映画『とんかつDJアゲ太郎』について思う日々

いい映画を観たときよりまずい映画を観たときの方が能弁に語りたくなるという気分みたいなものは確かにあって、私はいま猛烈に『とんかつDJアゲ太郎』について語りたい。というか、人と会うたびに語ってるし、語りたいがために飲みに出かけたりしてる(ただ残念なことに観たという人に会ったことはない)。noteをはじめたのもアゲ太郎を語りたいがためといっても過言ではなく、思いのたけを吐き出したらやめてしまうかもしれない。観に行ったのは先週の金曜日の午前9時である。ちなみに原作は読んだことがない。先週の金曜からこっちずっと頭のどこかで考えてるんだから、実はすごい映画なのかもしれぬ。
ま、なにはさておき、先にここが一番嫌だったという部分を書いちゃうよ。
初心者のアゲ太郎を自分の代役にしてフロアを白けさせ川瀬陽太さん演ずるオーガナイザーのメンツを潰したDJオイリーが場を追われタクシーの清掃的な仕事をしているのをアゲ太郎と仲間たちが憐憫の目で見るシーンがあるんですよ。これさ、どうやら原作にないらしいんですけど、すんごい腹たったのね。
働くの、そんなに悪いこと?
仕事とDJ二足のわらじがそんなにいけないの?「さらば青春の光」でエースがドアマンやってたのに絶望するのとはわけが違うでしょ。
アゲ太郎も仲間たちも渋谷に生まれ育ったからそんな風に暮らしていてもなんとかなってるけど、これが地方に生まれてDJになりたくて上京してきた人だったら、こんなに呑気じゃいられないんだよ。当然働かなくちゃいけない。そもそも渋谷になんか住めない。レコード1枚買うにも必死でしょ。めっちゃくちゃ恵まれた人が働く人を無自覚に見下してさ、これがふざけるなって思わなくてなんなんだっつーの。
…まあでも、そんなもんなんだろうね。テレビ映画つくる人たちの感性なんて。恵まれた環境と血筋におもねってナチュラルに他人を見下してんだよ。はぁ。
だいたいオーガナイザーのメンツ潰したっていっても別にそれで借金背負うわけでもあるまいし、いやーまいったね。で済む話でしょ。それでお金がいる(たとえばオイリーさんが貴重なレコードを手放すはめになって買い戻さなくちゃいけないみたいな)展開だとしたら、アゲ太郎たちはお金を稼ぐために賞金の出る大会に出場するっていうのが筋だし。それにそもそもギャグ漫画なんだから無理矢理働かされるにしてももっと突拍子もない展開にしないと。マグロ漁船に乗せられたりオホーツクへカニ漁にいかされたり。タクシーの整備って。笑えない。「オホーツクで漁船が転覆1名が行方不明」みたいな新聞記事にオイリーさんの顔写真が載っててはじめてオイリーさんの行方がわかるみたいなのでもよかったし、日ごろ油を飲んでるから水に浮いて助かっちゃったみたいなのでよかったじゃん。そんでクライマックスにびしょ濡れのままタラバガニ持って駆けつけて助言するとか蟹の覆面被った謎のDJとして現れてもよかったのに。DJクラブとかDJバブラーとか。
クライマックスといえば、あそこでベリンダカーライルはないでしょ。単純にダサいってのもあるけど、もし仮にこの映画が大ヒットしたとしてもベリンダカーライルがリバイバルヒットすることなんかないし、したところでそんなにおいしくないでしょ。そこは日本人の誰かに新曲書き下ろさせてそれ使うべきだった。それでもし映画がヒットしたらその曲も売れるし話題になるんだから。なぜそこで商売を考えないの!まあ結果的にヒットしなかったし、アゲ太郎に曲提供とか黒歴史になってたかもしれないから誰かが救われたのかもしれないケド。
あとクラブシーンも全年齢対象を意識してるんだろうけど、オーディエンスがお酒を飲むシーンがほぼないし、露出が高い服着た人もいないのよね。照明も明るいままだし。なので、なんか高校の文化祭とか卒業パーティーみたいで。これはまあ仕方ないとは思うけど、やっぱりダサかったなぁ。
オーガナイザーから俺の目の届く場所では二度とDJやらせないと言われたアゲ太郎たちが見返すために円山旅館のホールを使ってパーティー開いて同じ時間にWOMBで川瀬陽太さん主催のイベントがやってて盛り上がりで対決するみたいなのでもよかったし、盛り上がりでは負けたけど苑子ちゃんは見に来てくれたみたいなのでもよかったし、パーティーにかかったお金を親たちに返すために真面目に働くみたいな終わり方でもよかった。円山旅館のパーティーだったら高校の卒業式感出てても問題なかったよね。それにアゲ太郎の夢を叶えるためだけに動いてる感情のないロボットのような友達たちにも彼女とか出来たかもしれないし。そういうハッピーな展開みせてよほんと。なんにしてもなにかもっとこう、あったと思うんだけどなぁ。
なんて。そんなことを日々、思ってる。

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