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正午の太陽の仰角と方位を測定する@れいばひろう

本記事では、「チ。ー地球の大きさついてー」記事にて各部員が測ることになった、ある地点における太陽の仰角、方位、南中時刻の各値を求めるために私、れいばひろうが行ったことを記載します。


タ。 - 太陽の仰角について -

 太陽を仰ぎ見たときの角度、つまり、高度を測定します。一般的に、星の高度を測定するための簡単な手段としては、目線と水平の位置から握りこぶし何個目に目的の星があるかを調べ、握りこぶし一つ当たり10°として求めるやり方や、分度器の中心からおもりを付けた紐を垂らして目的の星に向けて傾けることで測定するやり方等があります。

握りこぶしをつかう方法
分度器を使う方法

 しかしながら、太陽の高度を調べる場合、これらの方法は使えません。というのも、これらの方法は目的の星を直視することが前提であり、太陽に対して実行すると網膜を痛めてしまうためです。一応、太陽を直視する方法として日食眼鏡を使用する方法がありますが、日食眼鏡をかけると太陽以外何も見えなくなるという問題が発生します。

日食眼鏡を用いて測定しているときの視界。握りこぶしも分度器も見えない。

 というわけで、太陽を見ることなく高度を求める方法を検討する必要があります。

 検討の結果、下図の方針で測定することにしました。

太陽の仰角を求める

$${\tan\theta = (\frac{A}{B})}$$ から、Tangentの逆関数を使用して $${\theta = \arctan(\frac{A}{B})}$$ とすることで高度 $${\theta}$$ が求まります。

 さて、測定です。具体的な方法としては、まず測定時刻になったら、写真のように、まっすぐな姿勢で立ったときに頭の先端に目印(白い石)が合うようにちょっとづつ移動しながら調節します。

白い石を頭にのせる

 その後、紐の先端を底に貼り付けたペットボトルを立っていた場所に置き、下の写真のように足元から目印まで紐をピンと張り、紐の目印部分に油性マジックで印を付けます。 

ペットボトルの場所が立っていた場所

 後に紐の先端から目印までの長さを測った結果、影の長さBが2.705mであることが分かりました。私の身長Aが、靴や髪の分を含めて1.63~1.64mとなるので、この数値を元に、スプレッドシートのATAN2関数及び、DEGREES関数を使用して太陽の高度 $${\theta}$$ を求めます。

スプレッドシートにてarctanを計算

 以上より、12/3 12:00、測定箇所における太陽の高度は31.0°~31.2°である、という測定結果が得られました。

タ。 - 太陽の方位について - 

 太陽がどの方角にあるか(方位)を調べる方法を検討します。

日食眼鏡では太陽しか見えない

 仰角の章でも話題にしましたが、やはり太陽を直視して調べる方法はとりたくないため、影で測定する方法でどうにかしたいですよね。検討の結果、下図のような感じで測定することにしました。

太陽の方位を求める

 次に、図の「基準の方角を知るための装置」について検討します。最近のスマートフォンにはコンパス機能がついているので、コンパスアプリを使用することで解決しそうですが、残念ながらスマートフォンは悪魔の道具なので使用することができません。科学的な別の方法を検討しましょう。
 賢者は歴史に学ぶ、ということで方位を知る手段の歴史を調べてみると、羅針盤の原型となるものとして、磁石を魚の形をした木片に埋め込み、水に浮かべることで、魚の頭が南を向くようにした「指南魚」というものが3世紀頃から中国国内で使われていたそうです。*1
 「南を指す魚」で「指南魚」。図らずも、人を教えみちびくことを意味する「指南する」という言葉の語源までわかっちゃったんじゃないの?と少しテンションが上がったのですが、よくよく調べてみると「指南」という言葉の語源は古代中国に使われていた「指南車」という別の機械が語源なのだそうです*2。そうですか。ガッカリです。
 ただし、この「指南車」、使用者が最初に指し示した方角をゼンマイ仕掛けのからくりでずっと差し続けるというもので、必ずしも南を指し示すものではないとのこと。何なんですか、指南車、全然指南してないじゃないですか!指南魚の方がよっぽっどちゃんと指南してるじゃないですか!

 閑話休題。とにかく、この「指南魚」を自作する方針で進めたいと思います。工作の時間だ!

