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親子の絆を深める読書感想文~リテラの先生の子育てから&つまずき別サポート例つき~

読書感想文を親子の絆を深める時間に

「夏休みの読書感想文、ああ、今年も子どもとのバトルがあるのか~」
と気分が落ち込んできてしまうという声や、
「子どもとケンカになるから、読書感想文じゃなくて自由画にするわ」
といった声をうかがうことがあります。

わかります。
私も、二児の息子を持つ身。
長男N君は今年小6。次男のH君は小1です。
私は、国語教育に関わり20年目になります。毎年たくさんの生徒たちの読書感想文の指導をしています。
そんな私も、息子の読書感想文をみるときには、ピリピリ・ツンケンしてしまう場面もあります。

なぜかといえば、読書感想文はたいてい宿題として出されるもので、子どもたちが自分から書こうと思って書いているものではないからですよね。

親からしても、「子どもに書かせなければいけない」ので、やらされている人(子ども)と、やらせなければならない人(大人)との間が、穏やかでいられるはずがありません。

それでも(!)、私は、子どもと過ごす読書感想文を、毎年楽しみにしています。

読書感想文を、お子さんの成長を感じて、親子の絆を深める時間にできたら、素晴らしいと思いませんか。

「読書感想文って面倒くさい」「やらなければならないから、早く片付けてしまおう」という気持ちを、親子で共有してしまうと、「読書」そのものへのネガティブなイメージがくっついてしまいます。

たくさんの人に、「読書」を好きになってほしい、と願う私たちからすると、それはとても残念なことです。

子どもたちが、読書を好きになるように。また、読書感想文を親子で成長を感じ、絆を深めるきっかけとなるように。親子だからこそできる読書感想文の工夫を、私の体験を交えながらお話したいと思います。


この記事を書いた人

リテラ「考える」国語の教室 取締役。言葉は心を形作り、成長の中核を成すものという視点から、教育活動を行っている。作文・読書・国語教育に関わり20年目。2児の父。

■好奇心のタネをまく

N君が小1の時、私は、河川敷にある公園に一緒に遊びにいきました。息子と一緒に遊ぶことが主目的なのですが、もう一つの目的は、「モグラ塚」を見に行くことでした。

モグラ塚というのは、モグラが地表近くの土を掘り返してできた土の山のことで、そこにモグラが住んでいることの印になります。
そのことをN君に教えると、「モグラを見てみたい!」といって、土を掘り返し始めました。でも、モグラ塚ができたのは、しばらく前のことですから、そこにはもう、モグラはいません。
残念そうにするN君と「土の中のモグラを見てみたいね」、と話しながら、その日は家路につきました。

さて、なぜ私は、公園にモグラ塚を見に行ったのかというと、その年の、読書感想文の課題図書の中に『もぐらはすごい』という絵本があったのを知っていたからです※。

「この本で子どもに読書感想文を書かせよう」と決めていたわけではありません。

でも、自然のことを知るのが好きなN君にとって、『もぐらはすごい』は合っていそうだな、とは思っていました。

そんなとき、私は事前に、好奇心のタネをまくことを心がけています。
それがすぐに芽を出したり、花を咲かせなくてもいい。
いつか親の気づかないところで、気が付いたら芽を出して、葉っぱを広げてくれたらいい。
そんな思いで、散歩のときなどには、子どもに道端の花の名前や、虫の名前を教えるようにしています。

後日、読書感想文の本選びのときに、課題図書に『もぐらはすごい』があることを知ったN君は、「読んでみたい!」と前のめりで興味を示していました。私は、内心しめしめと思っていました(笑)。でも、『もぐらはすごい』でなくても、よかったのです。前向きに読める本があることが大切です。

