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好き#1:サルバドール・ダリ

みなさま、好きな作家はいますか?
彼の人が出す作品全てチェックするという激推し作家とか
以前見かけたあの作品好みだったなという一期一会な作家とか

私の好きな作家の一人であるサルバドール・ダリのことを、
私がどのように好きなのかここに綴ってみたいと思う。
多分、文章が発散する。上手く纏まれば拍手。

皆様ご存知、大きく見開いた目にクルンと上を向いたお髭がチャーミングな
スペインの芸術家:サルバドール・ダリ
彼は1900年代を生きておられた思ったよりも最近のお方です。

彼の作品の中で有名なものといえば、
一番は世界的なロリポップ・チュッパチャップスのロゴデザイン
そして次点でメイ・ウエストのリップソファ
絵画なら、チーズのように溶けた柔らかい時計がある不思議世界の絵であろう。

ダリに出会う

私が初めてダリを意識して、好きになるきっかけとなった作品もこの柔らかい時計の絵「記憶の固執」であったと思う。小学生の時に目にして一番好きな美術品の位置にこの絵を据えていた。
シュルレアリスム的「奇抜さ」
この世ではあり得ない世界を描いて、それがどこか恐ろしいこと
作家の独特な風貌
それらが「何者かになることを夢見る少女」「普通であることが面白くない若者」の心にリーチしたんだと思う。

「ダリが好きな私」というアイデンティティを表明した私は、名古屋で開催されたダリ展やシュルレアリスムの展覧会に親に連れて行ってもらうライトなファン活動を大学生まで続けた。

ダリに会いに行く

大学生になり講義で教養として美術哲学について学んだ。
ここで学んだことが知識として定着しているわけではないし、美術鑑賞においても「これは好き」「これは苦手」以外の感じ方を常からするようになったわけでもない。先生ごめんね。
ただ、今までは「そこに活字があるから私は文字列を摂取したい」と判然としないまま読んでいた作品キャプションを様々な研究や解釈の一端であるという事実を漸く分かって読むようになったのはここで身になったのかもしれない。

作家の作品には繰り返し出てくるモチーフというものがあるらしい
柔らかい時計、群がる蟻、宇宙象、愛しい妻・ガラ、
原子爆弾、捻れた身体に長い足、大自慰者
何のメタファーだとか、そういう話は各自の学びにしてもらうとして、
繰り返し描き込まずにはいられないような、作り出さずにいられないような
そんな思いの発露であり、意匠なのだと、私は思う。

ダリの名前はダリが生まれるより前に死んだ兄の名前をそのまま命名されたことであるとか、愛しのミューズ・ガラは友人の奥さんだった女性であったことだとか、ダリの芸術家としての才能を辣腕を奮って売り込んだガラのパワフルさであるとか、ガラはダリが贈った城に住んでダリの登城は許さず他の男を近くに置いていたことであるとか、世界大戦があって亡命したりしたこととか

こういったエピソードを知るほど、エキセントリックなシュルレアリストであり理解できない才能だけで売れたのかと思っていたダリも同じ人間なんだと。好き。
才能は勿論あったし、人との巡り合わせも良かったし、すごい人なのは間違い無いけど、エキセントリックさとかは不安定な内面であったり不器用な自己表現であったのかもしれないと考えると、私にとってとても敬愛すべき人だ。

ダリのことが好きな私が好き、というアイデンティティだけではなく、彼に興味を抱いた私は大学3年生の時に日本でダリといえば、な美術館・諸橋近代美術館(福島県猪苗代)へ足を運んだ。ここはスポーツ用品のゼビオの創立者の方が蒐集したダリを主とした西洋近代美術の収蔵・展示をしている館。

流石の蒐集作品でダリの立体作品たくさんあるし、テトゥアンの大会戦とかいう高さ3mあるような大作もあるし、国内でダリ作品見るならここに来るっきゃない。ダリ展が開かれるときにもここから持ってくる作品多いと思う。リップソファも座れる。幼少の習作〜晩年の大作まで、絵画、立体、版画とあらゆるダリ作がある。

