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投資家の時代が終わる/(要約)お金2.0 新しい経済のルールと生き方

あくまで私はインデックス投資家なのですが、バーベル戦略としてビットコインやイーサリアムなどの暗号資産やNFTなどのデジタルアセットも僅かですが保有しています。

他のインデックス投資家から見れば、そんな訳の分からんモノに手を出すなんて、気がおかしくなったんか?って思われそうですが、今回ご紹介する書籍では「資本主義」が限界を迎え、「価値主義」が新しい経済のルールとして併存するような内容が書かれています。

本書の著者は元IT上場企業の代表で、現在は宇宙開発やメタバースの会社を経営️している、佐藤航陽さんです。2017年に発行された書籍ですが、その後に起こるweb3やトークンエコノミーの盛り上がりをみごと予見しています。今回、私が投資家目線で響いた部分を要約しましたが、気になった方はぜひ本書を手に取って学んでみては如何でしょうか。

※本記事は暗号資産などへの投資を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いします。

そもそも、お金とは?

紀元前1600年頃、物々交換のツールとしてお金(貝殻)は使われていた。軽いので持ち運びができ、腐る心配もなく、何か必要な時にすぐに交換できる。「価値」の保存・尺度・交換の役割を担っていた。長い歴史があるお金だが、かつては今ほど重要視されていなかった。人間が大事だと思う対象が宗教や身分であったからだ。産業革命が起き、農業から工業へと生活の中心が移り、労働者と資本家に大別され貴族など身分の影響力が薄れ「お金」そのものが重要視されるようになった。そして現代までの資本主義へ発展し、人と「お金」の関わり方が劇的に変わっている。

テクノロジーが変えるお金のカタチ

お金や経済の世界において最もインパクトのある現象、それは「分散化」。既存の経済や社会は真逆の「中央政権化」によって秩序を保ってきた。組織には必ず中心に管理者が存在し、そこの情報と権力を集中させることで、何か問題が起きた時にもすぐに対応できる体制を作ってきた。(中央銀行が通貨発行や金利コントロールによって、経済を安定させているように)それは、近代社会が「情報の非対称」を前提に作られているからだ。情報が偏って存在し、それぞれがリアルタイムで完全に情報共有できないことを前提に、代理人や仲介者を「ハブ」として全体を機能させていた。国家においては政府、企業であれば経営者、物流であれば商社に。

ただ、現在は全員がスマートフォンを持ち、今後リアルタイムで人と情報が「直接」かつ「常に」繋がっている状態が加速していく。そうすると中央に代理人がハブとして介在する必然性はなくなり、全体がバラバラに分散したネットワーク側の社会に変わっていく。これまで力を持っていた代理人や仲介者はどんどん価値を提供できなくなり、独自に価値を発揮する経済システムそのものを作ることができる存在が大きな力を持つようになっていく。

ビットコインやシェアリングサービス、YouTuberは分散化が起こした大きな流れの一例。

かつて、経済を作るのは国家の専売特許だった。今はスマホやブロックチェーンなどのテクノロジーを使えば、簡単に通貨を発行して自分なりの経済を作れる。今、目の前で起きているのは経済そのものの民主化だ。印刷技術が存在しない大昔は「知識」が一部の人達の口伝により独占されていたが、やがて書籍になり今ではインターネット上で誰でもアクセスするようになり「物知り」であることに価値はなくなった。「知識」がそうであったように「お金」もコモディティ化し、今ほど貴重なものではなくなる事が予想され、どのように経済圏を作って回していくかというノウハウこそが重要な時代に変わっていくと考えられる。

金融経済の肥大化と金余り現象

私たちが生活している経済は2つの性質の異なる経済が混ざり合ってできている。労働からの給与をお店でお金を払うという一般的な経済が「実態経済」、もう一つが投資などでお金からお金を生み出す「金融経済」。世の中に流通しているお金の流れの9割近くは後者で生まれている。1割ほどの実態経済の上に9割の金融経済が乗っかって、全体の経済が成り立っている。金融経済は実体経済からの金利や手数料で成り立っているため、実体経済が少し変わるだけで大きく動いてしまう。地震が起きた時の1階と100階を想像してもらえるとわかりやすい。この差はどんどん大きくなっている。実体経済はファストファッション、車や家を所有しない価値観やミニマリストが増え消費をしなくなる一方、金融経済は拡大を続け金融マネーは新たな投資先を探してさまよっている。資金調達が容易な環境にあるため、相対的にお金の価値そのものが下がり続けている。