まず、読書感想文に向かうための最初のハードルは、本選び。どの本を読んだらよいか、迷ってしまうこともあると思います。

本が好きなお子さんなら、読んでおもしろかった本を選べばよいのですが、そもそも、「読みたい」と思ってもらうことが難しいこともあります。

ですから、「読んでみたい」「読んでみようかな」という第一歩を踏み出すために、本に関連する体験をしておくと、その一歩が前向きな一歩になります。

※読書感想文の課題図書は、ゴールデンウィークごろにはすでに決まっています。そのころは、まだ図書館でも借りやすいので、ぜひ早めに借りておくことをおすすめします。

■本と現実を橋渡しする

本の世界と、現実はつながっています。

現実の物事についての知識がなければ、本の中で語られることをイメージすることはできませんし。本で得た知識は、現実を理解することに役立てられます。

成長するにつれて、本は本、現実は現実、と分けられていってしまいがちなのですが、そもそも、特に幼い子どもたちにとって、現実と本の世界は地続きです。

3歳くらいまで、お肉が苦手だったN君は、五味太郎さんの『月夜のキャベツくん』という絵本をきっかけに、「とんかつ」を食べられるようになりました。『月夜のキャベツくん』では、月夜に、とんかつがやってきて、「とんかつであーる!」と宣言するシュールな場面があります。「とんかつであーる」といいながら、息子がうれしそうにとんかつを食べる姿は、8年たった今でもよく覚えています。

本から現実へ。
現実から本へ。

この橋渡しは、先生よりも親の方が上手にできるのです。

我が家では、朝・晩に「書く時間」と「聞く時間」というものがあり、朝起きたら、その時期にあった書く課題やワークに取り組み、読み聞かせを聞いたり読書の時間を作ることが習慣になっています。定番の絵本や物語を毎朝・毎晩読み聞かせをしました。

毎日のように読み聞かせしているのが、未就学児向けの写真絵本シリーズの、フレーベル館の「しぜん」シリーズです。

毎月、季節にちなんだテーマや、子どもたちにとって身近なものをテーマに、たくさんの写真とともに紹介する、子どもの知識を豊かにする本です。未就学児向けなのですが、小学校中学年くらいまでおすすめです。楽しんで、しっかりとした知識を得られます。私も大好きです。リテラでも多数そろえています。

たとえば、『しぜん いちご』を読むときには、スーパーでいちごを買っておいて、いちごを一粒、子どもに渡してから読み聞かせをする。『しぜん とぶ』を読んだら、一緒に紙飛行機を折ってみる、というように、読み聞かせとセットで、五感を刺激したり、制作活動をしてみたりします。
読書と現実がリンクすることで、読むことが何倍も楽しくなります。さらに、読書が、現実の見方を豊かにしたり新しく何かができるようになるきっかけを作るようにしたりしてくれる素晴らしいことなのだ、ということを共有することができます。
こうした体験を言葉にすることができれば、読書感想文のときには、「何を書けばいいかわからない」と困ることが少なくなるのです。

リテラの「いちごの観察」の課題。『しぜん いちご』を読んだ後に、いちごについて観察したことをシートにまとめていきます。

■心の成長に合わせて、読む本もステップアップしていく

本と現実の橋渡しをするのは、未就学児や低学年のころに限りません。
N君が小3くらいから特に好きになったのは、「冒険」の物語です。

アーディゾーニ『チムとゆうかんな船長さん』に始まる、「チムシリーズ」は、船乗りになりたい少年チムが、船での仕事を覚え、嵐に見舞われたり、記憶をなくした女の子と出会ったり、海賊に襲われたりしながら、いろいろな冒険をする物語絵本です。一冊ずつ、どきどきわくわくしながら読み進めました。

ガレット夫妻の『エルマーの冒険』は、少年エルマーが、動物たちにとらわれたりゅうの子を助けるために、知恵をはたらかせて動物たちを出し抜いていきます。その後も、りゅうの子を家族の元へ返すため、エルマーの冒険は続きます。小4の読書感想文は、この作品で書きました。

小5の夏、少年らしい冒険欲の高まりの最中、ちょうどアニメ「ポケットモンスター」に夢中になったN君は、主人公のサトシのように「一人旅をしてみたい」といって、片道1時間ほどかけてバスと電車を乗り継ぎ、東京スカイツリーへの旅をすることにしました。

事前に展望台のチケットを予約しておき、「スカイツリーから見える景色を写真にとる」ことがミッションです。一日だけ、GPS代わりにスマートフォンを預けて、親としてもハラハラしながら送り出しましたが、息子は、「困ったら駅員さんに聞くから大丈夫!」と朝早く、いそいそと出発していきました。早朝に出かけて、お昼前に帰宅するという、大人からすれば、ほんの小さな旅でしたが、息子にとっては大冒険だったようです。

