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グッドアールエックス(GDRX)が解決する問題

グッドアールエックス(以下、GDRX)のビジネス理解の前提となる、米国の保険制度や医薬品を取り巻く環境を説明する。

※趣味として調べた程度です。誤りがある場合にはご指摘いただけると幸いです。
※サムネイル画像はGDRXの投資家向け資料から拝借しました。

GDRXのビジネス

コア事業はコンシューマー向けの医薬品の価格比較である。
ユーザーフレンドリーな仕様で、低価格∧効率的に医薬品の獲得をサポートしている

医薬品の価格ドットコムみたいな感じ。

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ユーザーの購入分の一部を、トランザクション手数料として売上計上する。

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GDRXの投資家向け資料より

日本人には価値を理解がしがたいサービス

(少なくとも私は...)日本人には価値を理解がしがたいサービスである。
なぜなら、医療用医薬品を購入する際、日本ではどこで買おうと同じ価格だから。

医療用医薬品には、公定価格である薬価が定められています
日本では、医薬品は、大きく、保険適用となる医療用医薬品と、保険適用にならない一般用医薬品に分けられます2。このうち、医療用医薬品については、全国一律の公定価格である、薬価が定められています。一方、一般用医薬品は、一般の物品・サービスと同様に、自由価格となっています。
ニッセイ基礎研究所HP 「医薬品の値段(薬価)は、どのように決められているの?」より引用

しかし、米国では薬価が一律に定められておらず、ゆえに購入する薬局で価格が違うことがある。
また、米国では公的な皆保険がないため、処方される患者は同じ医薬品でもできるだけ安く手に入れたいというニーズが強くなる

実際に、ジェネリック医薬品の普及率の比較からも事実・傾向を確認できる。

ジェネリック医薬品の普及率

ジェネリック医薬品の普及率は、米国は日本と比較して断然高い。

日本のジェネリック医薬品の普及率は現在約76%。イギリス、ドイツ、フランなどの医療先進国でも、普及率が70%を超えていて、アメリカでは90%がジェネリック医薬品。
沢井製薬のジェネリック事典より引用

厚生労働省調べのレポートでは、2016年を最新として各国の普及率を見比べることができるので、ぜひ。

ジェネリック医薬品のメリットと、メリットを享受できてない日本

そもそもジェネリック医薬品とは、後発医薬品と日本語訳され、特徴は「安い」っていうことである。
なので、普及すればするほど、医療費をより抑えられるというメリットがある。 例えば...

日本のジェネリック医薬品普及率が80%まで到達、国の医療費が年間約1.6兆円も抑えられる。
沢井製薬のジェネリック事典より引用

その一方で、ご存知の通り医療費は右肩上がりに増大しつづけている。

日本では医療費が年々増え続け、2017年度には43兆円を超えた。
そのうち薬剤費は2割以上にもなり、2025年度には医療費が54兆円にもなると予測されている。
医療費が膨張し続けると、「国民皆保険制度」が維持できなくなる可能性がある。
沢井製薬のジェネリック事典より引用

画像3沢井製薬のジェネリック事典より引用

アメリカでジェネリック医薬品の普及率が高い背景

上述したとおり、日本では国民皆保険制度のもと、すべての国民は何らかの公的健康保険に加入することが義務付けられているが、アメリカでは公的健康保険が存在しない。
だから、アメリカでは国民はそれぞれ民間の医療保険に加入する

民間医療保険とは大きく2つある。
 1.保険会社の医療保険
 2.雇用主の準備している医療保険

民間の医療保険を提供する保険会社としては、コスト・支出を減らすことがビジネスを成立させる1つのキーである。購入者としても安く手に入れたい。
ゆえにジェネリック医薬品が選ばれるのである。
要はビジネス色が強くて、同じものでもあっても効率的に・安く手に入れるっていうマインドになるのである。
参考:処方薬が患者の手に渡るまで〜アメリカでジェネリック医薬品が促進される背景を探る

フォームラリ・リストの存在

処方を受ける患者もそうだけど、保険を提供する保険会社や雇用主はできるだけ、安く医薬品を手に入れたいし、医者もその意図を汲む。
ただ、処方薬をどこまでカバーするかは医療保険によって異なる。
極端な話、保険Aでは処方薬を保険適用内とするが、保険Bでは適用外とするといったように。