資本主義から価値主義へ

資本主義で一番大事なことは資本を最大化すること、お金を増やすことを追求することだ。どれだけ人々が熱中して膨大なユーザーがサービスを利用しても、それがお金に換えられなければ意味がない。逆に実際は価値がないようなものでも、それを上手くお金・資本に転換できれば評価の対象になってしまう。価値主義ではその名の通り、価値を最大化しておくことが最も重要なのだ。

①有用性としての価値
従来の資本主義が扱うもので、現実世界で使用できる、儲かるといったリターンを前提にした価値。直接的にお金に繋がらないものは価値が無い。

②内面的な価値
個人の内面的な価値に結びつく、愛情・共感・興奮・好意・信頼など実生活で役に立たないが、ポジティブな効果を及ぼす時に価値があるという表現をしている。

③社会的な価値
資本主義は個人の利益追求が全体利益に繋がるという考え方だが、慈善事業やNPOのように個人ではなく社会全体の持続性を高めるような活動も私達は価値があると表現している。

資本主義の問題点は①の有用性のみ価値として認識し、その他の2つの価値を無視してきた点にある。価値主義では①に加えて②、③もすべて価値として取り扱う仕組み。②と③は物質がなく曖昧であるため数値データにすることで、内面的な価値を軸とした独自の経済圏(評価経済や信用経済)を作る事もできる。

SNS上での情報発信により評価を得る事でファンやフォロワーが集まり、情報が拡散されやすくなり雪だるま式の増殖が繰り返されることがある。資本主義でお金からお金を生むような原理と同じで、評価から評価を拡散力をテコに生み出す事が可能なのだ。そして、この活動から蓄積された影響力や認知や評価といった価値は、まるでお金のように色々なものと交換することも可能。影響力を広告という方法でお金と交換したり、評価によって貴重な人のアポイントの機会という時間と交換したり、実際の通貨のように機能する。これがトークンなどと結びついて流通するようになれば今以上に多くの人が内面的な価値を中心に回る経済を体感するようになるだろう。

一方、多くの人が評価経済や信用経済に対して違和感を抱いる。インフルエンサーが集めているのは、興味・関心・注目であって、世の中の人が考える評価・信用とは似て非なるもの。炎上を繰り返す人は、確かに他人の注目を集めているが、世間一般でいう評価や信用を集めているわけではないはずだ。共感や好意を犠牲にしたり、倫理観や治安を犠牲にするような行為が目立つようになると、資本主義と同様に世の中がブレーキをかけるようになる。

経済は選べばいい

既存の経済と新しい経済に優劣をつける必要はない。複数の経済システムは併存し得る。私たちがどんな職業につき、誰と結婚して、どんな宗教を信じ、どんな政治思想をもつのも個人の自由である。同時に、何に価値を感じて、どんな資産を蓄え、どんな経済システムの中で生きて行くのかも自分で選んで自分で決められるようになっていく。今その過程の中にいる。現在の資本主義の中では上手く居場所を作れない人も、全く違うルールで回るオンライン上のトークンエコノミーでは活躍できるかもしれない。また一つの経済で失敗したとしても、いくつもの異なるルールで運営される小さな経済圏があれば何度もやり直すことがでる。

お金は単なる道具である

たくさんお金を動かしているほど拝金主義や守銭奴のイメージがあるが、実際はお金をハサミやパソコンと同様「道具」として見ている。一方、お金を上手く扱えない人ほど、特別な感情を抱いている人が多く著者自身もそうだった。トークンネイティブのような世代が誕生してくる頃には、こういった話は意味が無くなっているだろう。お金がただのツールであることは語る必要がないほど浸透しており、常識になっていると考えているからだ。私たちがお金に特別な意味を感じていた最後の世代になるだろうし、そういう未来の到来を早めることが私たち世代の人間の仕事とも思っている。

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