午前8時にはスカイツリーに到着。展望台の景色を満喫した息子からの写真。

その年は、読書感想文用に「旅」や「冒険」をテーマにした本を何冊か息子に紹介したのですが、息子が読書感想文用に選んだのは、岡田淳さんの『二分間の冒険』。黒猫を助けた少年が、竜の支配する不思議な世界に引き込まれてしまう物語です。岡田淳さんは、小学校で図工の教師をする傍ら、学校を舞台にした魅力的な物語をたくさん書いています。

「親を離れて冒険したい」という自立心の芽生えという、心の成長に合わせて、読む本もステップアップしていくことを意識すると、本の内容について、自分を重ねていくことが自然にできるようになります。

実はN君、この本では、「旅」ではなく、「人と協力する大切さ」をテーマに書いたのですが、「協力」という、より社会性を帯びたテーマが自然と出てきていたことに、高学年らしい心の成長を感じることができました。(N君がどんな作文を書いたかについては、この文章の最後にご紹介しています。)

■困ったときは「一緒にやってみよう」

さて、ここまで書いていると、まるで順風満帆、我が家には読書感想文をめぐるトラブル一つないように思われるかもしれませんが、そんなことはございません。

いざ、書こうと思っても、なかなか良い表現が思い浮かばなかったり、何から書けばよいか迷ってしまったり、とつまずくポイントは数知れません。

なぜなら、読書感想文を書くためには、次のような、さまざまな力を必要とするからです。

1.本を最後まで読む力(理解力)
2.本からテーマや、考える視点に気が付く力(発想力)
3.アイデアを言葉にする力(言語化能力)
4.気が付いたことを覚えておく力(保持力)
5.アイデアを構成する力(構成力)

読書感想文という課題の目標を、どのレベルに設定するかにもよるのですが、上記以外にも自分の体験を物語化する力原稿用紙のルールにのっとって書く力など、読書感想文を書き上げる力は、本来は小学校高学年くらいになって育ってくる力だと私は考えています。

そのため、読書感想文の課題に取り組む上で、「子どもが一人で書かなくてもよい」という点を大前提にしています。

だから、子どもがつまずいたときの合言葉は、

「じゃあ、一緒にやってみよう。」

子どもが、抱えきれなくなりそうになっているものを、一緒に持とう、と声をかけることで、前向きに考えてみようという姿勢を引き出すことができます。

この時、子どもがどこにつまずいているかによって、援助の方法が変わります。そのため、子どものつまずきポイント別に、援助の仕方を整理してみます。


①本を最後まで読めない・「読んだ」といってもわかっていない場合~理解のサポート

こうしたときには、「じゃあ、一緒に読んでみよう」と声をかけて、読み聞かせしたり、一ページずつ交互に音読したりします。大変ですが、手っ取り早いです。

絵本なら、それほどでもないのですが、100ページを超えた児童書になってくると、とても大変に思えると思います。

私は「エルマー」シリーズも、1冊180ページある『大どろぼうホッツェンプロッツ』三部作も読み聞かせしました。最近は、角川の歴史学習漫画「日本の歴史」シリーズを読み聞かせています。親も大変なのですが、毎晩歯磨きを終えたら一章読む、などと決めて読んでいくと、それが習慣になって、読み進めていくことができます。

黙読では、読んでもうまく物語をイメージできない子も、読んでもらえれば物語をイメージして楽しむことができる、というお子さんは少なくありません。
また、一緒に読むことで、親子で本について話し合うきっかけも生まれます。お母さんやお父さんが、その本を読んでどう感じたのか話すことで、本を読む人の心の動きを知ることができるようになります。
親子一緒に読むことで生まれる温かい時間が、親子の絆を育み、読書へ前向きな姿勢を作ることにつながります。


②本からテーマや、考える視点を思いつけない場合~発想のサポート

2つの方法があります。読んでいる最中にサポートするか、読んだ後にサポートかです。

≪読んでいる最中の場合≫
読みながら、子どもがコメントしたところに付箋を貼っておく、あるいは一章読んだあとに、コメントしたところに付箋をはっておく、といったアプローチです。全部読んだあとだと、情報量が多すぎて着眼点を見つけられないかったり、すでに読んでいるときに感じたことを忘れてしまったりすることがあります。ですから、読んでいる最中、子どもの心が動いたときを逃さずに、付箋を貼ったり、コメントを聞き取ったことをメモして、貼っておくことで、後で利用できるようになるのです。

