保険について

もうすぐ社会人になるため学生共済が切れる旨の通知が来た。ここまで生きてきた中でほとんど考えなかったことだが今なら考えられる気がしたので、そのついでに書いているもの。

自分はこの分野は素人だが、考えるヒントにはなると思う。そういう使い方をしてほしい。

はじめに

保険とはふわっとしたイメージで語られやすい。ふわっと語られると思われる内容は以下の通りである。

1,困ったときにお金がもらえるもの
2,お金は毎月積み立てている
3,安心して生活を送るために必要

保険会社はこういった説明と、不安を煽るような説得、見せかけのお得さを駆使して加入者を増やしているのだと思う。

だが真面目に考えるとこれはビジネスなのだから、お気持ちで入ることは推奨されない。サービスは価値を考えて入るべきである。自分が思いつく保険の性質から、どのような保険に加入するべきかを検討してみた。

保険の性質

不幸の中でも、金で解決できるものに関して議論する。保険は金で解決するものだし、解決できない問題を気にしても保険という枠組みを考える中では無意味である。話がややこしくなるのでここで断っておく。

1,被害を平均化する

私達は一定以上の不幸(災害、犯罪など)に見舞われると生活が困難になる。不幸さえなければその人は社会に貢献し、豊かさを生み出し続けたはずなのに、それ一つで崩壊してしまう。それの起こる確率は低いが、引き当ててしまうと復帰にかなりの費用を要求される。ただしそれが起こる確率は低いので、自分が払う必要のある「損害金」は、期待値(別に損害を期待しているわけではないが)に計算してみると小さい。

この性質を利用して「皆で豊かになろう」と考えだされたのが保険であると思う。

保険は不幸を「事故の起こる確率」と「起こった時の費用」を掛け算し、その後(その保険が想定する)全ての不幸について足し合わせることで1人が払うことになる「損害金」の期待値を得る。このとき「事故の起こる確率」私たちのぼんやりした想像よりはるかに小さいため、損害金の期待値も小さくなる。
その後、集団で期待値分を払いプールし、そこから不幸に出会ってしまった人に損害金をペイすれば誰かが大損することなく、みな平和に暮らすことができる、と保険は主張する。

これにより社会からドロップアウトする人が減り、(不幸に出会わなかった運の良い人は少しの富を失うが)社会全体の豊かさは増えていく。
この点において、保険は非常に優れた制度である。

因みにこの期待値は、現在の社会では大分高く(悲観的に)見積もられているように思う。これは保険会社が儲けるために頑張ったイメージ戦略なのかもしれないし、悲観的な内容を強く記憶してしまう人間の性なのかもしれない。

2,保険はギャンブルである

ある漫画の冒頭でこの見方がサラッと唱えられていて(手塚治虫だったかな…?)、それから忘れることが出来ない考え方。

保険は、どういった場合に、どのくらいの保険金が支払われるかを事前に提示してくる。そして自分がそれに当てはまればそのお金を得ることができる。そう考えると確かにギャンブルに他ならない。

ギャンブルは物質的な豊かさを生み出すことはないため、基本的に誰かが勝てば誰かが負けるゼロサムゲームである。客側が勝てばその分店は資金を失い、客が負ければ店は儲かる。さらに賭博場は設備投資や経営者・株主・従業員への給料、保険料の支払いを求められるので、相当勝ち越さなければ存続することができない。
客のいるパチンコや競馬場や宝くじが潰れないことからわかる通り、殆どの人は賭けに負けている。掛ける人が皆賢く、自分の投資額以上に金を巻き上げていくなら賭けがビジネスとして上手くいくわけがない。

この理屈からいうと、「保険料は必ず損害金期待値よりも高い」と言えるだろう。何故なら保険会社が儲けを出して存続しているからだ。預かったお金を運用して増やしているのもあるんだろうが、今時かつてほど大きな利益を出せるとは思えない。

単純な期待値信者は民間の保険会社に加入するのは明らかに損だと言うだろう。

最強の保険

「保険会社は損害期待値以上に保険料を取っている」と書いたが、これには一つだけ例外がある。それは「国が補助をしている場合」である。
例えば協会けんぽ(全国健康保険協会)のホームページには協会けんぽの財源構造というページがあり、国からの補助を求める声が纏められている。

保険料は月給の約10%(月30万なら3万円)とあり、それなりの気もするが、これで格安なのだろう。3万円が最安で、普段の掛け捨ての2000円とかがかなりの儲けを出しているというのはこれ如何に…?

