霧に包まれた都市

第一章：霧の街エヴァーナ

灰色の空が広がる、古い石畳の街。エヴァーナ市は常に薄い霧に包まれていた。霧が昼夜を問わず街を覆うため、街灯の明かりが常に灯っている。街の住人たちは、この霧を「永遠の薄明」と呼んでいた。

エヴァーナ市は、かつて魔法と技術が共存していたが、今ではその痕跡がほとんど失われている。街の中心には巨大な時計塔があり、その鐘の音は街中に響き渡る。だが、その鐘が正確な時を告げることは稀であり、住民たちは時間に対して緩やかな感覚を持っていた。

主人公のリーナ・オルステッドは、この街で生まれ育った若い女性だった。彼女は街の図書館で司書として働いており、古い文献や失われた魔法の記録を調べることが日課だった。リーナは、その知識と鋭い観察眼から、街の中で「知恵の魔女」と呼ばれていたが、彼女自身はその呼び名を嫌っていた。

ある日、リーナは図書館の奥にある、普段は誰も使わない書庫で古い地図を見つけた。その地図は、エヴァーナ市の地下に広がる迷宮の存在を示していた。迷宮は、かつてこの街が栄えていた頃に建設されたものであり、今ではその入口すら見つけることが難しいとされていた。

リーナは地図を手に取り、興奮と不安が入り混じった感情を抑えきれなかった。彼女は、この地図がエヴァーナ市の秘密を解き明かす鍵になると直感した。リーナはその晩、図書館の書庫で夜を明かし、地図の詳細を調べ続けた。