ここで一番心惹かれた作品、今でも私の一番好きなダリの作品が「カトリック的で君主的な球体プロテインの時代:毎分25000‐65000の超高速回転」(1959)
長いタイトルのこの作品を私はネットや他の舘の展覧会で見た事ないし、図録でも諸橋のミュージアムガイドでしか私は知らないが、なぜか初見からずっと好きだ。

絵画としてはダリのドンキホーテの挿絵が雰囲気が近いかもしれない。シュルレアリスト的な奇抜さが前面に出ているわけでもなく、作品としてもそこまで大きくなく、宮殿の中庭で王子たちが自転車に乗ったり馬に乗ったりしている絵画だ。
人物の描写はリッチな棒人間と言えばいいのか、表情が判るようなものではないのだが、その作品から私が感じたのは、今頑張って言葉にするならば「動き」「変化」で「楽しさ」「ワクワク」だったんだろう。ダリの絵で不安定さからくるドキドキでもなく、ダブルイメージを解析するワクワクでもないときめきを覚えたのは私はこの作品が初めてだった。

そして大学卒業の時は、推しが産まれた土地って知りたいし行ってみたいよね、と卒業旅行@スペイン・バルセロナをしました。ひとりで。
目的はフィゲラスにあるダリ劇場美術館に行く事、それだけ。なので他の観光そんなにしてないのだよな。フィゲラスも日帰りにしたので。
ダリ劇場美術館はダリが生前に自分で買い取って改装して作った彼の美術館。
外壁からしてTHE DALI。彼のお墓も地下にありまして、それはガラと共にプボル城に埋葬してあげればと思わなくはないが。

語学力低いし、チキンハートだけど、行って良かった。
彼が作った世界に入れた。彼が作ったアトラクションを全身で味わえた。僥倖。

バルセロナのダリ美術館も素描・スケッチ・デザインがたくさんあってイメージを変えてくれて新鮮だったが、プロデュースされたダリの世界を堪能できるフィゲラスの美術館のパワーは凄かった。ぜひ行って欲しい。
(いま調べてみたらバルセロナの方のダリ美術館が2017に閉鎖していた。ギリギリ入れたみたいで良かった)
私自身も、まだガラのお城・プボル城に行ってないし、カダケスの愛の巣・卵の家にも行っていないし、フィゲラスにAVEで移動する道中のジローナの街が車窓から気になったので観光したいし、とにかくスペイン再訪したい。

私がダリを好きな理由

知っているところは全てが好きで、好きに理由なんかないってのが思ってることだけど、そんなことを言ったらこれ書いて振り返ってみた意味がない。

・シュルレアリスムの世界の中で不安だけじゃなくワクワクときめきをくれる
・その生い立ちと愛に振り回された人生が彼の作品を作ったことが愛おしい
・見る時代・作品によって印象が変わって、芸術の表現だけではなく、広告デザインであったり、香水のプロデュースであったり、商業的成功が素晴らしい

私にできないことをしている人は眩しいし好きだ。
その中で彼を芸術家として一番好きなのは刷り込みなのかも。
さらにはこんなことを書いておきながら、彼の著作を読んでいないという。なので当人の表明する思惑は分からない。
そんな私だけど、ダリが好きだとこれからも言っていく。

不安定で、不器用で、愛を求めていたダリの世界をこれからも好きでいられたら私はきっと幸せだなと思う。


ところで諸橋近代美術館だが、裏磐梯の山に作られた馬小屋イメージの美しい建物、緑に囲まれて、近くにはあの五色沼(行った事ないけど)という風光明媚な立地と施設であり、展示内容・企画内容も毎年前期後期と立てており面白い館。如何せんアクセスだけが、ちょっと大変。東京→郡山で1時間半、郡山→猪苗代で40分、猪苗代の駅から美術館までにさらにバスで25分。それぞれの乗り換えやバスの1日の本数を考えると都内から日帰りがギリギリってところ。実際日帰りは可能だったし十分な鑑賞時間はあった。本当は車で行きたい場所、もしくは裏磐梯観光と合わせてお泊まりで行きたい所。社会人になって2年ほどは東京から年2で通ってたが、自分の足がないとやはりしんどい。当時はシフト勤務で連休取りにくかったし。久々に行きたいけど。都外に出るのはなかなか向こうに迷惑にならないかと足踏み。

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