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ま、まだ冬眠してなかったのね…

庄内海岸アルプスロード。

 今や全国では「低山ハイクブーム」。標高200~300mの山並みに「アルプス」の名付けはいかがなものかと一言ないではないが、何たらかんたら言わないにしても、この山道は素晴らしい。

 日本海の山形県は鳥海山の麓、遊佐町に始まって酒田市、鶴岡市と続くそんなに長くはない沿岸。千石船が行きかった頃、加茂港は大きな賑わいをみせていたそうだ。その頃の街場は徳川譜代大名の庄内藩。港に下された大阪、京都をはじめとした関西の、所々で寄って仕入れた珍しい物産がこの「アルプスロード」を使って運ばれたのだろう。
 加茂からの山道だけではなく近辺の油戸や今泉、金沢の各集落からの「暮らしロード」として建材や薪として歩いたであろう道が縦に横にと縦横無尽に広がってまるでクモの糸のよう。

 「ロード」の主峰は荒倉山で306.9m、次がテレビやラジオの電波塔が並び立つ高館山で標高278m、八森山229mと続く約20㎞の散策が楽しめる。温泉地の湯野浜から大きな漁港がある由良までの連山。加茂からこの山を越えると全国でも有数の庄内平野が目の前に広がってくる。

12月3日土曜日。

 雨や雪のどんより雲が続くこの時期の庄内にあっては珍しく晴れた日、仲間とこの山道を少し歩いてみた。
 がらんどうになっている祠があったり、浜に続く細い道があったりと往年の「暮らし街道」が網の目のように広がる山道には冬枯れの茶色の世界に鮮やかな色で楽しませてくれるムラサキシキブの実や青々としたツゲの葉。道の真ん中にはおそらくハクビシンだろう糞が、ブナの樹には真新しいクマの爪とぎ跡もあった。人にとって豊かな森は獣にとっても豊かな森なのだ。それにしても雪の降り始めた12月の上旬だというのにクマはまだ冬眠に入ってない?その後はちょっと緊張しての山歩きになったのはいうまでもありません。

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