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『咲く花に寄す ~春は遠き夢の果てに~』

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かつて『梅の里』として知られた逢谷(おおたに)の町。酒蔵の楽隠居である健造は、“うめかんのんさま”を探しに来た少女、美佳と出逢う。「なんでも願いを叶えてくれる」という“梅観音”と…
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2023年4月の記事一覧

『咲く花に寄す』 その11

     8 承前  はっと覚醒して、息を吸い込む。自分がどこに居て、どういう状況に在る…

『咲く花に寄す』 その12

     9  荷田みやこは一ノ瀬健吾のことが好きだったが、それを誰にも言ったことはなか…

『咲く花に寄す』 その13

     9 承前  考えることが一杯で、帰り道は頭の中がぐるぐるしていた。グループ発表…

『咲く花に寄す』 その14

     10  みやこの吉報を受けて、すぐに荷田氏に会いに行くと、確かにそういった観音…

『咲く花に寄す』 その15

     11  あの戦争が始まって、一年ほど経った頃、ある青年をうちで預かることになっ…

『咲く花に寄す』 その16

     12  終戦から5年以上が経った、そうですな、冬も終わりに近いちょうど今頃のこ…

『咲く花に寄す』 その17

     13  自転車を押しながら、逢谷梅林を抜ける小径をゆっくりと歩いてゆく。立春大吉のこの日は快晴で、山裾を覆う竹林の上には、鮮やかな青空が広がっている。  いまだ寒さは厳しいものの、頭上に輝く太陽には、はっきりと春の陽気が感じられる。今年の冬は特に寒く、右側の斜面に広がる梅林も、蕾は膨らみつつあるものの、まだ開花の気配はない。黄緑の羽毛も鮮やかな一羽のメジロが、枝々を飛び回って遊んでいるのが見える。お互い春が待ち遠しいよな……と、心の中で語りかける。 「ねえ、けんち

『咲く花に寄す』 その18

     14  毎年梅まつりが行われるなだらかな広場を回り込むようにして、小径は続いて…

『咲く花に寄す』 その19

     15  道は梅林を抜けて、古民家が立ち並ぶ集落へと入る。この辺りにもいくつか野…

『咲く花に寄す』 その20

     16  美佳は、おばあちゃんの家が大好きだった。  新幹線にのって京都まで来て…

『咲く花に寄す』 その21

     17    おばあちゃんが病気だと聞いたのは、とっても寒い、小雪が舞う日のことだ…

『咲く花に寄す』 その22

     17 承前  まだ花の咲いていない梅林を歩きながら、おじさんのお話しを聞いた。…

『咲く花に寄す』 その23

     18  ナースセンターで少し話を聞いてから、病室へと向かう。面会はご家族のみ……

『咲く花に寄す』 その24

     19  幸福な夢を見ていた。  その夢の中では、大切なあの人と結ばれて、共に人生を歩んでいた。  戦争から無事に帰還したあの人と結婚して、田舎の酒蔵を継いで、ささやかながらも幸せな家庭を築いていた。  子供は、女の子と男の子の二人。時々トラブルも発生するが、それすらも楽しんで、二人は人生を生きていた。  不思議なことに、二人とも、それが夢の世界であることに気づいていた。  もしかしたら、そこは、何者かが二人の為に用意してくれた、特別な異世界だったのかも知れない。夢