「黒猫」

前文-終わらない道に延々と毛をふりまいて逃げた。

Aは立ち止まって息づいた。白い呼気の悪臭が鼻頭に立ちこめてむせる。猫はいつの間にか消えていた。癖になる口の香りを何度も上に吐き確認していると、沿道を一周してきた黒猫が背後から迫ってくるのが小さな呼吸音でわかった。猫も荒い息を夜に漏らして、必死で走っていた。Aは、今度は、猫から逃げなければならない思いに駆られた。

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