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「浦井のりひろ」とアメト事変

酔っぱらった女とそれを支える男。
負け戦を覚悟しつつ、ほんの少しの期待を冗談ぽさに隠してホテルへと誘う男。

それに対して間髪入れずに「いいよ」と返す女。

男はその即答っぷりに一瞬言葉を失い、思わず「え?」と聞き返す。

「いいよ」

念押しする女。
まるで逃がすまいとしているかように男の腕に手を添えて、しっかりと目を合わせ、言う。

返す言葉が咄嗟に出ず、再度言葉を失う男。
女がした返事の意味を捉えあぐねて、しばし考え込む。
自分にとっての好機よりも彼女の身持ちが心配になり、思わず女に向き直ってちょっと困ったような笑みを浮かべ問いかける。

「言ってる意味わかる?」

きっと酔った弾みだろう、という自嘲と諦め。
男のそんな心情を一蹴するかのように、女が畳みかける。

「わかるよ。したいんでしょ?そのつもりで来たよ」

男は驚き、戸惑い、思わず反復する。
女はダメ押しするかのように、その言葉に被せて返す。

「その…つもりで来たの?」
「そのつもりで来たよ」

女の言葉と眼差しから、それが本気の返事だとようやく察する男。
一瞬の間。流れる沈黙。
変わらず優しい口調で、優しい笑顔で、眼差しに抑えきれない喜びをたたえて、男が口を開く。

「じゃあ⋯、行こっか」

男が女の手をとり、夜の街へと連れ去っていく。


2023年3月9日(木)
アメトーーク!「女性役やってる芸人」での一幕。
男:男性ブランコ 浦井のりひろ
女:空気階段 水川かたまり(役名:吉野あさひ)

凄かった。見終わった後もドキドキが止まらなかった。
予想外にロマンティックな「大人の男女」ムーブ。
元々評判高いかたまりくんの女性役を凌駕し、浦井さんの魅力が大爆発した瞬間だった。

自分的な解釈としては、浦井さんがあさひちゃんに片思いしていて、介抱役に乗じて冗談ぽくダメ元で誘ってみたってシチュエーションで妄想。

最後浦井さんが、ほんとに些細な、さりげない男らしさを見せて終わるのが良い…。
「じゃあ⋯、行こっか」っていう台詞の裏で、

“君がそのつもりでいてくれるのなら、僕ももう遠慮しないよ。”

って声が聞こえてくるかのようだった。(妄想です)

ホテルに誘っている時、あさひちゃんのそばでしゃがんで目線を合わせて、でも自分からはなかなか触れない。
(逆にあさひちゃんの方が積極的にスキンシップ取ってくる。それもよい……)
女性にプレッシャーを与えない、優しい距離を取っていて。

でもあさひちゃんの気持ちを確認した後は、自ら手を取って、ほんのちょっと引っ張るように連れて行く。
迷いのない潔さ。それまでの間をとった演技から一転、ちょっとだけ弾むような急ぎ足に感じる絶妙な速度。
女性が欲する心地いい強引さ。さりげない男らしさ。

自分で誘ったにも関わらず、予想外のYESに戸惑って思わず聞き返しちゃう気弱さにも可愛いが滲み出ている。
気遣いと溢れる優しさ、漂う包容力。こんなの惚れる要素しかない。

あまりにも自然体すぎる演技故に、見ている方はこの役を浦井さん自身に投影してしまうのはもうしょうがないと思う。
こんなの見せられたら、もう落ちるしかない。
この魅力には抗えない。

可愛い女性を演じる力に長けてるかたまりくんに加えて、
それに追随した自然体の演技で、図らずも破壊力を増してしまった浦井さん、双方の演技の相乗効果が大きすぎた。
あの演技はアドリブだったのか、打合せしてのことだったのかは気になるところではあるけれど。

(個人的には、ホテル行く行かないでひとくだりあると予想してた浦井さんが、即答してきたかたまりくんに戸惑っての、あの間かなと予想するんだけど。
アドリブだとしたら、あの空気感を即座に出せるのも凄すぎて怖い)

ともかく、浦井のりひろと水川かたまりという天才コント役者二人の才能と魅力を、これでもかと味わえた史上最高に至福の回だった。

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