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8 承前 はっと覚醒して、息を吸い込む。自分がどこに居て、どういう状況に在る…
9 荷田みやこは一ノ瀬健吾のことが好きだったが、それを誰にも言ったことはなか…
9 承前 考えることが一杯で、帰り道は頭の中がぐるぐるしていた。グループ発表…
10 みやこの吉報を受けて、すぐに荷田氏に会いに行くと、確かにそういった観音…
11 あの戦争が始まって、一年ほど経った頃、ある青年をうちで預かることになっ…
12 終戦から5年以上が経った、そうですな、冬も終わりに近いちょうど今頃のこ…
13 自転車を押しながら、逢谷梅林を抜ける小径をゆっくりと歩いてゆく。立春大吉のこの日は快晴で、山裾を覆う竹林の上には、鮮やかな青空が広がっている。 いまだ寒さは厳しいものの、頭上に輝く太陽には、はっきりと春の陽気が感じられる。今年の冬は特に寒く、右側の斜面に広がる梅林も、蕾は膨らみつつあるものの、まだ開花の気配はない。黄緑の羽毛も鮮やかな一羽のメジロが、枝々を飛び回って遊んでいるのが見える。お互い春が待ち遠しいよな……と、心の中で語りかける。 「ねえ、けんち
14 毎年梅まつりが行われるなだらかな広場を回り込むようにして、小径は続いて…
15 道は梅林を抜けて、古民家が立ち並ぶ集落へと入る。この辺りにもいくつか野…
16 美佳は、おばあちゃんの家が大好きだった。 新幹線にのって京都まで来て…
17 おばあちゃんが病気だと聞いたのは、とっても寒い、小雪が舞う日のことだ…
17 承前 まだ花の咲いていない梅林を歩きながら、おじさんのお話しを聞いた。…
18 ナースセンターで少し話を聞いてから、病室へと向かう。面会はご家族のみ……
19 幸福な夢を見ていた。 その夢の中では、大切なあの人と結ばれて、共に人生を歩んでいた。 戦争から無事に帰還したあの人と結婚して、田舎の酒蔵を継いで、ささやかながらも幸せな家庭を築いていた。 子供は、女の子と男の子の二人。時々トラブルも発生するが、それすらも楽しんで、二人は人生を生きていた。 不思議なことに、二人とも、それが夢の世界であることに気づいていた。 もしかしたら、そこは、何者かが二人の為に用意してくれた、特別な異世界だったのかも知れない。夢