なりゆき五行連載小説「黒猫」

前文-Aはこれは好奇だと、尻尾を追いかける。

追っかける対象を見つけた脳は、数秒前まで考えを占めていた新しい小説の書き出しを忘れ、ひたすらに暗い毛並みを闇にぼやかしながら四足歩行する猫を捕らえることだけに向けられている。この不吉なようでいて幸運な黒猫さえつかまえられれば、言葉の本質まで同時につかめそうだと直感したのであるからAは、より慎重に、まだ距離を保って尾っぽに付きしたがう。

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