付せんを貼ると、内容を思い出すきっかけになる。
コメントを書いておくと、後で利用しやすくなる。

≪読んだ後に話し合う場合≫
まずは、子どもがリラックスできる状態を確保しましょう。早い段階で「どう思う?」「なぜ?」と質問攻めにしてしまうのは逆効果。

プレッシャーがかかると、記憶や処理の力は低下します。そこへ質問を重ねてしまうと、ますます負荷がかかり、悪循環に。親子関係は一気に険悪になります。

1つ、2つ、それとなく質問してみて、うまく言葉が出てこないようであれば、親が感じたことや、体験したことなどを話すことで、それとなく手本を示すと、それが呼び水となって子どもの言葉が出てくることもあります。

どうしても言葉が出てこないときは、あまり頑張らせすぎずに、気分転換しましょう。おいしいものを食べたり、体を動かしたりすると、気分が変わって、心と言葉の風通しがよくなります

心と言葉の風通しがよさそうだな、と感じたら、少しずつ質問をして、考えを深めていきます。

読後の感想を尋ねる場合、私は「心に残ったところや、よく覚えているところはある?」「すごいな、って思ったことある?」などと、少しあいまいな聞き方をすることが多いです。子どもの感じた気持ちに、すぐに「面白かった」「わくわくした」とこちらで名前を与えずに、子どもが、自分の心を探索して、感じた気持ちに名前を付ける作業を大切にしたいからです。

発想のサポートをする上で大事になるのは、質問の仕方です。質問のリストを下記に記しています。

質問のリスト
・心に残ったことはある?
・どんなことを覚えている?
・好きな場面はある?
・好きな人物はいる?
・もしも〇〇だったら、どう思う?
・〇〇と同じような体験をしたことはある?
・〇〇は、どうして~したんだと思う?
・〇〇ってどうして大切なんだと思う?
・〇〇と△△のちがいってどんなところかな?
・〇〇のどんなところが良いと思う?
・それは、どんなときのことかな?


③言いたいことが、うまく言葉にならない場合~言語化のサポート

子どもたちの読書経験や、個人差が大きいのが語彙。
言いたいことがうまく言葉にならない、ということがあります。
あるいは、「おもしろかった」「楽しかった」の一点張りで、表現が膨らんでいかない。そんなときには、

「『達成感を感じた』っていう表現はどうだろう?」

「やりたい気持ちと、恥ずかしい気持ちがぶつかりあっていたんだね。『葛藤する』という言葉もあるけど、〇〇くん(さん)の気持ちにぴったりくる表現はどうだろう?」

というように、それとなくモデルを示して、本人に選んでもらいます。ただ、その言葉を使うかどうかは本人が決めることです。表現を押し付けてしまうと、その作文は、子どもにとって「自分で書いたもの」ではなくなってしまいます。大事なのは、本人にとって、「自分の書きたいことにぴったりくる言葉が見つかった」と思えることなのです。

対話を通して、言葉の世界が広がる機会が持てたら、それだけで読書感想文に取り組んだ甲斐があるというものです。


④書こうとしたことを思い出せない場合~記憶の保持のサポート

ブックトークが弾んだ後、いざ書こうとすると、話したことを思い出せない、ということがあります。

せっかく良いアイデアが出たのに、思い出せなかったり、詳しい部分がなくなって、短い文で終わってしまったりして、「あんなにいろいろアイデアが出たのに!?」と、がっくりきてしまうのです。

そうならないための方法として、子どもが話していることを、大人が付せんにメモをしておくことをおすすめします。発想のサポートとも共通しています。

「大人がメモしてしまっていいの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

メモをとる目的は、記憶のサポート。子どもが話したことを後で利用できるようにするための工夫です。したがって子どもが話していないことや大人が書いてほしいことを勝手に付け加えてはいけません。

