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二人のイエス

主イエス・キリストの出生物語が載っているのはマタイ福音書とルカ福音書だけですが、両者には大きな違いがあります。というか、ヨセフとマリアという名前の夫婦からベツレヘムで生まれたということ以外は、全然別の物語です。マタイでは、ベツレヘムで生まれたイエスに会うために東方の占星術師たちがやって来て、ヘロデ王にその話をしたことで、これはまずいと思ったヘロデによる幼児虐殺が起こるのですが、一家はエジプトに逃げて無事でした。その際、占星術師たちは「その家に」入ったとされています。ヘロデの死後も、一家はベツレヘムに戻ることを恐れてナザレに「退いた」わけです。一方、ルカでは、ナザレから住民登録のためにベツレヘムにやって来たヨセフとマリアが馬小屋に泊まっていたとき、飼い葉おけの中で生まれたことになっています。その後、清めの日数が経ってエルサレムの神殿にお参りに行った際には、シメオンから祝福されるなどした後、ナザレに「帰った」とされています。つまり、両者の記述では、住所も生まれた時期も異なっているので、ヨセフとマリアという同じ名前同士の二組の夫婦を同一視するのはかなり無理があると思われます。また、ヨセフからダビデまでの系図が両福音書では全く異なっているので、二人のヨセフを同一人物と見なすことはほぼ不可能です。しかし、聖書学者たちの見解を調べてみると、ルカ福音書の系図はマリアのものと考えられる、という「推測」がなされていて、あくまでもイエスは一人であったことにしたいようです。そこで、ルカ福音書の記述を、原典により忠実と言われる岩隈直訳「福音書」で見てみると、「彼イエースースは、(人々から)見なされていたところでは、イオーセーフの子であり、(イオーセーフは)エーリの、(エーリは)マッタトの・・・(セートは)アダムの、(アダムは)神の(子である)。」となっています。つまり、イエスの父系は神にまで遡ると言っているわけでして、どこにもマリアの名前は出てきませんし、もし、エーリが母方の祖父だとしたら、遡っていった先のアダム(とイブ)のお母さんは誰?ということになろうかと・・・どちらの福音書の系図も父方のものであり、だからこそ、ダビデからアブラハムまでの名前は(発音は微妙に異なっているものの)完全に一致しているわけです。どうも、「聖書学者」の仕事というのは聖書の記述を捻じ曲げることにあるようで(^^;

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