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その陰陽配列が「凶」ってホント?

「陰陽配列」は、流派によって「乾坤けんこんの配置」などともいい、明治の中頃、画数で吉凶判断する「数霊法」と同時に登場した技法です。字画数を奇数なら〇(陽)、偶数なら●(陰)で表わし、その並び具合で吉凶を判断します。[注]

たとえば、「山田太一」さんなら、次のようになります。

山(3画)、田(5画)、太(4画)、一(1画) ⇒ ○ ○ ● ○

●ある種の配列は凶作用があるってホント?

この技法を用いる流派によると、「運勢に凶作用がある」とされる配列がいくつかあります。代表的なものを見てみましょう。

① 挟み: ○● ●○、●○ ○●
 陰陽どちらかで挟まれる配列で、板ばさみになりやすい?
② 単一: ○○ ○○、●● ●●
 陰陽どちらかで統一されている配列で、何かと苦労が多い?
③ 中断: ○○ ●●、●● ○○
 姓と名で陰陽が別れる配列で、中途挫折しやすい?

●陰陽配列を批判する占い師たち

ところで、この技法の有効性をどう評価するかとなると、占い師によって意見が大きく分かれます。「まったく役に立たないので無視する」派から「まぁ、参考にする」派、さらには「画数の吉凶と同等に重視する」派までさまざまです。

もちろん、「参考にする」派や「重視する」派では同一の陰陽配列でも吉凶が異なる場合もありますが、この際、そんなことは些細な問題です。

というのも、かつて「無視」派は「参考・重視」派に強烈な一撃をお見舞いしたことがあるのです。それも、今から100年も昔の話です。

「参考・重視」派たちはノックアウト寸前のダウンを取られたわけですから、試合を再開するためには、きっちり反論すべきでしょう。

ということで、「参考・重視」派たちが未だに反論できずにいる、「無視」派からの痛快な批判を2例だけ紹介します。字画数からその文字の陰陽を判別すると矛盾が生じるので、この技法そのものがアテにならない、という論旨です。

① 陽が12画で陰に属し、陰は11画で陽に属すとは、天地が逆転している。[*1]
② 天と地は、文字そのものが陽と陰を示しているのに、同じく陰に属すとは滑稽の極だ。[*2]

『名称教育精義』(楠本博俊著)
『姓名と運命』(太乙道人著)

●「参考・重視」派の反撃は近いか?

確かに、字画数で文字の陰陽を分類すると、①は12が偶数で陰になり、11は奇数で陽になります。

この一撃で新字派と旧字派は大きなダメージを受けましたが、康熙派はまだ無傷です。なぜなら、彼らは「こざとへん」を3画ではなく、8画に数えるので、17は奇数、16は偶数となり、矛盾は生じないのです。

しかし②については、康熙派にとっても他流派ごとではなくなります。

古代中国の陰陽思想では、天には陽の気、地には陰の気が満ちていると考えるので、天は陽、地は陰でなければなりません。ところが字画数では、陽であるはずのが偶数で陰になってしまうのです。

さて「参考・重視」派は、100年も考える時間があったわけですから、「無視派」をうならすような素晴らしい反論を用意しているに違いありません。そろそろ開陳してもらって、反撃に打って出て欲しいものです。

=========<参考文献>========
[*1] 『名称教育精義』(楠本博俊著、精華堂、昭和4年刊)
[*2] 『姓名と運命』(太乙道人著、東亜堂、大正3年刊)

==========<注記>=========
[注] 陰陽配列の信憑性
 本来の陰陽配列のルールは、創案者の菊池准(準)一郎氏によると、偶数を〇(陽)、奇数を●(陰)とすべきなのだが、後進の占い師たちが創案者の意図を知らず、勝手な解釈で逆にしてしまったという。
 詳しくはこちら⇒『発掘!「現代の姓名判断」の起源(4)』の[注1]

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