ただし、対話を通して、考えが深まった結果、子どもの言葉として出てきたアイデアはきちんとメモしておきます。

対話することで、一人では気が付けなかったことに気が付けるとしたら、それこそ読書感想文に親子で取り組む価値なのです。

メモをとっておくと、この後、構成を考える上でも役に立ちます。


⑤アイデアはあるけれど、どんな順番で書いていいかわからない場合~構成へのサポート

読書感想文を、どんな構成で書いたらよいかというのは、迷いどころだと思います。

最近では、構成について、学校でサポートシートが配布されて、構成が指定されることもあるかもしれませんが、書きたいことと、指定された構成が食い違って、うまく書けなかったり、かえってアイデアがふくらまなかったりすることもあります。

いろいろなアイデアを整理して、テーマを絞ることができるようになり、どんな順番で書いていくか全体の計画ができるようになる目安は、高学年以降です。

そのため、学年や文章の習熟の段階に合わせて、3つの書き方をご紹介します。

1.時系列で構成する「電車型」~低学年向け

時系列で、読んだ場面ごとに、少し紹介しては、その時に感じたことを書いていくスタイルです。車両が連結していくように、「場面→気持ち」が、時系列にしたがってつらなっていきます。本を読んでいく体験をなぞるように書いていくことができます。

2.視点を決めて構成する「再構成型」~中学年向け

よく小学校のサポートシートで示される形です。序論・本論・結論の形になっていて、序論で本の紹介、本論では、「心に残ったこと・好きな登場人物」などの視点が三つくらい紹介して、結論でまとめます。
「電車型」のように時系列で書いていくのではなく、自分で視点を決めて、いくつかの話題によって、本の内容を再構成しながら考えていく書き方です。
電車型よりも俯瞰的な視点に立って考える書き方ですが、次の「テーマ先行型」の書き方ほど、まだテーマに関する一貫性のない段階です。

3.書きたいテーマがある「テーマ先行型」~高学年以降向け

物語から得たテーマについて一貫して考えていきます。「あきらめない気持ち」「協力することの大切さ」など、初めにテーマについて導入で触れてから、本の内容と関連させていきます。
そして自分の体験を紹介し、最後には、物語と自分の体験とを結びつけるテーマについて考えていきます。

「テーマ先行型」の書き方ができるようになれば、それ以降は、本当に書きたいテーマ、考えたいテーマと向き合って、構成にとらわれずに書いてほしいと思います。あらすじも、登場人物についても一切ふれなくても、本を通して得た価値について考えていくこともできます。

読書感想文の指導方法について具体的な紹介をこちらの記事でもしていますので、是非ご覧ください。

■結び~「一緒に取り組んでよかった」と思える時間を

ご紹介したように、どんなに心を配って、子どもの読書感想文をサポートしようとしても、どうしても険悪になってしまうときもあります(笑)。

「大人のアドバイスを聞きたくない! 自分で書く!」と意固地になってしまうこともあると思います。

そんなときは、少し手を放して、子どもが自分でやってみたり、気持ちを落ち着けたりする時間をとることが大切です。

部屋にしばらくこもって、自分で試行錯誤してみたり、クールダウンして相談にしやってきたりするかもしれません。

自分でなんとか書き上げたなら、なによりですし、やっぱり困っているようだったら、改めて「一緒にやってみようか」と声をかけてあげるとよいでしょう。

大切なことは、困ったときに助けが得られると子どもが信じられることです。

押し付けない、かといって放り出さない。

そんな「間」の距離感を大切にしながら見守ることが、子どもの主体性を損なわず、少し険悪になったとしても、また歩み寄って、良い親子関係を築くことにつながります。

そうした関係を経て読書感想文を書き上げたとき、それまでに紆余曲折があったとしても「一緒に取り組んでよかった」と思える取り組みになるはずです。

昨年は、私もNくんと、ぶつかってしまう場面もありました。Nくんは、先程ご紹介した『2.視点を決めて構成する「再構成型」』で下書きを書いたのですが、N君が考えた「協力すること」というテーマについて、話し合ったらもっと深まりそうだったので、私は一緒に話し合ってみようと提案したのです。

しかし、N君は、思っていることをうまく言葉に出せません。もやもやしたものが胸の中にいっぱいにあるのに、言葉にならないのです。だんだんソワソワ・イライラと感情的になってしまって、「もうひとりでやるからいい!」と部屋にひっこんでしまいました。

