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カネの財務諸表を作ることは当たり前だと思うのに、ヒトの人材諸表を作ることを当たり前だと思えない人の頭の中を本気で考えてみた

1. はじめに

ピープルアナリティクスや人的資本経営を仕事で行ってくる中で、あることに気づきました。

あらゆる企業でカネの財務諸表を作ることに関して疑問を抱く人はいません。

しかし、ヒトの人材諸表になると作ることに疑問を持つ人達が大量にいます。

アメリカなどの海外では、いくらカネがあってもヒトが揃っていないと株価は上がらないのに、です。

私はずっとこの日本人のカルチャーが不思議でしょうがないです。

そのため、今回はその人達の頭の中を徹底的に考察してみたいと思います。

2. 日本の義務感に根ざした労働文化

日本社会の働き方を語る際に、義務感が深く根付いている点を無視することはできません。

多くの日本人は、個人の自由や創造性を重視するというより、社会や企業から課せられた「義務」を忠実に遂行することに価値を見出しています。

これは、明治時代から続く産業化と戦後の高度経済成長の中で形成された文化であり、個々人が「社会の一員」として何を成すべきかという視点が強調されてきた結果です。

日本の学校教育から始まり、社会人としてのキャリア形成に至るまで、子供たちは「正しい道」や「規範的な生き方」を学び、その枠の中で成長していきます。

たとえば、進学先や職業選択においても、「良い大学に入る」「安定した企業に就職する」という考え方が優先され、個々の興味や能力は二の次にされがちです。

こうした過程で、「義務感」が強化され、労働者が組織に忠実に従う姿勢が形成されます。

3. 決められたレールの上で働くことが当たり前に

日本企業で働く多くの従業員は、決められたレールの上を歩んでいることに気づいていない場合が多いです。

特に大企業では、入社時に決められたキャリアパスや昇進のルールに従うことが「成功」とみなされ、その枠を越えた自己実現やキャリア選択が難しいのが現実です。

例えば、多くの企業では新卒一括採用が一般的であり、若い時期に一度採用されれば、その後の昇進や異動は年功序列や定められたルールに従って行われます。

社員は自らの意志でキャリアを選択する余地が限られ、「与えられた役割」に従いながら黙々と仕事をこなすことが求められます。

新しい挑戦やスキルアップの機会は限られ、仕事に対する情熱やモチベーションは次第に低下していくことも少なくありません。

こうしたシステムの中では、自分が本当に何をやりたいのか、何に価値を見出しているのかを考える機会が少なく、次第に「会社に従うことが当たり前」という感覚が染みついていきます。

結果として、従業員の多くは自分が「義務感」に支配され、レールの上を歩いていることに気づかないまま、仕事を続けることになるのです。

4. 組織に対する忠誠心と個人の成長の狭間

日本企業では、従業員が企業に対して忠誠を誓うことが強く求められます。

終身雇用制度が代表的な例であり、企業は従業員に対して長期的な雇用を約束する一方、従業員はその恩恵に対して全力で働く義務を負います。

従業員が企業のルールや方針に従うことは、社会全体で美徳とされ、個人の意志よりも組織の利益が優先されます。

これにより、企業における意思決定は従業員個々の意見ではなく、上からの指示に従って進められることが多く、下層にいる社員は自分のキャリアや成長に対する選択肢を持てない状態が続きます。

このシステムは、日本特有の「会社は家族」という考え方に支えられており、会社に対して感謝の気持ちを持ち、会社の成功が自分の成功に直結すると信じる従業員が多いのです。

一方で、この仕組みは、グローバル化が進む現代の労働市場において大きな問題となっています。

個人がキャリアパスを自由に選択し、自分の成長に合わせて仕事を見つける環境が整わないと、優秀な人材は日本企業に魅力を感じなくなり、海外へと流出してしまうこともあるのです。

5. 上場企業における財務諸表の重要性

上場企業において、財務諸表の作成は当然の業務とされています。

企業の財務状況を透明にし、株主や投資家に対して企業の健全性を示すことは、企業の存在意義を担保するために必要なものです。

これは法律で定められており、企業は定期的に財務諸表を作成して公表しなければなりません。

そのため、経理部門や財務部門は、カネの流れを正確に管理し、常に透明な報告ができるよう体制を整えています。

一方で、人材に関するデータの管理や評価は、こうした法的な義務がないため、企業によって対応が異なります。

財務諸表の作成は当然のように行われる一方で、人的資本の評価や管理は重要視されない場合が多く、その結果、従業員の価値や成長が数字で可視化されることはほとんどありません。

6. アメリカとの比較

この点で、日本はアメリカなどの「人材を資産とみなす文化」に大きく遅れを取っていると言わざるを得ません。

アメリカでは、企業が従業員の成長や価値を数値化し、そのデータを元に経営戦略を立案することが当たり前となっています。

これにより、優秀な人材は企業にとっての「資本」として扱われ、企業はその価値を高めるための投資を惜しみません

日本企業では、人的資本の評価が未だに曖昧なままです。

結果として、従業員の価値が可視化されず、企業は人材に対する正しい投資判断ができないままです。

このような状況が続くと、優秀な人材は海外へ流出し、日本企業の競争力が低下するというリスクが現実味を帯びてきます。

7. まとめ

日本社会の働き方は、義務感に支配され、個々のキャリアや成長が軽視されがちです。

財務諸表の作成が当然の業務であるのに対し、人的資本に対する評価や管理がないがしろにされている現状は、企業の持続可能性を脅かすリスクがあります。

人的資本経営を推進し、データドリブンでの評価を行うことが、今後の企業成長には不可欠です。

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