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後片付けをしてから四階に戻ると、回廊にいたリリが、杏奈を見るなり駆け寄ってきた。 「あ…
激高する職員にファイルが閉じられてしまわないうちに、杏奈は素早く数字に目を落とした。 …
葉を砕いて粉にして、茎をしごいて汁を搾り、根を煮立てて灰汁を取り。 すべての材料を合…
「備えなされ、といわれてもねぇ……」 ぶつぶつ文句をいいつつ杏奈は四階に戻り、とりあえ…
しかし、五日経っても〈囁き〉は与えられなかった。 待てど暮らせど、配られる様子はない…
「ここです」 エミが案内してくれたのは、三乃宮へ向かう通路と反対側。 説明がなくても…
「なんでこれが囚人用の部屋なのよ……」 宮殿ツアーを終え、独房に入って一人きりになると、杏奈は大きく息を吐いた。 宮殿長の隣部屋を断り、四乃宮の四階にある女囚用の独房にしてもらったものの、案内されたのは、寝室の横にリビングダイニングがある、二間続きの広々とした部屋。 窓に鉄格子がはまっていなければ、高級宿と勘違いしそうなほどである。 ソファに腰掛けてみたものの、なんというかそわそわと落ち着かない。 杏奈は立ち上がって窓に寄りつき、格子越しに庭を見遣った。 「探検でも
ノックをして、応答がある前にロハンは扉を開けた。 部屋に入ると、ソファで本を読んでい…
ジーロの前を素通りして席に着くと、ロハンは無言で仕事を再開した。 いまは書類に目を通…
「――で、どうだった?」 読みかけの書類を脇におき、ジーロは部下を見上げた。 主が戻っ…
風太が杏奈の腕から飛び上がり、箱庭に一本だけ植えられている木の枝にとまる。 「ネズミは…
杏奈は宮殿長から離れ、ゆらりと円柱に近付いた。 花の浮彫が施された優美なアーチから顔…
12.四乃宮(2) 執務室を出て向かったのは、上下に螺旋が伸びる、石の階段である。 「…
11.四乃宮(1) 「――すまない。一人にするのじゃなかった」 ミクエミが出ていくや否や、宮殿長が眉根を寄せつつ謝る。眉間に皺を寄せても、宮殿長は美しかった。美人は得である。 「なにか厭な事をされたりしなかった?」 裸にむかれたのは〈厭な事〉の内に入るだろうか? 悩みつつ、杏奈はとりあえずかぶりをふった。 宮殿長は疑うような目で杏奈を見ていたが、不意に目元を緩めて、 「よく似合っているよ、そのブーロ」 びっくり。褒められた。 「どうしようもない連中だが、そのブーロ