2023神戸大(前)化学の解説を作りました。
全体の分析
試験時間60分 設問数25問
理論から1問、無機1問、有機2問の構成。論述問題が出題されなかった。「理論分解電圧」が出題された。第3問と第4問のように難易度に差があったので解く順番を工夫して時間に余裕を持ち精神的に安定してベストパフォーマンスを発揮しよう。
大問の分析
第1問 電気分解と理論分解電圧
電気分解の各電極の反応は物質が6個もあり意外と時間がかかる。
参考1の電気分解の規則を参考にして手際よく反応式を書けるようにしてこおこう。
本文にも書かれているようにAgClは沈殿で、イオンの数はゼロと考えるから電気分解は起こらない。意外と時間がかかるので手際よく反応を判断しよう。引っかかる生徒もいたのではないか。
理論分解電圧は高校化学であまり耳にしない。理論分解電圧とは『電気分解が起こるのに必要な最小の電圧』のことで発生•析出しやすいほど理論分解電圧は低い。
第2問 金属イオンの系統分離、溶解度積、結晶格子
溶解度積とは簡単に言えば『ほとんど溶けない塩のレアな陽イオンと陰イオンの積』のことである。意味を考えれば解いたことがなくてテクニックがなくてもこの問題は解ける。金属イオンの系統分離で第ニ属は酸性条件下で硫化物沈澱を含む物質として銅イオンが問われやすいが本問ではカドミウムイオンが沈澱する。迷った生徒も多いはずだ。新課程ではカドミウムのような12属元素も遷移元素に含めるようであり、このことが意識されての出題ではないかと考えられる。
第3問 環状エステルの構造決定
4題の中で一番難しい。問1の『元素の確認』は必ず得点したい。五員環構造をもち環内にエステル結合と炭素間二重結合をもつ化合物Aの構造を決定するのは見た目より難しい。ケト・エノール平衡やアルケンのオゾン分解についての知識も必要となる。
また問6では環内に二重結合を含む物質への臭素付加に関して、立体化学の知識が必要でこれも難しい。
第4問 天然有機高分子化合物
4題の中で一番簡単である。真っ先にこれを解いて残り3問を解く時間を確保しよう。
初めの文章の語句補充では『デンプンとセルロース』に関する基本的な知識が問われた。
問3(1)のアルコール発酵の計算も複雑でない。問5のプラスチックのリサイクル手法については重箱の隅を突かれたように感じる受験生もいたのではないか。