王となった男子高校生

 夏休みが終わり、秋の風が校庭を吹き抜ける中、桜井翔太はひとり教室の隅に座っていた。周囲の視線が重くのしかかる中、彼は静かに目を閉じた。

 翔太は普通の男子高校生だった。成績は中の上、部活動はサッカー部、特に目立つ存在ではなかった。それが変わったのは夏休み明けのことだった。

「あの…翔太くん、ちょっと話があるんだけど…」

 昼休み、クラスメートの佐藤美香が声をかけてきた。彼女の顔には緊張と不安が浮かんでいた。翔太は何事かと訝しみながらも、彼女について行った。

 美香が告げた事実は、翔太の想像を超えていた。彼女は妊娠していると言ったのだ。翔太は驚愕し、何も言えなかった。二人は交際していなかった。

 しかし、それは始まりに過ぎなかった。次々とクラスメートの女子が同じ事を翔太に告げ始めた。誰もが口を揃えて、翔太との交際を否定しながらも、あなたの子を妊娠したと主張したのだ。

 実は翔太は、夏休みの間にクラスメートの女子全員と日替わりで一度限りの関係を持っていた。催眠術でその記憶を消したはずだったが、女子たちは、彼との関係を部分的に覚えていたのだ。翔太自身も、そのことを確信的に明かす勇気がなかった。

 教師たちは事態の深刻さに直面し、校内は混乱に包まれた。翔太は一体何が起きているのか理解できず、自分が何をしたのか完全に思い出すこともできなかった。家でも両親が心配し、学校で何が起きているのか問い詰められたが、翔太には答えられることが何もなかった。

 ある日、学校は臨時の保護者会を開いた。校長が厳粛な顔つきで壇上に立ち、事態の説明を試みた。保護者たちは動揺し、怒り、そして恐怖を感じていた。翔太の両親も出席していたが、息子の無実を信じている彼らも、何が真実か分からないままだった。

 事態の調査が進む中、翔太はますます孤立していった。友人たちも距離を置き、クラスメートの女子たちは彼を避けるようになった。
 しかし、翔太の心には一つの疑念が芽生えていた。この奇妙な連鎖反応の背後には、何か大きな陰謀が隠されているのではないか、と。

 時が経ち、クラスメートの女子たちは次々と出産を迎えた。学校はさらに混乱し、保護者や地域社会からの圧力も増していった。翔太は絶望的な状況の中で何もできず、ただ日々が過ぎるのを見守るしかなかった。

 翔太は一人で真実を追求する決意を固めた。たった一度の性行為でクラスメートの女子全員が妊娠するなど確率的にロト7以上だからだ。彼はある夜、学校の図書室に忍び込み、古い資料を漁り始めた。そこで彼は、かつてこの学校で似たような事件が起きていたことを知った。その事件もまた、突然クラス全員が妊娠するというものであり、当時の男子生徒も翔太と同じように無実を主張していた。

 翔太は次第にその事件と自分の現状が奇妙に一致することに気づいた。彼はさらに調査を進め、ついに真相にたどり着いた。それは、学校に長く伝わる古い呪いだった。翔太の学校はかつて、ある女性教師が男子生徒たちに集団暴行され、自ら命を絶った場所だった。その教師は死の間際に「この場所に集う者は皆、我が苦しみを知るであろう」と呪いをかけたのだ。

 翔太はその呪いを解く方法を必死で探し、ついにその方法を見つけた。それは、呪いの発端となった場所で祈りを捧げることだった。彼は夜の学校に忍び込み、その場所で心からの祈りを捧げた。

 翌朝、学校はいつも通りの喧騒に包まれていた。翔太は教室に入ると、クラスメートたちがいつものように笑い合っている光景を目にした。まるで何もなかったかのように、元に戻っていたのだ。 
 しかし、女子たちの出産は現実のままであり、彼女たちはすでに母親となっていた。

 学校はその後、事態の解決に向けて動き始めた。翔太はその過程で、多くの友人や教師たちと協力し、学校の歴史を再評価することとなった。彼はまた、出産を迎えた女子たちとも話し合い、彼女たちがどのようにして新しい生活を乗り越えていくかを共に考えた。

 翔太は合計40人の妻子を抱える伝説の男子生徒となり、長く語り継がれることとなった。

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