見出し画像

・【日記】JR土合駅に行ってきました。

どうも。
暮れかかる空に貴方思い、今日も待っているKトレです。

皆さんは「モグラ駅」を知っていますか?
地下鉄の話ではありません。
未開の地群馬県利根郡みなかみ町にある、JR上越線土合駅のことです。

鉄道ファン、そしてちょっとした旅好きには有名な、言わば「変な駅
そんな土合駅に、先日チャンスがあって行ってきました。

【取材日:2024年8月26日】

.
.
.
今回の記事の始まりは、同じみなかみ町にあるJR上越線「水上駅」。

水上温泉郷の玄関口であるこの駅を境に、上越線のダイヤは高崎方面と越後湯沢方面で分割されている。水上温泉は同じ群馬県の草津や伊香保に比べるとかなり淋しい雰囲気も漂うが、温泉街の中心を流れる利根川の静かな流れが落ち着きを与えてくれる。

一緒に温泉に来ていた両親がひと足先に上り電車に乗り、筆者は下り電車に乗って目的地に向かう。

水上駅から先はSuicaは使えません

この駅から土合駅のある谷川岳を越える電車は1日に5本(5往復)しかない
完全なるローカル線である。
今回乗った電車は7月〜9月10日、「青春18きっぷ」の夏季発売期間だけ増便される電車で、この山越えルートにそういう"鉄オタ需要"があるのがわかる。

水上駅を出て5分。新清水トンネルに入った直後にある湯檜曽駅を過ぎると、電車は別に坂を上りも下りもしていないように思えるが、確実に地下へと向かっている。
そして更に3分後。電車は土合駅に到着した。

全長13,490 mの新清水トンネルにぽつんと作られた土合駅のホーム。
降りた瞬間の感想は「寒っ!」だった。
さっきまでの蒸し暑さは何処へやら、ひんやりした空気が漂う。確かに地上と離れた場所らしい。

電車が発車し、静寂と暗闇が訪れるホーム。
そこからもっともらしく「出口」と書かれた方に向かうと、ここからが本番である。

地上まで462段、真っ直ぐな階段が続く。
これこそがモグラ駅の謂れである。

土合駅はもともと、谷川岳を貫く清水トンネルの手前に地上のみの駅として開業したが、上越線が複線化されるにあたり、難所である谷川岳はカーブと坂道の多い既設ルートを複線化するのではなく、より直線的なルートで新しくトンネルを掘る事になった。
結果、トンネルの中腹にある土合駅は上下線のホームが大きく離れたのだ。そこで二つの離れたホームを長い階段で繋げて一つの駅にしてしまった強引さに、高度経済成長期の日本がバクアゲアゲアゲだったのを感じさせる。


階段自体は急な印象はない。とにかく長い。
また極端に暗いなんてこともない。とにかく長い。

途中の踊り場には木目調のベンチがあり、休んでる人もいた。
そりゃきついだろう。

そんな感じで進むこと7分ほど。ようやく地上が見えてきた。
後は真っ直ぐな道だと思っていたら…。

余計なお世話である
まああとちょっと、頑張ろう、頑張ろう、頑張れ…
もはやビリミリオン状態になりながら更に通路を進むと、ようやく改札が現れる。といっても無人だが。

無人の改札を抜け、谷川岳をイメージした三角屋根の駅舎を出ると、すっかり蒸し暑さが戻り、上着は汗だくに。辺りは霧がかった谷川岳の緑が広がる。
駅から少し離れた場所にはロープウェイのりばがあるなど、一帯は谷川岳に登る登山者を迎える玄関口でもある。

しかし駅前のロータリー(?)には自家用車やら観光バスがたくん。どうやら電車ではなく車で訪れる人も多いらしい。
昭和生まれの方なら知っているであろう「愛国駅と幸福駅」(北海道にあった駅で駅名がロマンチックだと一大ブームになった)の末路を思い出すが、土合駅に関しては路線バスも来る。しかも電車より本数が多い

左右どちらも同じ方向に行くバスのダイヤです
念のため。

ではそもそももう1日5往復しか走らない路線を何故複線で維持しているのか?

単純な話で、トンネルのおかげである。
土合駅前には上越線に近いルートを通る国道が通っているのだが、実はこの国道、100年以上途切れたままで新潟まで通じていないそう。つまりこのルートで山を貫くのは上越線だけなのだ。
そして上越線を通るのは何も旅客列車ばかりではない。
1日数往復単位で貨物列車もこの山を越えていく。物流上大きな意味があるルートということになる。
今も上越線は、新幹線あるいは関越道に匹敵する大動脈なのだ。
そんな、ただ駅で降りるだけでは測りきれない事情を知ると、旅は面白くなる。

そうこうしているうちに帰りの電車が到着する時間が近づいたので、地上の上りホームに向かう。
山奥の無人駅なのでアナウンスもない。ただトンネルの出口から聞こえてくる警笛が、滞在時間の終わりを告げる。

車内は谷川岳を訪れたであろう重装備の乗客と、明らかに土合駅目当てであろう軽装にカメラを抱えた乗客が半々ぐらいになって水上駅に向かう。
その途中には、線路が大きく弧を描きながら山を下る「ループ線」がある。
霧が濃くその全貌を車窓から確認することは叶わなかったが、かつて鉄道博物館でみたループ線の動くジオラマを思い出し、感無量だった。
見るべきものを見たところで、水上へ、そして高崎駅への帰路についたのである。

あ、電車で帰るときは、改札前に設置された乗車駅証明書発行機から切符大の証明書を受け取り、下車駅で精算しよう。

無賃乗車、ダメ、ゼッタイ。

ではでは。