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ISO30414の「人的資本ROI」をダッシュボード化したら凄すぎて、もう元には戻れなくなった話

こんにちは、「データ分析やりたくて人事部に入ったわけじゃないのに」です。
今回は、ISO 30414の「人的資本ROI(Return on Investment)」をダッシュボード化することで、企業が何を理解できるのかを記載したいと思います。
人的資本ROIは、人的資本に対する投資の効果を評価する重要な指標です。
簡易的であれダッシュボード化すると、まさにデータドリブン経営という感じで、集計・可視化していなかった時には戻れません。
ましてや、これができていない企業へ転職する気持ちなど起きなくなります。

1. 人的資本ROIとは?

(1) 人的資本ROIの定義

人的資本ROIとは、「人的資本に関する投下資本利益率」のことです。
具体的には、人的資本に費やされたすべてのコストに対するリターンのことです。
%が大きければ大きいほど、人材への投資が効果的に機能していることを示します。

(2) 人的資本ROIの重要性

人的資本ROIを評価することで、企業は人材への投資がどれだけ効果的であるかを理解し、戦略的な意思決定に活用できます。
単に従業員が多いだけで機能していない場合も分かります。
問題がどこにあるかが分かるので、対策も打てます。

2. ダッシュボード化によるメリット

(1) 現状の可視化

ダッシュボードを利用することで、人的資本ROIの現状を一目で把握できます。
グラフやチャートを用いて、直感的に理解できる形式でデータを表示することが可能です。

具体例

  • 全社的な人的資本ROIの表示
    全社的な人的資本ROIを折れ線グラフや棒グラフで表示し、月次や四半期ごとの変動を視覚化できます。
    断面で見るだけでなく、時系列変化を追うことができるので、徐々に悪くなっている場合も検知できます。

  • 部門別の人的資本ROIの比較
    部門ごとの人的資本ROIを比較することで、どの部門が最も効果的に人材投資を行っているかを把握できます。
    その部門だけ見ていると横ばいであっても、他の部門が伸びているのであれば、横ばいの部門は改善の余地があると気づけます。

(2) フィルタリングとセグメンテーション

ダッシュボードは、特定の条件に基づいてデータをフィルタリングし、セグメントごとの分析を行うことができます。

具体例

  • 地域別の人的資本ROI
    地域ごとに人的資本ROIをフィルタリングし、地域ごとの差異を分析します。
    例えば、東京支社のROIが大阪支社よりも高い場合、東京支社の人材戦略が他の支社にも適用できる可能性を探ることができます。

  • 職種別の人的資本ROI
    職種ごとに人的資本ROIをセグメント化し、特定の職種における投資効果を評価します。
    例えば、エンジニアリング部門のROIが他の部門よりも低い場合、トレーニングプログラムや福利厚生の見直しが必要かもしれないと推測することができます。

(3) ドリルダウン分析

ドリルダウン機能を利用することで、人的資本ROIの詳細な要因を分析できます。
上層のデータから細部のデータへと掘り下げていくことで、具体的な問題点や改善点を特定することができます。

具体例

  • 離職率の詳細分析
    高い離職率が人的資本ROIに与える影響を分析し、離職原因を詳細に掘り下げます。
    例えば、特定の部署で離職率が高い場合、その部署の管理職や職場環境に問題がある可能性があると気づくことができます。

  • トレーニングコストの効果分析
    トレーニングに投資したコストが人的資本ROIにどのように寄与しているかを分析します。
    例えば、特定のトレーニングプログラムを受講した社員の生産性が期待通りに向上しているかを評価します。

(4) 予測分析

ダッシュボードに予測分析機能を組み込むことで、将来の人的資本ROIを予測し、戦略的な意思決定を支援することができます。

具体例

  • シナリオ分析
    複数のシナリオ(例:研修プログラムの拡大、福利厚生の改善)に基づいて、人的資本ROIがどのように変動するかを予測します。
    例えば、新しい福利厚生プログラムを導入することで、離職率が低下し、人的資本ROIが向上する可能性を探ることができます。

  • トレンド分析
    過去のデータをもとに将来の人的資本ROIのトレンドを予測し、長期的な計画策定に活用します。
    例えば、過去3年間のトレンドから、次年度の人的資本ROIがどのように変動するかを予測します。

3. ダッシュボード化による具体的な効果

(1) ハイパフォーマーの離職削減

ダッシュボードを通じて、年間のハイパフォーマーの離職者数を何割削減できるかを分析することで、離職コストの減額分だけ人的資本ROIが増大します。

具体例

  • 離職削減施策の効果測定
    特定の施策(例:エンゲージメント向上プログラム、キャリアパスの明確化)の効果を測定し、離職率の削減効果を可視化します。
    例えば、エンゲージメント向上プログラムを実施した結果、優秀人材の離職率が20%削減され、人的資本ROIが向上したことを確認します。
    まー、、、これは市場環境や複数施策が複雑に絡み合っているため、非常に難しいのですが、、、傾向は見えるのでやらないよりは遥かにマシです。

  • コスト削減の見える化
    離職削減に伴うコスト削減分を人的資本ROIに反映し、具体的な数値で成果を確認します。
    例えば、離職削減によるコスト削減額が年間500万円であることがわかり、その分がROIの向上に繋がります。

(2) 投資効果の最大化

人材への投資を効果的に行えているか否かを示すことで、投資効果を最大化するための戦略を策定できます。

具体例

  • トレーニングプログラムのROI評価
    各トレーニングプログラムの投資効果を評価し、最も効果的なプログラムに注力します。
    例えば、プログラムAのROIがプログラムBよりも高い場合、プログラムAへの投資を増やす戦略を立案します。

  • 採用チャネルの効果測定
    各採用チャネル(例:リファラル採用、求人サイト)のROIを測定し、最適な採用戦略を立案します。
    例えば、リファラル採用のROIが最も高いことが判明した場合、リファラル採用を強化する施策を実行します。

終わりに

ISO 30414の「人的資本ROI」をダッシュボード化することで、企業は人的資本への投資がどれだけ効果的であるかを直感的かつ詳細に把握することができます。
現状の可視化、フィルタリング、セグメンテーション、ドリルダウン、予測分析を活用することで、具体的な課題の特定と戦略的な意思決定が可能となります。
しかし、そのためには縦割り人事の各チームのデータや、管理会計システム等のデータも必要になり、自力でやるのはかなり大変です。
ここはツール導入の専門ベンダーに頼まないと難しいですね。
「どんな業界・業種のダッシュボード導入もできます!」というベンダーでは人事の知識がなさすぎて正直力不足なので、人事に特化したベンダーにお願いせざるを得ないと思います。

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