリック"の後にも、”クレイジーガール””TONIGHT””僕から君へ"などなど…次々にキラーチューンを生み出すバンドだなと新曲を出すたびに常々思っていた。今思えば、金欠学生だったあの頃の私とはいえ、頑張ってライブにもう少し行っておくべきだった。

新陳代謝が激しいバンド業界、いつからかBenthamの名前をあまり見なくなった。というより、それ以外のバンドが台頭していたのに加えて私の音楽趣味が一時期ガラッと変わったせいで情報収集を怠っていたからだ。もちろんニュースリリースで流れてくることはあるが、逐一チェックしていたわけではなかった。


大学を卒業してから、私はバンドを組んだ。もちろん小さいライブハウスからのスタートで、対バンのバンドも同じくインディーズばかり。近くにもいいバンドはたくさんいて、次第にメジャーバンドを見なくなっていってしまっていた自分がいた。

個人的なことなので割愛するが、2022年の初めにひょんなことでBenthamのフロントマンであるオゼさんと間接的に知り合った機会があった。初めてはLINEでの会話だったが、内心私はとても緊張していた。「マジかよ、あのBenthamのボーカルのオゼさん…!?」となっていた。

連絡を取る前に、そういえばと思いBenthamの現状を調べた。Benthamは10周年を迎えていて、その時期近辺でリリースしていた曲を聴いて、音楽性も昔より明らかにブラッシュアップされている印象を受けた。もちろん私より先輩ではあるが、未だに最前線でバリバリやっているんだなというイメージに更新された。

その後、自分のバンドが新代田FEVERでツアーファイナルを行う際の対バンとして、完全に当たって砕けろ精神でBenthamをオファーした。なんと快諾。嘘かと思った。こんなことあり得るんだと思った。自分のバンドの企画にあのBenthamが出るぞ!と大学生の自分に聞かせてやりたかった。無論、友人にはめちゃくちゃ自慢した。

2022年5月30日、新代田FEVERで自分のバンドである初恋モーテル、Bentham、そして後輩であり一瞬でレーベル決まってた爆イケバンド藍色アポロの3マンでツアーファイナルを敢行した。めちゃくちゃ楽しかった。そしてBenthamのライブはすんごかった。格が違った。
自分たちの出番が終わって、楽屋にハケた時、オゼさんがめちゃくちゃ褒めてくれたことを俺は一生忘れない。

何故か中央にいる井田

それから、オゼさんとは時たま連絡をさせてもらっていた。飲みにも行きたかったが、自分の都合で実現させられなかったり、悩み事を相談させてもらったり、ほんとにとんでもなくいい先輩である。お兄ちゃんです。すいませんそれはさすがに調子乗りました。

そして時は過ぎ、2023年6月30日。オゼさんから突然LINEが来た。
「10月29日、初恋モーテルのスケジュール空いてる?」と。
だいぶ先だったのでもちろん空いていたが、オゼさんは結局詳細は教えてくれなかった。めちゃくちゃモヤモヤした。いったい何が起こるのか。

そして少し経って、改めて連絡が来た。Bentham主催のイベントに初恋モーテルを呼びたい、と。飛び上がるほど嬉しかった。まさか昔の自分は考えてないだろう、こんな事態を。Benthamはその時にはメジャーレーベルを離れ独立していた。これから新たに、というとてつもなく気合の入ったイベントのはずだった。並ぶメンツも豪華絢爛。その中に、自分たちが入るのは烏滸がましさがあったが、オゼさんが期待してくれていることに応えたかった。

二つ返事で出演を決めた。それまでの間に2年半ぶりに新曲をリリースし、自分たちも万全の体制でライブに臨めた。楽しみすぎて、この日が来てほしくないとまで感じた、終わってほしくなかった。


2023年10月29日、新宿LOFTとLOFT BAR往来のイベント「FASTMUSIC CARNIVAL」が行われた。
LOFT BARステージのトッパーで、私は初恋モーテルとして出演した。
めちゃくちゃ汗をかいた。めちゃくちゃ楽しかった。オゼさんはしっかりと演奏を見てくれていた。終わった後、わざわざステージまで来て、ハイタッチをしてくれた。泣くかと思った。

LOFTステージ、大トリで主催のBenthamが登場した。前から4列目くらいの場所まで行って、最初から最後まで見届けた。朝からずっと動きっぱなしのBenthamの4人が魂を削るようなライブをしていた。セトリも攻め攻め、ほぼ休みなしでぶっ通しだった。心の底から感動した。このバンドに、呼んでもらえたことを誇りに思った。
そして、いつかBenthamに追いつき追い越せるようなバンドになりたいとも思った。

改めて、FASTMUSIC CARNIVALの関係者の皆様、ありがとうございました。
そしてお疲れさまでした。

Benthamのみなさま、
わがままですが、これからもよろしくお願いします。


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