一つ目の理由として、民間の保険は「病気になりにくい人を厳選して」加入させている、という側面がある。審査なんて必ずあるし、きわどく通った人は掛け金が上がるなんてこともある。以下のページを見れば保険会社がどれだけカジノを壊す「有利な人」を弾こうとしているかわかるだろう。これは民間で運営するにあたって非常に大事な要素なのだと思われる。

その点国の健康保険はそういった人を拒めない。病弱で頻繁に入院している人も健康な人と同じ加入条件でカジノに入場でき、単純な保険金の賭けとしてみれば大勝することができる。

また、健康保険の圧倒的な守備範囲もあるだろう。医療費は7割出してくれるし、はり・きゅう、あん摩・マッサージも条件付きで保険が効いたりするらしい。(協会けんぽのホームページより)そういうのが積み重なって高い費用が必要になるのだろう。

老人や鬱病者などの働けない人が多くても費用はかさんでいくだろうが、それは自分がそうなった時に助けてもらえるセーフティーネットがあるという事でもある。後期高齢者にお金を回し過ぎとかの言説も聞くが、自分で調べたわけではなく憶測の域を出ないのでやめておく。(こういうのは批判したい人が既に色々出しているはずだ。主張を強固にするために過剰表現、不満への煽り、誤解を与える言い回しが挟まれているだろうが)

この保険は雇用者(一般的なサラリーマン)であれば良くも悪くも強制加入であるため、多くの人は既に最強の保険に入っていることになる。

どういう保険の使い方が望ましいか

個人の結論だが書いてみる。正しさを保証するわけではない。

基本は健康保険にお任せでよい

期待値でいえば多くの民間の保険に入るのは損である。何故なら保険会社は儲けを出しており、ありていに言って「吹っ掛けられている」からだ。
そこに貢ぐお金があるなら自分で投資でもして増やせばよい。もし多少高額な治療が必要になってもそこから医療費を出せばよい。

例外として、子供や障害者などの社会的弱者を身内に抱えており、自分の稼ぎが無くなると詰む場合などに限り、自分に高めの保険を掛けるのは合理的だろう。むろん何もなかった場合に、保険をかけなかった場合と比べて生活水準が下がるかもしれないが、ほんの少しの可能性を、実現可能な範囲で潰すことができる。

また保険料は国が加入するインセンティブとして控除の制度を設けており(これ実質税金を保険会社に流してない…?だいぶ利権な制度に思える)、収入を少なく見せかけることで税金の額を減らす効果もあるようだ。
これらを保険加入の後押しに利用してもいいだろう。

個人的な妄想

色々考えてみた結果、どうしてもこう思ってしまったので書く。実現不可能なのは分かってる。
保険業って民間は全部潰して国が国営でやったら良くない?
加入者はなるべく多い方が「損害金の期待値」は正確になり、外れ値も減るため保険料を明確に決めやすい。その方が「公平な社会」になるだろう。
また、保険を選ぶ方も簡単になり、多くの人の時間の節約になる。「賭けとしての娯楽性」を考えても、競馬やパチンコ、ソシャゲのガチャなどにすら劣る。

宝くじは「愚か者に課せられた税金」という言葉があるが、これは期待値を少し知っていれば当たり前に理解できることである。工夫する余地が少しもなく、何かできるとすれば当選番号の不正くらいじゃないだろうか。(違法だが)

その点パチンコは打つ台を選択するところに「実力が出る」ため、まだマシかもしれない。賭け事を好むのは人間の性であり、ビジュアルで楽しませる側面があるのもわかっている。とはいえ全く生産的な営みではないため、個人的には肯定しがたい。

私の感覚だと保険業はパチンコの少し下のレベルに当たる。差は「娯楽性があるか」でついている。きれいな建前(社会全体の発展に寄与する)はあるが、民間の保険業がやっていることはギャンブルであり、「儲けが出てます=当たらない賭けを進めています」の構図が見えるためである。資金繰り(投資)で稼ぐので社会に多く還元していても儲けが出ている説はあるが、そんなに儲かるものなんだろうか。

最近共感した、自由競争は社会に無駄なコストを求める、というのもこれが出てくる理由の一つだ。勿論独占状態になり、国や大企業が強権を振りかざすのは恐れるべきだ。だが過剰な競争は無駄なリソースを大量に要求する。私にこの考えを持たせるようになったのは「ベーシックインカムちゃんねる」というyoutubeチャンネルなので、良ければ見てみてほしい。こんな話に寄ってくる人は絶対楽しい。私は「ベーシックインカムを導入するべき!」とまではまだ言えないが(そこまで動画を追いきれてない)、今社会で起こっていることを理解するのにとても有用な枠組みを示してくれている。

正直一人で考えた意見なので、もっと優れた意見があるなら聞いてみたいと思う。


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