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【週刊消費者情報】         「霊感商法を読む」〈復刻版〉①

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題が連日マスコミに取り上げられていましたが、最近すこし影を潜めています。今年1月5日に被害者救済新法等が施行されたことでひと区切りついたといったところでしょうか。しかし、法整備が一定なされたからといって、この問題がすぐさま解決するとは到底思われません。

 そこで、当協会が2013年3月1日発行 した『消費者情報』439号特集「霊感商法を読む」を再度活用して啓発の一助になればと思っています。10年前の記事になりますが、今でも十分に通じる内容です。”触らぬ神???に祟りなし” マインドコントロールを事前に防ぐ術を身につけたいですね。

欲得と思い込み それはもっとも危険な落とし穴    〈インタビュー〉安斎科学・平和事務所 安斎 育郎さん

霊感商法がはびこる心理的、社会的な要因とはなにか。
被害に遭う人、遭わない人の違いはどこにあるのか。
『だます人、だまされる人』など多くの著書で知られ、超常現象を痛烈に批判し続ける自然科学者の安斎育郎さんに、霊感商法の問題点について聞いた。

社会不安に巣くう霊感商法

――近年、開運ブレスレットなどの販売をきっかけに、開運商品を売りつけるトラブルが増加しています。このような霊感商法がなくならない心理的、社会的な要因はなんでしょうか?

 「思い通りに生きられない」と人が感じるとき、そこには「個人的」「社会的」「偶発的」な原因があり、それらが複雑にからみあって問題解決を困難にしていることが多いのです。自然災害など偶発的なことはもとより、社会的要因による問題は自らの力ですぐに改善することはできません。個人的なことでさえ、昨日までの生き方を根本的に変えるのは容易ではない。

 運勢を自らの主体的な力で創りだせといわれても、なかなかできないのが現実です。ほとんどの人は、不幸の原因について理解できるけれど、さてその先「どうすればいいのか」ということは、それだけでは見えてこない。そこに霊感商法がつけ入る隙があるわけです。

 時代の流れでいうと、1960年代の高度経済成長期から以降は、自分たちの労働力を売って、それまで思いもよらなかった「三種の神器」をはじめ、いろいろなものを獲得していけた時代です。それなりに「豊かな暮らし」が実現でき一段落した80年代からは、社会情勢の変化もあり「思い通りにいかない」時代がやってきます。

 悪質商法などが社会問題化してきたのもこのころからです。やがて不幸をかこつような悲劇的原因があふれる社会は、1年に3万人以上が14年間も自ら死を選ぶという自殺大国になってしまった。社会的閉塞感が高まるにつれ、人は「何かに依拠」して不幸を克服しようとする思いにとらわれるようになりがちです。そうした社会的不安や人の心理に巣くうのが霊感商法なのです。

――以前、大学で「霊の存在」について講義されたそうですね。
 
 僕がいた大学の学生を対象に、「霊は存在するか?」「霊の祟りはあるか?」などをアンケート(「立命館大学生および仏教各宗派の霊魂観」)しました。すると「霊は存在する」とした回答が10%、「霊の祟りがある」と回答したのが16%ありました。

 現代的な合理主義的教育を受けてきたはずの大学生ですらそうですから、社会全体ではもっと高い割合で霊の存在を信じている人たちがいると思われます。仮に1億人の20%がそうだとしたら、2000万人がそういう思いにとらわれていることになります。霊感商法を提供する側にとって、こんなありがたい話はないわけです。

 霊の存在について、仏教各宗派へも同アンケートを実施したところ、僧侶でさえ共通の認識ではないのです。しかし、本家本元のお釈迦さんは「霊魂不説」といって霊の存在を説いていません。また、鎌倉仏教の親鸞聖人も和讃の中で「このごろ坊主といわず庶民といわず、この日は縁起がいいとか悪いとか、天におわします神様、地に宿る神様を崇め奉っては、占いごとに打ち興じている。それは仏の姿をとった邪道である」と喝破しています。

 確かに日本には、霊の存在を認めさせるような宗教的風習が長くあったことは否めません。しかし、いまだに日本人が非合理的な「神頼み」に陥っていることについては、非常に問題があります。

 「後を絶たない霊感商法被害」という講義では、「客観的命題」と「主観的命題」の視座をきっちりともつことを学生たちに伝えましたが、これは霊感商法の被害を防ぐためにとても重要な点です。
                             〈つづく〉

 いかがでしたでしょうか。霊感商法の本質がすこし見えてきたようなそんなインタビューでした。次回をお楽しみに。
                          編集室 原田修身

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