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ぼくの妹【オリジナル絵本】

ぼくの妹

ゴウくんは、ひとりっ子
じこにあって4才でしにました。

動かなくなったゴウくんを見て
家族はみんな泣いています。

ゴウくんが天国につくと、
天使たちが迎えに来てくれました。

「ここは、天国です」

「あなたは、早くしにすぎたので
まだまだ修行が足りていません。
もう一度行ってきてください。」

と天使たちは言いました。

それを聞いたゴウくんは、
「ヤダ、行きたくない!」と叫びました。

あんなに痛くて怖い思いを
もうしたくないのです。

それに1番の理由は、
生まれたらいつかしんじゃうからです。
ゴウくんは
みんなとの別れが、つらかったのを思い出し
指をくわえてそこに座り込んでしまいました。

天使たちには、いつものことですが
こういうときは
やはり、困ってしまうものです。

この天国には
毎日、何十人もの人が絶え間なく来ています。

そして
1日、5人くらいは、
行きたくないと言い
入口の前でダダをこねてしまうのです。

「安心してください」
「だいじょうぶですから

「ヤダ!ヤダ!」

天使たちが必死で慰めていると
ちょうど、神様が様子を見に来ました。

「やあ、ご案内は順調にできているかい?」
と言い切らないうちに神様は、
「はぁ、」とため息をつき
ゴウくんに近づいて話しかけました。

「きみは、前にも会ったことがあるね。
あのとききみは、わたしに
なんて言ったのか覚えているか?」 

「なんのこと?」

もちろんゴウくんは
そんなこと覚えていません。
だって生まれるときのしょうげきで
ほとんどの子は忘れてしまうのですから。

それを聞いた神様は
ゴウくんを透明にするおまじないをかけて
お母さんとお父さんの所に連れて行きました。
今から5年前の時代のお母さんとお父さんの所に。

5年前〜

お母さんは、
お腹の中の写真を見ては、ニコニコしながら
赤ちゃんのスタイを一生懸命に縫っています。

お父さんは、
仕事中なのに、なんだか上の空。
ドジばかりしています。

おばあちゃんは、
ウキウキして家を出ると
孫ができた、孫ができたと
近所の人たちに話をして回っています。

それを見たゴウくんは
とても恋しくなり、なみだを浮かべて
神様にこんなお願いをしました。

「みんなに会わせて」
「みんなに会いたい!」

すると神様は、少し考えるとこう答えました。

「よし、わかった。
あと一回だけ、その体でみんなに会わせてあげよう」

「ありがとう!
ゴウくんは喜びます

「ただし、みんなの夢の中だけでじゃ。
それでもいいか?」

ゴウくんは、ゆっくりとうなずきました。

そして
夜になってみんなが寝たとき
ゴウくんは神様と手をつないで
みんなの枕元に会いに行きました。

夢の中をのぞいてみると

お母さんはキッチンで
ゴウくんが大好きだったカレーを
ことこと煮ています。

お父さんは、
仕事から帰ってきて、
お風呂につかっています。

おばあちゃんは、
カバン屋さんでランドセルを買っています。

ゴウくんは
はじめに、お父さんの夢に入りました。
ゴウくんは、
お父さんの大きな背中を
ゴシゴシといっしょうけんめいに洗ってあげます。

「ゴウくん、ありがとう。」
「お父さん嬉しいなあ〜」

次は、お母さん
お母さんの夢に入りました。
みんなでそろってカレーを食べます。
ゴウくんは、生きているときに食べられなかった
にんじんも我慢して食べました。

「ゴウくん、えらい!」
お母さんはいつもより高い声で
ゴウくんに話しかけます。

そして次は、おばあちゃん。
おばあちゃんの夢に入りました。

ゴウくんは
おばあちゃんの買ってきたランドセルを
背負って、歩いておどけて見せます。

「あら、カッコいい1年生!」

みんなの寝顔は
なんだか、とても嬉しそうです。

そして、あっという間に時間はすぎ
とうとう夢から出なくてはいけない時間に
なってしまいました。

「もっと、みんなと一緒にいたかったな」

ゴウくんはそうボソリと言うと
神様と手を繋いで天国へ帰っていきました。

それから、それから

桜の花がパッと咲いてひらひら散って

そよ風そよそよヒヨコがピヨピヨひなたぼっこ

真っ赤に実ったトマトがギラギラの太陽に
照らされたと思えば

森の中でキノコが土からぴょこんと顔を出して

風がビュービュー落ち葉がぱらりぱらり。

そうやって1年がすぎたころです。

ゴウくんのお母さんのお腹から
かわいい女の子が生まれました。

名前は、幸(ゆき)ちゃん
にんじんが食べれるゆきちゃん。

神様は天国からゆきちゃんを送り出すと、
ホッとした顔をしてお昼寝をしはじめました。

おわり

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