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モバイル写真測量で壁面を点群化するときの注意点

PIX4Dcatchのアプリを使うと、iPhoneなどのモバイル端末で写真測量の技術で点群計測を行えるため、iPhone LiDARと違い5mの距離制限がなく、写真に鮮明に写っていれば点群化されます。

と、一言では言えるのですが、コツを掴まないと、うまく行かない場合もあります。

例えば、壁面を撮りたかった方から、「写真に写っているのに点群化されない!」という声を頂くことがあります。

どういうことなのか、良い例と悪い例を、技術的な観点から見ていきたいと思います。

写真から点群化されるメカニズム

写真測量では、連続する写真から物体の写り方の変化を分析して、物体の位置を算出します。その結果から、写真の各ピクセルを3次元上に配置すると、点群が出来上がります。

このとき大事なのが、物体の写り方の変化です。なので、まんべんなく物体を写すのが望ましいです。

点群の一つの点は、写真の色んな角度から撮影されている

例えば上記の例では、カメラ(iPhone)が左から右に動いて撮影しています。適当に点群の一つの点を見ると、このピクセルは連続する写真の右から左へ流れるように動いています。これが望ましい状態です。

良い例:壁面に対して並行移動

例えば、この壁面は6階建てぐらいの高さがあります。地面から建物のてっぺんまで全部収まる画角になるような距離を持って、壁面に対して並行移動します。左から右側へ、30mぐらい歩いています。

点群、歩行パス、画角の例
緑の小窓が撮影軌跡:平行移動パターン

点群化処理を実行した結果、地面付近から建物の上部まで全体的に点群化されています。

点群の一点は、色んな角度から撮影されている

点群の点を一個適当にクリックすると、この点は何枚もの写真から、色んな角度から撮影されていることが分かります。

点密度が高い訳ではないが、上部まで点群化されている

高い位置の点も、写真には程度鮮明に写っていて、かつ色んな角度から撮影されているので、点群化されます。

悪い例:壁面に向かって歩く

点群化がうまく行かなかい例は、大抵は、壁面に対しての並行移動が不十分で、色んな角度から物体が撮影できていないためです。写真には鮮明に写っていても、画角の変化が不十分だと点群化されません。

点群、歩行パス、画角の例
緑の小窓が撮影軌跡:突進していくパターン

例えば、悪い例として、物体に突進して行く撮影方法があります。この方法だと、撮影したい物体がどんどんクローズアップになるだけで、画角の変化がありません。なので、壁面の点群化は難しいです。一方で、直進すると足元だけは変化大きいため、地面はキレイに点群化されます。

画像1枚目と20枚目
壁面が近づいただけで、画角に変化がない

元となった写真を見比べると明らかです。20枚写真を撮っていても、物体が近づいてくるだけで、画角に変化がありません。近づいた関係で、写真のエッジが少し切れた程度です。

点群の点と写真を繋ぐ線がすべて一直線上に並んでいる
まんべんなく撮影されていない

点群に現れる点を一つクリックしても、写真へと繋がる線が一直線上に並んでいます。平行移動したときと異なり、まんべんなく撮影されていません。

左:平行移動 右:壁面に突進
壁面の上部まで点群化されない

壁面に対して突進した点群は、今回は意外にも広い範囲で点群化できましたが、上部まできちんと点群化されません。ある程度高いところまで点群化されているのは、20枚も写真を取得しているためであって、もしこれが4-5枚の画像でしか撮影されていなければ、点群化される範囲はかなり限定されます。

左:平行移動 右:壁面に突進
突進はノイズが多い

また細部で点群の質が全く異なります。並行移動した場合と比べて、明らかに点群のノイズが多いです。色んな角度から撮影すると、各ピクセルの位置の計算を精度高く行えますが、画角の変化が少ないと、位置の計算の誤差が大きく、ばらついた点群になります。

壁面に突進したら、画角の中心付近に穴が空く

最後に面白い発見ですが、正面に向かって歩いた場合、壁面の中心に穴が空いていました。向かって行く場合、写真の外側から写る範囲が減って行くので、写真に少しは変化がありますが、写真の中央は本当に何も変化がないため、点群が抜けてしまったようです。

壁面の向かっていくパターン
画像を5枚に限定

参考までに、壁面に向かって歩くパターンで、画像を5枚に削減して点群化しました。いよいよ、何を点群化しているのか、良く分からない結果となりました。

極端な例にも思えますが、壁面のコツを掴めていない中、壁面や地面や構造物など、色んな対象物を同時に撮影しようとすると、このように壁面に対しては数枚しか写っていない、ということは発生したりします。

まとめ

ということで、今回は壁面を撮影するときのコツの一例と、その検証結果を紹介してみました。他にもコツの検証を行った際は紹介して行きたいと思います!

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