家のこと


わたしが今住んでいる家は、築100年を超える日本家屋。
2棟が1軒になっていて、平屋の方はもう長いこと誰も住んでおらず、崩れてきている。
建物は代々わが一族のものだが、土地は別で、近所のお寺が地主。
今年の夏、地主が市役所に空き家をどうにかしてほしいとクレームを入れ、わたしの方に解体するよう電話が来たんだが、おって役所が調べたところ、意外なことにその空き家は会ったこともない遠い親戚の登記になっていた。
遠い親類は弁護士を雇い、その空き家をわたしに譲渡するという話になった。
解体するにしてもうまいこと分割し、かつ残った建物を補強するなんていうのは、まあ神業でもないと難しいし、わたしとしては寿命が尽きるまで住み続けたいし、空き家部分を譲り受け、一軒の家ということになれば、「空き家だから解体する必要がある」という話を反故にできると、遠い親類と弁護士に同意をしたわけだが、わたしを出ていかせたいお寺は、それに反対の意を唱えた。
で、今度話し合いを持つことになったわけなんだが。

以前お寺から、公団を紹介するから住んだらどうか、みたいな提案をされたことがあって。
それはなんというか、まあこういう言い方はよくないけど、ずるいよね。
立ち退かせたいのなら立退料は払うべきでしょ。
それを知らないと思ってごまかそうとして。
わたしは地主と借地人という立場から、わりとなんでも言うことを聞いてきた。
敷地内にはえていた大切な木を地主が勝手に切ったときだって、文句は言わなかった。
でもこれはさすがにちょっと舐められすぎだし、許せないんだよなぁ。
もちろん法に則って、真っ当な立退料を支払うというのなら、相談に乗るよ。
世の中の人すべてが先祖のことなどどうでもよくなり、自分のルーツなんか気にしなくなったら、お寺もお墓もいらなくなるわけじゃん。
そういった縁というものを蔑ろにしたら一番いけない職業でしょ、お寺って。
うちは先祖代々ここに住んでるわけだから。
それをお寺さんが出て行けというのは、非常に情けない気持ちになりますね。

この話がこの先どう転じていくのか、まるでわからない。
結局はお金でしか解決できないと思うんだが、どうなるんだろうねぇ。
人生の転機だね。
場合によってはわたしが変死するかもしれない。
その時はまあ、これを読んで犯人を類推してください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?