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ロイヤルバレエガラ Aプロ

2019年11月、コロナ・パンデミックがひたひたと世界中を災いの渦の中に引きずりこもうとしてることなどつゆ程も思わず、クリスマス気分を満喫しようとロンドンに向かい、「コッペリア」「レ・ミゼコンサート」マシュー・ボーンの「Red Shoes」「メリー・ポピンズ」とイギリス観光を満喫してから2年と8ヶ月。やっとロイヤルバレエの皆さんの公演を生で観ることが叶いました。ほんと長かった…。

今回の公演をあらゆる難事を乗り越えて実現してくださったすべての方に惜しみない感謝を申し上げたいと思います。コロナ・パンデミックだけではない、現在直面している厳しい世界情勢を考えるだけでも無事に初日の幕を上げることは私たちの想像を遥かに超える大変なことの連続だったことは想像に難くないことです。

Aプロの幕開き『Morgen !』 Francesca Hayward & Cesar Corrales
ロックダウン中、無観客でロイヤルオペラハウスからの配信を観た時、暗闇の中に存在するかどうかも判らない一筋の光を求めてもがいている様を画面越しにひしひしと感じた作品。あれから2年の時を経て「劇場」という思いや息遣いを共有できる空間で感じたのは、「確かに明ける朝を感じて、さらに前(上)に向かって進もうとする力強い希望と暖かさと愛。

『Giselle 第2幕』 Sarah Lamb & Marcelino Sambe
Sarah Lamb の踊りを見ると、真摯にバレエ芸術にその身を捧げている尊い一瞬を分かち合ってもらっているありがたい(拝みたい)気持ちになります。今回のGiselleも、たった10分足らずの時間の中に全幕のクオリティを感じさせてくれて、馥郁たる香り高い最高の踊りでした。第2部ではまったく違う一面(二面?)も見せてもらって、Sarah Festivalって感じでしたね。
 Marcelino Sambe のパートナリングが私が座った席からすごく良く見えて、男性ダンサーのソロで爆発的な魅力を発揮するのとは違った鉄板な技術を垣間見せてもらったので、とても良い経験ができました。

『Rome and Juliet Balcony PDD』 高田 茜 &  Alexander Campbell
ロイヤルバレエの演目の中で一番最初にロンドンで観て、古いオペラハウスの最後の演目に(自身で)選んだのも『ロミジュリ』で初渡英から30年の記念に観劇したのも『ロミジュリ』でした。家族が亡くなって励ましてくれたのも、震災後に観たLeanne Benjaminのジュリエット。思い入れが深い作品なので、やっと高田茜さんのジュリエットをパ・ド・ドゥだけでも観られたのは大変嬉しかったです。そして最初にバルコニーにたたずむ姿と最後階段を登ってバルコニーから必死に手を差し伸べるたった数分の間にジュリエットが大人になる時間が流れている! こんな感動をもらえる生の舞台は本当に素敵です。第2部のバランシンの『Rubies』も圧巻。表情がくるくる変わるのを観ているとこちらもドキドキしてしまいました。完全にルビーの女王様がルビーの騎士(に見えるMarcelino Sambe)の上を行っているように見えるのが格好よかったです。

『Manon Bedroom PDD』 Francesca Hayward & Alexander Campbell
気がついたら、1日2演目マクミラン作品を踊ってる…Alex。彼のサポートは本当に安心で安全。音楽と踊りの合わせ方も素晴らしいので大好きです。数年前にDream のオベロンを見ましたが後半のアレグロが絶品で息をするのを忘れたほど。Francesca は、短いパ・ド・ドゥの間にもマノンの魅力全開でした。Soloist に昇進したばかりの2014年にプリンシパルのEd Watson を相手役に堂々とマノンを踊り切ってオペラハウスが温かい拍手に溢れていたあの秋の午後を懐かしく思い出しました。

マクミランの作品は踊らない、ちょっとした仕草とかただ立ってるだけとか…ダンサーの違いでまったく印象の異なるバレエに感じることもあるので沢山のダンサーで観たくなる罪な振付家です。来年の日本公演は「ロミオとジュリエット」に決定だそうですが(映画にもなったし集客も見込めるでしょうし)、遠くない未来に『マノン』全幕観たいですね、日本で💘。

『海賊 GPDD』 Yasmine Naghdi & Cesar Corrales
今回のロイヤルバレエ・ガラで、プティパのグランドバレエを一手に引き受けた二人。情熱を爆発させて、さらに加速する勢いのある若きラテン魂 Corrales と、強靭なテクニックをことさら誇示することなく気品と精緻さも表現するNaghdi。二人が組んで踊るのを初めてみてロイヤルバレエの良さを新ためて感じました。数十年にわたってオペラハウスの観客が育んできた『正しいロイヤルバレエらしさ』はYasmineの自制心をあわせ持つ華やかな踊りの中に受け継がれているのだと思いました。Bプロの『ドン・キホーテ』💃🏻も今から楽しみ。

Queen of the Gala  👑Marianela Nunez 
今回、名実ともにロイヤルバレエ・ガラの女王だったのは、ロイヤルバレエ在籍24年目を数えるMarianela Nunez。彼女を初めて観たのは、わずか15歳で第8回世界バレエフェスティバルに出演した時。お世辞にも「衣装」とは呼べないレオタードに申し訳程度のスカートのついた姿で笑顔全開の少女は真夏の東京文化会館に文字通り「涼風」を吹かせる様な軽やかなテクニックを次々と繰り出す『ダイアナとアクテオン』を踊って数日間で確かにバレエファンを魅了していました。

あれからの年月とその間に観てきた数々の素晴らしい舞台は、すべて今回の余裕たっぷりで笑顔とバレエへの愛が溢れてキラキラと輝きながら客席へと感動を届けてくれる姿に凝縮されているのだなぁと涙なくしては観られない姿でした。そして、今回Aプロ、Bプロで新しくプリンシパルになる二人のパートナーを全力で後押ししてくださっている姿勢がとても神々しいです。

平野さんの日焼けした腕に目が釘付けだった『コンチェルト』『アポロ』とか、未来への楽しみが益々膨らんだ新プリンシパルのWilliam Bracewell、Reece Clarke
(特にReeceはホワイトロッジのロイヤルバレエスクール→ロイヤルバレエの中で魅せるグラン・パ・ド・ドゥ踊れる数少ないプリンシパル)。WilliamがBプロも『精霊の踊り」を踊るのはちょっと不満。ギリギリのキャスト変更だったけど、何か彼に他に踊れるものはなかったでしょうか? 佐々木万璃子さんのオデット姫は曲の最後に向かって思いが溢れるのを抑え切れない様子がとってもよく伝わってきました。来シーズンも一層のご活躍を♪

Ed Watsonのことを書きたいのですが、思い出が多すぎて、ちょっと今言葉にするのは難しい。Bプロ終わったら長い時間の中から色々な思い出を頭の隅からひっぱり出してダンサーとしてのEd とのお別れにしたいと思っています。


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