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煌めきをながめる/高見文寧ちゃん絶対デビュー!!

 どんな理由でアイドルを好きになるかは、人によって違うと思う。スター性とか華やかさ、人柄にダンスや歌声。いろいろある。

 私の場合はまずなによりも曲で、言葉とメロディが好みな曲が一曲でもあればそれでよかった。
 私にとってアイドルという存在はいつだってヒーローだった。


 
 このnoteは半分くらい生い立ちの話をしています。
 感情を整理するために書いたものなのではじめからおわりまで乱文です。


 

生い立ち



 私の兄は病人で、夜の1時過ぎに何年も前に経験した嫌なことを思い出し怒り、110dbの声で叫びながら暴行を加えてくる人間でした。

 お腹を踏まれ蹴られ、生理的な涙と泣き声が溢れそうになるなか、近所迷惑だと口に毛布を詰め込みながらさらに殴ってくる人。とにかくどうにか息が吸いたくて、頸を絞めてくる兄の腕を必死で掴んだことを鮮明に覚えている。

 成長するにつれて筋力が増して最悪度は変わったけど、思えば小学生の頃からかなりおかしかった。ずっとそんな人。生まれつき。
 そんな兄だったので、高校生になったら絶対この家を出る! と小学校の頃は強く思っていましたが、中学に進学して3日目に母が脳卒中で倒れて、地獄の二人暮らし生活が始まりました。

 料理洗濯ゴミ出し買い出しお見舞いetc.
 それらを済ませて塾に通い、夜中には大声で目が覚めてその数秒後には殴られる日々だったので、まず普通に体調が壊れました。
(どんな言葉を返してもキレる人だったので、発言で刺激して怒りをエスカレートさせないために寝たフリがすごく上手くなりました。殴られながらの寝たフリ選手権とかあったら大半の人には勝てます多分。)

 警察に行っても兄妹喧嘩って言われちゃったし、(兄のおかしさはそもそも遺伝によるもの)市内に住んでる祖母も仲の悪い兄妹程度にしか思ってくれなかったので、心身がみるみるおかしくなっていった。

 結局は全部終わっちゃったんですが、そんな状態でも半年くらいはなんとか頑張れたのは、やっぱりアイドルがいてくれたからでした。

 兄のすることは全部最悪だったけど、中でもきつかったのが奇声を上げることと怒鳴り声だった。
 小学校の時の担任に言われたこととか、店員さんの態度とか。そういうはるか昔のこまかな怒りを全部大声でぶつけてくる。

 死ねとか殺すとか。内容なんてないようなものだったけど兄の声はとてもうるさい。よく通る声なのに加えて、Apple Watchによればなんと110dbらしい。
 そんな声が毎夜響く。それが自分に宛てられたものでなくても、誰かを罵る声というのは聞いていてとてもしんどい。

 永遠に続くと思った暴行は時間にしてみれば10分ほどで、興奮が少しばかり冷めた兄は私の部屋をあとにする。襖が閉まる音が響いて、その音が耳朶に届いた瞬間に全身が安堵で満たされていく。やっと息ができる。

 だけど口を開ければ泣き声が溢れてしまうので、ベッド脇に置いていたティッシュ箱に手を伸ばし乱暴に口に放り込む。イヤホンが接続されたままのスマホを取り出して音楽アプリを開く。聴く曲はいつだって決まっていた。

『世界には愛しかない』

欅坂46『世界には愛しかない』

 画面に光る曲名をぼやけた視界でうっすらと見ながら、そんな訳がないだろうと毎晩思っていた。愛しかない訳がない。知っている。だけれどその曲は、私にとってお守りのような歌だった。
 まぶたを閉じればイントロが耳に響く。27秒ほどの前奏が終わると大好きな子の声が耳に届く。大好きなアイドル達が晴れやかな声で歌っている。

 空はやがて晴れるんだ
 悲しみなんて その時の空模様
 涙に色があったら 人はもっとやさしくなる

欅坂46『世界には愛しかない』

 そんなのは嘘だって全部わかってたけど、それでもそんな世界であって欲しかった。そうなることを願っていた。そう思える日がいつか来て欲しかった。

 曲を聴いてる間だけは。ただ現実を忘れられた。ただ逃避先にしていた。
 私にとってアイドルとは、耳を塞いでくれるヒーローだった。アイドルだけが、私を逃がしてくれた。
 アイドルに対して抱く感情として健全ではなかったと今だからこそ思う。だけれど私がまだ生きているのは、そうやって曲が耳を塞いでくれていたからだ。意識が落ちていくまでの間、その一曲だけをずっと抱き締めていた。


 ご飯を作れない日があると“餓死させる気か”って熱湯かけられたり、教科書は破られてスクールバッグは切られて勉強机は壊されちゃっての日々が続いていたので、11月のある朝ベッドから起き上がれなくなった。ちょうど母の退院が間近に迫っていたのもあって、なんか家事とかしなきゃいけなくて。勉強とか追いつけないしあっという間に学校にも通えない状態になった。母は後遺症もあって、幼児のようになってしまった。

