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秘めた思い

「はぁ、はぁ…」

私は、息を切らしながら校舎内を走っていた。

本来ならば、とくに“私の立場”であれば許されない。

そんなことは気にしていられなかった。 

“ある場所”に向かって


・・・


バン!

「先輩!」

『おっ、これはこれは。生徒会長様じゃん(笑)
そんなに急いでどうしたの?』

「からかわないでください!
探してたんですよ、先輩を!」

『探してたって、電話でもすればいいだろ…
その様子だとだいぶ走ってたな~
生徒会長様が校則破ってていいのかなぁ~』

「だから…からかわないでください!
だって…どうしても会って伝えたいことがあったし、今日が最後だから…」

伝えたい思いよりも先に涙が溢れてしまった

それを見た先輩は“ただ事ではない”と思い真面目に話し始めた…

『その様子だとからかったらダメだよね…
どうしたの?』

「だって、先輩は卒業しちゃうし…
これからは簡単に会えないから…」

『別に、一生の別れじゃないしさ…
連絡さえくれればいつでも会えるよ』

「ちゃんと伝えなきゃって思ってて…
勇気が出なくて今まで伝えられなくて…」

『ゆっくりでいいよ、
伝えてくれるまで待ってるから。』

…数秒、2 人の感覚では数分だろうか…

…一方は俯き、もう一方はただ待っていた…

「待たせてすみません…」

『全然いいよ』

私は一度大きく息を吸い込み…

「先輩のことが好きです、私と付き合ってください」

先輩の目をまっすぐ見て思いを伝えた…

『そんなこと思ってもらえてるとは…
まずはありがとう。でも、ごめん』

「そう…ですよね…。
私なんてただの後輩ですし、先輩から見たら…」

『違うよ』

私の言葉を遮り、笑みを浮かべ

『ただの後輩なんて思ったことないよ。
むしろ好きだよ。』

「えっ、じゃあなんで…?」

『これからさ、お互い環境が変わるでしょ?
俺は多分、自分のことに手一杯になって史緒里のことおざなりにしちゃうかもしれないし“今は”このまま先輩後輩の方がいいかなって』

「“今は”って、じゃあいつなんですか…?」

『一年かな…史緒里も俺と同じ大学志望してるんでしょ?待ってるから』

”待ってるから” その言葉を聞いてなぜだか安心した…

「じゃあ、待っててください。
ちゃんと追いつくので!
史緒里以外の女の子とイチャイチャしてたら許さないですから!」

『史緒里って意外と独占欲強いんだね(笑)
わかったよ、史緒里もほかの男子と仲良すぎたらだめだから』

「もちろんですよ!」


・・・


“私達”にとって大切な場所になった…

私の、秘めた思いを伝え約束を創った場所…


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