タカハシって天体望遠鏡の会社
今でもけして大きくはないこの会社
今は亡き父親の兄弟で始めた会社だが
父も母もここで働いていたので
私は小学校2年生になる迄この会社で
この会社の人達に育てられたみたいなものだ
板橋に本社があるがその隣に
その兄弟達を産んだゴットマザーとも言える
お婆ちゃんが住んでおり
会社の若い職人さん達みんなの母さんのようだった
昼食の賄いを大量に作りお昼時はてんやわんやだった
あっという間にお昼ご飯を食べ終えた職人さん達は
外でキャッチボールをして楽しげに遊んでいた
古き良き昭和の町工場のほのぼのとした光景だ
鋳物工場なんて死ぬほど熱くて大変な仕事なのに
工員さん達は皆んな汗と泥にまみれてたけど
眩しい笑顔を私に向けてくれて
とても可愛がってもらった
マスコットアイドルみたいな存在だったようで
みんなにいい子だね〜と言われた私は
自分の名前を聞かれて いい子ちゃん
と、答えるほど
お婆ちゃんちには、望遠鏡の設計をしたおじさんの
本がいつもてんこ盛りに山積みされており
その山を崩さないように遊びまわるのが楽しかった
おじさんは独学で天体望遠鏡を設計しちゃう
くらい賢いのに人としてめっちゃ優しくもある
お婆ちゃんが寝たきりになって
鼻をかめなくなった時
鼻を口で吸ってあげてたのだ
私は介護の仕事もやっていたけど
滅多にできるこっちゃない
そのおじさんは
私が大学生の頃、都内の電車の中で偶然会った時も
朝顔市で朝顔を買った後で両手に朝顔を咲かせていた
とにかく会社には真面目で優しくてみんな一生懸命
良い人しか居なかったな〜
そんな小さな会社だったが、クオリティというのか
性能を認められて、コアなファンやマニアがいるという
現在も弟がレンズの調整をする職人だが、
海外からのファンから手紙やお菓子を送られて
評価されているのを見ると
本当に嬉しくなる
創業に関わった父の兄弟も亡くなったり
引退されてしまっているけど
真心込めてクオリティの高い商品を造るという
事に誇りを持ってみんなで頑張っていたのを
肌感覚で知っているので…
真心は、情熱は、時間はかかれども
伝わる、広がるということを
教えてもらった気がしている
そんな家系に生まれた事も
1つの自分を知るきっかけになった
多分子供の頃のわたしは皆んなの
癒しになる役割りだったのだと思う
わたしも物作りの工場に潜入できる事は
本当にわくわくだったし
親が愛に疎いぶんこの工場の人達に
お婆ちゃんや叔父さんにたっくさんの
愛を貰ったな〜と改めて思う