ついに辿り着いたコライドン・ミライドンという「キャラクター」~歴代ポケモンと比較した変化~

ポケットモンスターシリーズ本編第9作目にあたる最新作ポケットモンスタースカーレット・バイオレット。みなさんもうプレイしましたよね?(圧)

伝説のポケモンめちゃくちゃ可愛くない?


そこでその魅力の理由を再確認するために、今回はそこに登場した所謂伝説のポケモン「コライドン・ミライドン」の魅力について歴代シリーズを振り返りながらメインストーリーにおける伝説のポケモン達の役割と見比べ、その「進化」した魅力について語りたいと思います。




ポケットモンスター赤・緑・青

まずは記念すべき第1作目である初代ポケモン。
この頃はまだ伝説のポケモンというかランダムエンカウントのゲームにおいてシンボルエンカウントの強敵という感じで所謂準伝説ポケモンであるサンダー・ファイヤー・フリーザー、そして伝説のポケモンであるミュウツーの差はあまりなく、がっつりメインストーリーに関わったりはしていません。

とはいえ後半のダンジョン等で存在が匂わされていたり悪の組織であるロケット団に関係があると思われるクリア後にしか入ることのできない洞窟に鎮座していたりと後のシリーズでの伝説のポケモンの扱いの原点を感じさせる存在感がありました。


ポケットモンスター金・銀

第2作目からはパッケージに伝説のポケモンが描かれ、ストーリー中に出会うようになっています。
金にはホウオウ、銀にはルギアという2体の伝説のポケモンが出現しクリア後にはパッケージに描かれていないもう一匹とも出会うことができます。

しかしながらまだこの2体のポケモンはストーリーにおいて乗り越えるべき壁として立ちはだかってくれるというだけでまだ特に強い物語をもっているという感じはしません。
3色目と言われるクリスタルバージョンにおけるスイクンも含めて神の与える試練という側面が強く、伝説の名にふさわしい超常の存在としてのイメージで作られていると感じます。
この流れはこの先のシリーズのパッケージモンスターたちにも多かれ少なかれ共通している部分だと思います。

もちろんそれが悪というわけではなくそういう人の世界からは遠いポケモンが力を貸してくれたり捕まえて仲間にできたりという部分もポケモンの魅力の一つです。

ポケットモンスタールビー・サファイア

3作目。ここからGBAになりグラフィック等含めて出来ることが増えてきている感じがします。
今作のパッケージ伝説のポケモンは神話に登場すると言われる陸地を作ったポケモングラードンと海を作ったと言われるカイオーガ。(と二匹が戦ってるとなだめに来てくれるレックウザ。)

第3世代の伝説のポケモンは明確に封印された災害のような扱いにされていて天候を操る点も含めてまさに人知の及ばぬ神としての格をストーリーで見せてきます。
今回は悪の組織であるマグマ団・アクア団の二つの組織がそれぞれ己が野望のままに伝説のポケモンを利用しようとして暴走させて世界を破滅寸前まで追いこんでしまうという人の身に余る力を得ようとした神罰といった描かれ方をしています。

これは後のシリーズであるダイパ・BW・XY・サンムーン・剣盾にも共通して見られる部分であり、伝説のポケモンらしさを表す大きな要素の一つだったと思います。


ポケットモンスターダイヤモンド・パール

この第4世代における新たな要素としては、伝説のポケモンである時空を操るディアルガ・空間を操るパルキアに加え準伝説ポケモンであるユクシー・エムリット・アグノムの3体も物語に関わってくるという部分です。

封印を解くアイテムを生み出すための素材のような扱いですが、たくさんのポケモンをメインストーリーに関わらせてボリュームを出そうという工夫が感じられこの先のシリーズのストーリーの広がりを期待させる挑戦の姿勢が感じられてわくわくしました。


ポケットモンスターブラック・ホワイト

第5作目であるBWの伝説のポケモン、ゼクロムレシラムはやや変化球を感じられるポケモンです。

というのもこの作品では最終盤に片方の伝説のポケモンを悪の組織に所属するライバルのような存在のキャラクターが使用してくるという仕掛けがあり、パッケージのポケモンがそのバトルの前に駆けつけてくれるという展開になっているのです。

これまでのシリーズとは違い捕獲が強制であり明確に「強力な仲間」として描かれています。BWはストーリーにも力が入れられた痕跡がそこら中に感じられ、その物語やキャラクター達の強さに負けないように伝説のポケモンにもドラマチックな部分を用意したのだと思います。後のシリーズの物語や演出の礎となったのはこの第5世代でしょう。


ポケットモンスターX・Y

この作品における伝説のポケモン、ゼルネアス・イベルタルはストーリー上での扱いとしては悪の組織が使う兵器のエネルギー源として利用されているという状態で正直キャラクター性はかなり希薄になってしまっています。

その理由としては終盤に登場するAZというキャラクターが最終的にドラマを持っていってしまい、彼の選択と導き出した答えによってもたらされる結果がエンディングにになってしまうほどです。嫌いじゃないというか結構好きというかポケモン本編で初めて泣きましたがやや歪んだ構成という感じは拭えません。


ポケットモンスターサン・ムーン

2022年現在、携帯機で発売されたメインシリーズでは最後の作品になったこの第7作目。
このサンムーンの伝説のポケモンは最新作のミライドン・コライドンと共通した大きな特徴があります。それは物語の序盤からともに旅をするという点です。後述しますがこれは物語において物凄く強力な力を持つ要素です。