全員一律に決まってるわけではないので、煩雑である。
そこで、フォームラリリストの出番である。

フォーミュラリ・リストとは、各保険会社の「何の薬が保険対象となるのか」を記した一覧で、各保険会社ごとに作成される。

PBM(Pharmacy Benefit Manager)の存在

フォームラリリスト作ったはいいけど、雇用主・保険会社vs多数の医薬品メーカーだと交渉が大変だったり、個別に発注していては価格に規模の経済メリットが働かない
医薬品メーカーとしても沢山のフォームラリリストに掲載されたいので、それをまとめてくれるのはありがたい。

で、出てくるのが、保険会社を取りまとめて、医薬品メーカーと交渉するPBM(Pharmacy Benefit Manager)である。

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The Wall Street Journal "Behind the Push to Keep Higher-Priced EpiPen in Consumers’ Hands"より画像引用

医薬品のコストをおさえたい保険会社や雇用者側から契約をとり、代わりに製薬メーカーと価格交渉し、規模の強みを活かして値引きを引き出し、
調剤保険適用の管理を行い、薬局とネットワーク契約する、しいて言えば医薬品を安く仕入れ広くさばく中間業者・仲介ビジネス。
PBMは患者に処方された薬が保険会社の償還リストにあるものか、またジェネリック等の代替薬について、患者の自己負担額を薬局に通知するネットワーク部分を担っている。
PBM(Pharmacy Benefit Manager)のビジネスモデルでジェネリック医薬品の普及が加速より引用

ちなみに、PBMは3社の寡占状態となっている。

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PhRMAより画像引用

起きている問題〜不透明な薬剤価格設定〜

PBMは患者に処方された薬が保険会社の償還リストにあるものか、またジェネリック等の代替薬について、患者の自己負担額を薬局に通知するネットワーク部分を担っている。
その上で、薬局に対し、調剤処方代の値引き交渉(薬局の粗利率引き下げ)も行うのだが、PBMはその価格設定に対して透明性が足りないと批判されており、薬局業界から仲介者としてのPBMの薬価設定情報の開示を求めて法改正の要求をされるほどです。
保険大手に買収されたPBM各社は、価格引下げ交渉で得た差益を患者の薬価負担の軽減ではなく、より健康な保険加入者のプレミアム引下げに用いている
【World Topics】民間主導の薬価抑制:JPMorgan余禄より引用
参考:米製薬会社が中間業者批判、高額薬価問題で

複雑性が高く、透明性が低く、結果的にPBMのさじ加減で薬価価格設定されている、という問題が発生している。

スクリーンショット 2020-12-19 19.53.13GDRXの投資家向け資料より

バラバラの価格を見える化したのがGDRX

GDRXの展開しているサービスの話に戻る。
GDRXがやっていることは「フォームラリリストを集約することで、バラバラの医薬品価格の比較をアプリ上で実現」している。
結果的に、購入者は低価格・効率的に医薬品の獲得できるようになった
下の図が直感的にわかりやすい。

スクリーンショット 2020-12-19 19.54.47GDRXの投資家向け資料より

ここまでが、GDRXのコア事業の「解決している問題の全体感」である。

なお、GDRXは他にも、購入者向けに通常のスポットよりも多くディスカウントを受けられるサブスクのビジネスや、オンライン診療のサービス、製薬メーカー向けに広告のビジネスなどを展開している。

スクリーンショット 2020-12-19 20.03.22GDRXの投資家向け資料より

まとめながら、いいサービスだなと思いました。とても大きな複雑な課題を解決しているし、社会にとってWINなサービスだなと。
以上となります。ご覧になっていただきありがとうございました。

【余談】オバマケアとはなんだったのか?

だから、アメリカでは金がないと、医療保険にすら入れないてこと。
で、2010年にオバマが通した法案が通称「オバマケア」、アフォーダブル・ケア・アクト(ACA)という、アメリカの医療保険制度を改革する法律だった。
当時5000万人の無保険者がおり、2014年から最低限必要な民間医療保険の加入を原則義務化。
結果、政府が補助金を支給し、新たに2000万人超の低所得者が保険に加入。
一方、健康状態が良くない加入者が増え医療保険会社の収支が悪化。
自力で医療保険に入っていた中間層の保険料が上昇する問題も発生。
参考:日本経済新聞の「オバマケアとは」


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