ALWAYS GOODⅡ世号

 さて、これが自作した指南魚改め、指南船ALWAYS GOODⅡ世号です。(Ⅰ世号は沈没。)セリアで売っていた使い捨ての木製マドラーを骨組みとして、刺身パック(気持ちばかりの魚要素)と冷蔵庫に張り付いていたマグネットをボディの素材として使用しています。マグネットは船首側がS極になっており、これを水に浮かべると、常に船首が南を、船尾が北を向く、という構えです。ちなみにこの木製マドラーは影を作るための棒としても使用しています。

 ちなみに、ダメ元でゆる学徒カフェで売っている堀元見マグネットを水に浮かべてみたところ、ゆっっっっくり南の方向に頭を向けました。
 顔の裏側に対して磁石のS極N極いずれかの面が接着されているので、本来ならば特に指南することなくただぷかぷか浮き続ける堀元見になるはずでしたが、堀元見マグネットの顔の上下がアンバランスなことで傾きが発生、その結果微妙に磁力が前後にも影響し、偶然にも指南するようになったようです。
 ただし、今回は影と南方向の角度をある程度厳密に確認する必要があるので、おおよその方角しか確認できない堀元見マグネットは残念ながら測定には使えませんでした。

役に立たない指南をする堀元見

 さて、実際に測定した時の写真が以下になります。真上から水平に撮影するように気をつけます。また、レンズによって画像が歪むので、地面から離れた場所から望遠で撮影するようにします。

ALWAYSGOOD二世号は指南している

 撮影した画像データを用いて方位を測定します。方位の測定には「分度器で測りましょ」というフリーソフトを使用しました。以下の写真は、モノクロにしてコントラスト強調を行った写真で、本ソフトを使用して方位を測定した様子です。2023/12/3 正午に測定したとき、測定箇所における太陽の方位は195.45°という結果が確認できました(360°式(北を基準とし、時計回りに表現する。例:東が90°、南が180°、西が270°…)で測定)。

画像から解析して角度を求める

 ところで、国土地理院のウェブサイトによると、地球の極と地磁気の極は一致しないため、地図の北と方位磁石が指す北(磁北)は場所によって大きく変わり、現在、日本国内においては南鳥島を除く全ての地域で磁北が西側にズレているそうです。つまり指南船ALWAYS GOODⅡ世号は指南しておらず、指・南南……東、していたということになります。
 このズレのことを「偏角」と呼び、ある一地点のある日における偏角は、国土地理院の地磁気値(予測値)を求めるのサイトで確認することが出来ます。このサイトによると、今回の測定地点の2023/12/3の偏角は7.89°でしたので、真北からの方位は187.56°ということになります。

参考資料
*1 https://www.jasnaoe.or.jp/mecc/fushigi/report/report028.html

*2 http://www.tcp-ip.or.jp/~ishida96/karakuri/shinansha_jp.html

タ。 - 太陽南中の時刻について -

 測定方法は上述の方位を求めるやり方と同じ方法を採用し、方位が180°となる時刻を確認すれば良さそうです。測定の結果、12/3 の測定時には、11:00付近に影の向きとALWAYSGOOD号の指し示す方角が一致することを確認しました。

およそ一致していそう

 …が、これまた方位測定の項目で話題にしたとおり、磁北は真北から西に7.89度ズレているので、実際の南中時刻はもっと後の時間になるはずです。しかし、このときはその時間帯のデータ収集を失念しており、収集していませんでした。
 なすすべなく、12/9 にその他のデータとともに再測定しました。
測定方法は、「11:00から11:40くらいまでとにかく方位測定の写真を撮りまくり、方位を求める方法で画像解析しまくり、影が12/9の偏角(7.9°)分、東に傾いた時刻を特定する」という方法です。パワー--!

撮影した方位測定画像

 なお、再測定に際してALWAYS GOODⅢ世号~Ⅴ世号を新造しており、写真奥のⅤ世号を使用しています。

ALWAYSGOODシリーズ、完成していたの…!?

測定の結果、12/9 において、指南魚と影が完全に重なるのは11:04、
影が南から偏角分(7.9°)東に傾いた時刻は、11:33~11:36の間(おそらくは11:35付近)となりました。

ソ。 - 測定の結果について -

測定日①:2023/12/3
南中時刻:
 磁北を信用した場合 → 11:00付近
 偏角を考慮し、影が7.89°東に傾いた時刻 → 不明。
正午の太陽測定結果:
 仰角:31.0~31.2°
 方位:磁北から見た方位:195.45°
    偏角(7.89°)を考慮した、真北を基準とした方位:187.56°

測定日②:2023/12/9
南中時刻:
 磁北を信用した場合 → 11:04付近
 偏角を考慮し、影が7.9°東に傾いた時刻→ 11:35付近
正午の太陽測定結果:
 仰角:31.74°
 方位:磁北を基準とした方位:194.77°
    偏角(7.9°)を考慮した、真北を基準とした方位:186.87°

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