 母の退院後も兄は変わらず怒り叫び壊し殴る人で、何をしても無駄だと12歳にして思ってしまったので、そこから4年ほどは家事だけしていた。進学もせずに。腐りきっていた。もう全部どうでもいいふりをしていた。
 兄がテレビとオーブンを壊して窓ガラスを割った日、あの歌を聴いた。耳を塞いでくれる歌だけが光だった。

 現在、兄は市内の施設で暮らしている。だが今年の9月頃からは2日に1回のペースで家を訪れている。家に入れないと玄関の前で叫び出すので家に入れる。(5年前の家からは引越し済)

 兄の声を聞くその度、されてきた様々なことを思い出す。
 文面に起こすことも躊躇うようなこと、身体に走った熱と痛み、投げつけられた言葉、壊された大事だったもの。
 そういうのが全部ぶわーっとあふれて、涙がわんさか出てくる。だけれど泣き声は出ない。口にティッシュを詰めなきゃ息もできない。5年が経つというのに、そういう日々が今も続いている。

 本題


 生い立ちの話が非常に長くなってしまったが、このnoteは「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」(以下日プ)に出演している練習生の女の子へのラブレターである。

 彼女の名前は高見文寧さん。同い年の女の子。

 特段推しなどを作る気で日プを視聴していなかった私は、グループバトルでの文寧ちゃんの鮮やかな歌声に圧倒された。
 曲でもなくグループでもなく、一人の子に強烈に惹かれるのは初めての経験だった。
 魅了された。ただそれだけ。

 そもそもこのnoteを読む人がいるのかさえわからないが、もし日プのことを知らずにこのnoteを読んでいる方がいるのなら、まず文寧ちゃんのパフォーマンス動画に目を通して欲しい。(文寧ちゃんの魅力は私なんかの拙い文章では表せないので)

First Love(原曲 宇多田ヒカル)

TOXIC(オリジナル曲)


 11月の中旬。裸足のまま30メートル下のコンクリートを眺めていた。涙で濡れた頬が風に吹かれてとにかく寒かった。会いたくない人間が来ていたから家の中には戻れなかった。あと10分以内にその人が帰らなかったらもうここから飛んでしまおうと本気で思った。

 そんな時、彼女のファンダムのオープンチャットから通知が来ていたことに気がついた。推しカメラが公開されていたらしい。瞬時にリンクを開き、動画を再生する。
 あっという間の3分だった。歌いきってやわく微笑んで、ファンから名前を呼ばれて少し笑って見せる彼女は眩しくて綺麗だった。
 最初まで巻き戻してもう一度見て、その後同じチームの3人の子の推しカメラも再生した。10分はもう経っていた。会いたくない人はまだ家にいた。その人が家を出るまで、4人の推しカメラをループしてずっと見ていた。

 9月も10月も11月も、思い出したくもないことを思い出しては泣いていた。ベランダから飛べばこの長い長い苦しみが終わることも知っている。
 だけど今生きることを終わらせちゃったら、彼女に投票が出来なくなってしまう。それはすごく困る。


 回を重ねるごとに好きだと思うところが増えていく。
 彼女の歌声がもっと聴きたい。
 彼女の踊る姿をもっと見てみたい。


 願わくばいつか、彼女の立つステージに足を運びたい。彼女のファンとして恥ずかしくない自分でいたい。
 9月から手がつけられていなかった勉強を再開した。原因なんて分かりきってるから行く気もなかった心療内科の予約をしてみた。行って意味があるのかは知らない。何かしら変わればいいなと思う。


 5年前はアイドルがいてくれなければ生きていられなかった。
 だけど今は、文寧ちゃんがいるから“明日も投票するぞ”と生きていられる。

 似ているようでまるで違う。多少なりとも健全に生きられるようになったんだと思う。たぶん。
 木曜日の21時。それだけを楽しみにこの2ヶ月を過ごしてきた。
 来週の今頃は、もうファイナルの結果が出ているのだろう。

 noteを書くつもりはなかった。ましてや生い立ちを文字にしてまで。
 だけど7日の放送でFLY UP SO HIGHを歌う文寧ちゃんを見て、自分なりに言葉にしておきたくなったので今こうして打鍵している。

Always! Make you happy
Always! to see your smile

FLY UP SO HIGH

 “救われた”という言葉をアイドルに背負わせることを、個人的に私はもうしたくない。


 だけれどもあなたのおかげでなんとか日々を送れているから。
 文寧ちゃんのおかげで、幸せだと思える時間がたくさん増えました。

 アイドルになろうと思ってくれてありがとう。
 私の希望でいてくれてありがとう。

 絶対デビューしようね。
 16日のFLY UP SO HIGH、本当に楽しみです。