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聖アンナと〈鏡の死〉

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『月の女神ナールによって、人間に与えられた罰〈鏡の死〉。 人を殺せば我が身にも死が跳ね返る、恐ろしい呪い。 殺意がなくても、〈鏡の死〉は万人に等しく降りかかる。 〈鏡の死〉に捕… もっと読む
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記事一覧

24. 最期の晩餐

 後片付けをしてから四階に戻ると、回廊にいたリリが、杏奈を見るなり駆け寄ってきた。 「あ…

春坂咲月
1年前

23. 始終、四十

 激高する職員にファイルが閉じられてしまわないうちに、杏奈は素早く数字に目を落とした。 …

春坂咲月
1年前

22.しじゅう、しじゅう

 葉を砕いて粉にして、茎をしごいて汁を搾り、根を煮立てて灰汁を取り。  すべての材料を合…

春坂咲月
1年前
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21.クドは予言の花

「備えなされ、といわれてもねぇ……」  ぶつぶつ文句をいいつつ杏奈は四階に戻り、とりあえ…

春坂咲月
1年前

20.〈囁き〉の正体

 しかし、五日経っても〈囁き〉は与えられなかった。  待てど暮らせど、配られる様子はない…

春坂咲月
1年前
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19.湯殿のリリ(2)

 「ここです」  エミが案内してくれたのは、三乃宮へ向かう通路と反対側。  説明がなくても…

春坂咲月
1年前
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18.湯殿のリリ(1)

「なんでこれが囚人用の部屋なのよ……」  宮殿ツアーを終え、独房に入って一人きりになると、杏奈は大きく息を吐いた。  宮殿長の隣部屋を断り、四乃宮の四階にある女囚用の独房にしてもらったものの、案内されたのは、寝室の横にリビングダイニングがある、二間続きの広々とした部屋。  窓に鉄格子がはまっていなければ、高級宿と勘違いしそうなほどである。  ソファに腰掛けてみたものの、なんというかそわそわと落ち着かない。  杏奈は立ち上がって窓に寄りつき、格子越しに庭を見遣った。 「探検でも

17.なぜアンナは選ばれたのか

 ノックをして、応答がある前にロハンは扉を開けた。  部屋に入ると、ソファで本を読んでい…

春坂咲月
1年前

16. モリト=アンナとは

 ジーロの前を素通りして席に着くと、ロハンは無言で仕事を再開した。  いまは書類に目を通…

春坂咲月
1年前

15. 補佐官は頭を悩ます

「――で、どうだった?」  読みかけの書類を脇におき、ジーロは部下を見上げた。  主が戻っ…

春坂咲月
1年前

14. 内緒話

 風太が杏奈の腕から飛び上がり、箱庭に一本だけ植えられている木の枝にとまる。 「ネズミは…

春坂咲月
1年前
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13.杏奈が喋った……!

 杏奈は宮殿長から離れ、ゆらりと円柱に近付いた。  花の浮彫が施された優美なアーチから顔…

春坂咲月
1年前
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12. 四乃宮(2)

12.四乃宮(2)  執務室を出て向かったのは、上下に螺旋が伸びる、石の階段である。 「…

春坂咲月
1年前
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11.四乃宮(1)

11.四乃宮(1) 「――すまない。一人にするのじゃなかった」  ミクエミが出ていくや否や、宮殿長が眉根を寄せつつ謝る。眉間に皺を寄せても、宮殿長は美しかった。美人は得である。 「なにか厭な事をされたりしなかった?」  裸にむかれたのは〈厭な事〉の内に入るだろうか?  悩みつつ、杏奈はとりあえずかぶりをふった。  宮殿長は疑うような目で杏奈を見ていたが、不意に目元を緩めて、 「よく似合っているよ、そのブーロ」  びっくり。褒められた。 「どうしようもない連中だが、そのブーロ