『医学を選んだ君に問う』への反論

功成り名遂げた偉い先生が、これからの働く若い先生に労働規範を説く素晴らしい内容です。
http://www.f-take.com/kindai-kawasaki.htm
私が極端に性格が悪いのできっとそう考えてしまうのですしょうが、このポエムの創作者って医師の仕事を他と比較し崇高であると考えているのでしょうかね。でも、考えてもみればタクシーの運転手さんも人の命を預かってますよね。電車の運転手さんは何千人の命を預かっている場合もありますよね。私は運転手さんにこんなポエムを説く社説を全国紙のオピニオンで見たことがないです。全国の学生を対象に運転手さんになるための自己犠牲を厭わない高潔な人格や日々の知識の習得の必要性を説いた論説を全国紙で見つけたらおしえて欲しい。君に問う『運転手を選んだからにはよく学びよく学びだ、時間を見つけて全国津々浦々の道を知悉しないといけない。とか休日を取り消し求める人が居れば運転しろ』って全国紙で宣言している大学教授もいないし、運転手の組合代表や社長も私は知らない。
運転手さんに必要なことは適切な休養とシュミレーション等による訓練や安全システムによる事故防止であると思う。医師の場合は適切な休養は必要なく『重症患者のために連夜の泊まりこみ、急患のため休日の予定の突然お取り消しなど』といった奴隷労働が推奨される。why?

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重症患者のために泊まり込みって言うのは美談ではなく、マンパワーがない、システムが整っていないことを示しているだけです。36時間寝ずに頑張りました、疲れて手技ミスしてしまいましたさーせんで許してくれるんですかね。私が相手側の担当弁護士なら睡眠不足による安全配慮義務違反も論点にして攻撃しますけどね。寝ずに働くことは美談であった時代ではありません。システムの不備を個人の責任にするのはいい加減やめましょう。もう令和です。


そして素朴な疑問ですが、連夜泊りこんでいる間に子供は誰がみてくれるのでしょうか?専業主婦の奥さん?主夫の旦那?実家の祖母?それとも医師たるもの子供をつくている場合ではないのでしょうか?共働きの家庭や祖父母が離れている家庭はどうすればいいのでしょうか?医療にフルコミットできる人だけが医療をやる時代は終わりました。医師、看護師さん、技師さん含め誰かの父であり母であり、介護の必要な両親をもつ子供であったりもします

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ノブレスオブリージュを求める方もおられると思います。
そもそもノブレスオブリージュって貴族に対してな訳でして、36時間連続で働く医師が貴族なのかを教えて頂きたいところです。貴族って働かないんじゃないの?36時間勤務してたんまり納税している医師にノブレスオブリージュ?
そもそも医者は身分ではなくて労働者の職種なので、そこは間違えないようにしたいものです。当直でもなければ時間がくればお家に帰りましょう。逆に医師が『身分』だった昭和30年代、そう白い巨塔の時代には医師が廊下を歩いていると患者さんは道をあけたし(参勤交代的な感じです)、開業医の先生は税制ですら優遇されていたんですよ。ケンカ太郎と言われた武見太郎率いる医師会も圧力団体としてきちんと機能していたんです。今のロビー活動がいまいちな医師会とは違います(寿司食いにいってる場合じゃねぇよ)。

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色々話がずれましたが、適切な人員数を配置する必要があるのは管理者の役割です。病院の場合は理事理事長のお仕事です。師長や診察科部長は人事権もほぼない中間管理職です。もっと分かりやすく言えば奴隷頭ぐらいの職位なので、気にせず帰宅でいいのではないでしょうか。そもそも実家が太くない奴隷頭もいっぱいいっぱいの暮らしぶりです。奴隷頭が奴隷の首をしてめいるのは何ともエモいですが、これが暗黒時代の令和日本の医師の構造です。

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はたまた話題が変わって、真面目なお医者さんは応招義務を心配されると思います。
応招義務はまた別の機会に記載できればと思っておりますが、厚労省の通知で時間外は大幅に責任を軽減しております、基本的に当直医お願いしますって理解でOKかと思います。応招義務という現在の赤紙からの解放です。

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医師は患者さんに対して責任をもつ必要があると思いますが、それは勤務時間内です。そして適切な人員を配置できずに残業になる責任は現場の医師にはないですよ。


もうね、無理なものは無理ですよ。
システムの限界なんです。システムの限界を個人の努力で何とか出来ないんですよ。昔より改善されたとは言え、これ以上若手(特に後期レジデントあたり)に負担を押し付けるのはやめましょう。特攻を若手に強要する前に自分が最初の一機で見事散って頂くようにお願い致します。

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