2024年2月『パーフェクト・デイズ』感想

ヴィム・ベンダースの『パーフェクト・デイズ』を観ました。とてもいい映画だったように思います。
これを書いているのは、観た3日後ですが、観た直後よりも1日2日と経ってからじんわりと、いい映画だったなと思います。

主人公の平山の日常生活がただ淡々と描かれているのですが、その中にある豊かさというか幸福が上手く描かれているように思いました。
朝まだほの暗いうちから近所を掃除するほうきの音で目覚め、歯を磨いて朝の支度をし、家の前で缶コーヒー買い車に乗って音楽をききながら仕事に向かいます。
仕事である公衆トイレの掃除をして、お昼にはコンビニと思われるサンドイッチと牛乳をのみます。そして趣味の写真で木洩れ日をとります。こ
木漏れ日はラストに日本語の説明がありました。重要なキーワードのひとつなのだと思います。
仕事が終わった後は、自転車で一番風呂で銭湯に行き、帰り道でいつも同じ店で一杯呑みます。
家に帰った後は枕元の明かりで眠くなるまで文庫本を読んで一日を終えます。
ただそれだけの生活なのですが、何か豊かさを感じるのはあるいは思い過ごしなのかもしれません。

平山のこのような生活は、身の回りの人によって多少の変化はあります。それがまた日常生活を際立たせるようなにもみえます。同僚に金をあげたり、姪?が家出してきて自分のうちにしばらく泊めて一緒に生活したり、日常生活からの相違がまた日常生活を際立たせるものとしてあります。

私自身も平山と重ね合わせてみてしまうところがありました。そのような私自身を肯定も否定もせず、ただ淡々と描かれている中に、自分をみるようなきがしました。

平山の休日は、平日の分の洗濯物を近所コインランドリーで洗濯をして、その後写真の現像をだして、古本屋で文庫本をあさります。その後、平日とは違うものの常連であるようなスナックに行きそこで一杯やります。このような過ごし方もまた自分を重ねてしまいました。

映画の中で、よくわからなかったことの一つは寝ている間の夢のシーンが何度もでてくることです。あれが何を現しているのか私にはわかりませんでした。
また個人的には、もともと裕福な家庭で育ったものの何らかの事情で家を出て上記のような慎ましい生活を送っている、と思われるシーンがありますが、これは必要だったのか疑問です。

あとは音楽がとてもよかったです。基本的には平山が車の中できく音楽が古い洋楽のロックやポップス、具体的にはアニマルズやルー・リード、オーティス・レディングなどが流れます。カセットテープできいているというのはちょっとやりすぎな気もしましたが、考えすぎかもしれません。

平山は寡黙という設定なのですが、最初の1時間くらいは極端にセリフがすくなく、演じている役所広司はすごいなあと思いました。

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