原田大輔,笑顔で引退

 3/9後楽園大会で原田選手の引退試合が行われました。前回興業で2選手が引退,対抗戦の敗戦による「焦土からの復興」をめざす矢先,再開した試合でさらにもう一人の選手が引退と,この流れには悲哀を感じざるをえません。しかし会場の雰囲気は至って前向きで,声援がドーム前より熱を帯びていたので少し安心しました。原田選手が負ったこの「環軸椎・亜脱臼」ですが,自分もC3/C4の頸椎ヘルニアを患ったことがあるので調べずにはいられません(いつ怪我をしたかというのは定かではないのですが,多分合気道の稽古で受け身を取ったときだろうと思います)。

 首を構成する7つある頚椎の最上部の頭蓋骨と接している箇所を環椎,2番目を軸椎といいます。これらは頸椎の中でも特殊な形をしており,靱帯が軸椎の突起を環椎の弓なりの前部に押しつけていますが,この靱帯がゆるんだり切れたりすると環椎と軸椎が不安定になり,首を前に傾けたときに環椎が前方へずれます。環椎と軸椎を結合する関節が完全に外れたときには脱臼となり,脊柱管が狭くなってしびれなど様々な症状が出ますが,ずれが4mm以上の状態は亜脱臼と呼ばれ,整形外科でも見落とされることが多く,原田選手のように無症状であるケースもあります。
 自分の場合はカラーの装着や牽引,超音波による治療を続けた末,数年経っても痛みがひかないので,いっそ手術を受けようかと受診した先で,いつの間にかヘルニアが引っ込んでいることが判明し,拍子抜けするとともに歓喜しました。原田選手もこうした保存療法を続けたものの,改善が見られず引退勧告を受けたということになりますが,自覚症状がないというのが逆につらいところで,そのやむにやまれぬ気持ち察するに余りあります。怪我が治らずスタイルをがらりと変えてキャリアを続けていく選手も多く,原田選手にもその選択肢は頭にあったのではないかと思いますが,「ジャーマンが打てないのでプロレスはもうダメだなと思いました」と決断。しかもリング上で同情を乞うような態度は全く見せず,清々しくリングを下りた姿には感服しました。

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