しかしSVと比較するとサンムーンのほしぐもちゃんことコスモッグリーリエというヒロインのようなポジションのキャラクターに紐づいたキャラクターでポケモンそのものというよりはリーリエというキャラクターの成長を通して伝説のポケモンへと成っていくほしぐもちゃんを見るという感じなので伝説のポケモンよりリーリエの方が好きになってしまいます

非常に魅力的なキャラクターや物語性を持った作品ですがいい意味でも悪い意味でもポケモン以上にキャラクターへの愛着ももってしまうという点は無視できないでしょう。


ポケットモンスターソード・シールド

据え置き機に舞台を移した第8作目の剣盾。
シリーズ初のDLCやインターネットを介した協力バトル等新たな試みに溢れた作品ですが伝説のポケモン、ザシアン・ザマゼンタの扱いに関してはオーソドックスで原点回帰といった雰囲気があります。

出会い自体は最序盤になりますがしばらくは物語から姿を消し、終盤でムゲンダイナというポケモンの力で世界がえらいことになるという定番の展開になった時に駆けつけてくれる守護神というか世界の均衡を保つ調停者といった存在に描かれています。

ソードシールドもどちらかと言うと登場キャラクター達の物語を描くことを重視されているのでポケモンたちはその手助けをしてくれる友人のような存在という印象を受けました。










ポケットモンスタースカーレット・バイオレット

そしてついに最新作であるSVのパッケージポケモンであるコライドン・ミライドンについてです。

こいつらとは最初のポケモンを選んだすぐ後に浜辺で倒れているところに出くわします。見たことのない怪しげなポケモンにママからもらったサンドイッチを与えることで気に入られともに冒険の旅に出ることになります。

今作はオープンワールド形式なため移動のスムーズさが問題になってくると思いますが、それをこのコライドン・ミライドンが乗り物としてある程度解決してくれるというわけです。
物語が進めば様々な移動手段を覚えるため、戦闘で使うことはなくともその足として常に共にいる相棒のような存在となっていきます。

これはサンムーンの項でも解説したように非常に強力なドラマ性を演出してくれます。ようは物語を共に体験していく仲間には当然愛着がわくということです。この時点で今までの作品とは段違いにこのポケモンに愛を感じることができるようになっているのです。

そして物語終盤、エリアゼロという場所に入った時にプレイヤーはミライドン・コライドンという移動手段を一時失います。悲しそうな顔かわいいね。

ここまでたどり着いたプレイヤーならばほぼ全員が頼っていたであろうダッシュ、大ジャンプ、崖上り、滑空のすべてを失い徒歩で冒険することになるのです。
その間にペパー、ネモ、ボタンと言ったストーリーで深くかかわった人物たちとの会話のギミックもあるのですがなによりコライドン・ミライドンのいない移動のもどかしさを強く感じるようになっています。

そしてエリアゼロ最深部に辿り着いた時、ボールから出られなくなるほどの恐怖を与えていた元凶、もう1匹の同族に出合います。どうやらそのもう1匹はやや凶暴でこちらの相棒は縄張り争いに敗北した個体であったことが判明します。無理やり連れてきちゃってごめんね…。
最初に出会いの時弱っていたり、ワンパンで倒せそうな洞窟内のポケモン達とも戦わずに逃げる、以降戦いのための姿にはならないという選択を取っていたのはこの敗北がとても恐ろしいものだったからでしょう。

そしてついに訪れる最後の戦い。
AIによってモンスターボールがロックされてしまい博士の持つボール以外からポケモンが繰り出せなくなってしまう。
今にも襲い掛かってきそうなコライドン・ミライドンを前に旅を共にしたポケモン達のボールがむなしく地に落ち、ここまでやってきた仲間たちもどうすることもできない絶望……。

ん……?

博士のボール……?












光ってる!相棒の!コライドン・ミライドンのボールが!
あんなにビビってた相手を前に「俺がやる!」という強い意志を感じる輝き!
やれんのか!?ほんとに!?

信じて主人公が投げたボールから現れる相棒。
ただ振り向いて頷く。
言葉は通じないけどもっと大事なもんが通じてるやん!

輝きに包まれて戦うための姿になる相棒。手痛い敗北を喫し、これまでずっと戦うことから逃げ続けていた相棒が。自分のためではなく相棒と共に戦うために。

もう全員好きやんこんなん~~~~~~~~~~!!!!!お前が伝説のポケモンや!!!!!!!!!




おそらくプレイヤー全員が勝ちを確信した最終戦ですが使う技の順番や流れなどもドラマティックになっており、今作の新システムであるテラスタルも好きになれるような工夫がなされておりもう見事と言う他有りません。
共に冒険してきた相棒と真の絆が芽生えたことを確信できる最終戦の演出。これまでのシリーズで培ってきたキャラクター魅力を引き出すテクニックがついにパッケージポケモンで成されたこと。非常に感動しました。
分かりやすい喪失と他のキャラクターとの関係性により変化し再生するその姿は多くの人の心に響いたはずです。

いままでに無かった非常に魅力的なキャラクター性を獲得することができたコライドン・ミライドン。DLCや次回作がより楽しみになるポケットモンスターの可能性を無限に感じる最新作の物語でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?