しかししばらく経って、N君が、部屋から出てくると「やっぱり一緒に考えたい」と言ってくれました。Nくんの机の上には、書き散らしたメモがありました。自分なりに考えて、クールダウンしようとしたことが伝わってきました。

私は、「一緒に考えてみようか」といってN君の隣に座り、「だれかと協力しなかったら、なにか困ることあるかな?」と問いかけて、ゆっくりと対話を進めていきました。

そうした会話は、日常生活の中では、なかなかできない種類の内容です。私達が生活していく中で、当たり前のようになって気が付きにくい価値や、テーマについて話し合うきっかけを持つことができたら、それは得がたい成長の機会となります。昨年の読書感想文はN君にとって、「自分」というものを見つめ直すきっかけになったようでした。
昨年のN君の読書感想文をご紹介します。

「人と協力し、新たな自分を発見する」
小5・N君
 ぼくは、一人で行動することが多いです。友達に頼るのが苦手です。自分の力でできないとくやしいから、自分でできるようにしたいのです。
 『ニ分間の冒険』に登場する子どもたちも、最初は自分が選ばれた者だと思っていたから、自分の力だけで竜をたおそうとしていました。他の人と話し合いもしないし、他の人の手伝いもしません。しかし悟は、特別なのが自分だけではなく、一人ひとりがたとえ自分の戦いに負けても、あとのみんなに情報を伝えていき、みんなで戦えばいいと気がつきます。あとになる者ほど、情報が多くなり、竜をたおすことに近づくというメリットを、みんなで分かち合ったのです。
 夏に、ぼくは福島県の自然の教室で、焼き板作りをしました。ところが、やけどがこわくて、なかなか挑戦できませんでした。みんなが焼き始めると、板をつかむトングがなくなってしまい、板を焼けません。ぼくは、やばいな、と思ってあせりました。だれかに相談したかったけれど、みんな、いそがしそうだったので、話しかけられませんでした。ほとんどの人が焼き終わったころ、友達が、
「やろうか」
と声をかけてくれました。そして、ぼくの板を焼くのを手伝ってくれました。その時ぼくは、「助かった」と思い、ほっとしました。その子が協力してくれたから、いい焼き板ができました。
 協力すると、一人ではできないことが、できるようになったり、自分ではわからなかったことがわかるようになったりします。一人でできないままにするよりも、だれかと協力したほうが、達成感があります。さらに、みんなでできると、達成感を分かち合えます。
 しかし、ぼくは、協力することが難しいと思うときがあります。自分の力でできないと、いらいらしたり、あきらめそうになったりしまいます。どうしても自分の力では無理だと思ったときは、友達や先生に相談することが大切だと思います。手伝ってもらったときには、「ありがとう」と伝えたいです。
 最後は、みんなで竜を負かすなぞを考えて、竜をたおしました。でも悟は、「一番たしかなもの」に姿を変えているダレカを見つけなければ元の世界に帰れません。悟はかおりに一番確かなものは、悟自身だと教えてもらいます。
 言われてみればぼくは、「自分」が確かなものだといえると思いました。食事するときも寝るときも、ぼくはここにいます。ぼくが、ぼくからはなれてしまうときはありません。でも自分は、自分では見ることができません。だから悟がかおりに教えてもらったように、自分では気づかないことをだれかから教えてもらって気づくのだと思います。
 これからもぼくは、人と協力して、新しい自分を発見していきたいです。

毎年、子どもの読書感想文の取り組みを見守ると、子どもの成長を見て取ることができます。手にとる本が変わったり、文の書き方が上手になったり、自分なりのアイデアが出るようになったり……ほんの少しの成長で構わないので、そうした変化に気が付き、励ましてあげてください

我が家では、今年は、小6の長男のもしかしたら最後かもしれない読書感想文と、小1の次男の初めての読書感想文があります。

まだ本は決めていませんが、一緒に図書館へ行って、「今年はどんな本がいいかねぇ」なんて話しています。

子どもたちが、どんな読書感想文を書くのか。子どもたちと、どんなことを話し合えるのか、とても楽しみにしています。

この文章を読んでいただいたご家庭が、今年の読書感想文を通して、少しでも「一緒にやってよかった」と思える時間を過ごせたら、幸いです。

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