[短編] 部屋

カラスが鳴き声を聞いて、静謐な部屋に気づいた。それまでも部屋は存在していた。傷の入った茶色のフローリングに南に取り付けられた窓から光が差し込む。壁に密着した棚とそのわずかな隙間に埃が溜まる。クローゼットにはハンガーにかけられた上着が何着もかかっている。あの紺の服を最後に来たのはいつだろうか。机の上には朝食時の食器が片付けられずに残り、白い茶碗に米が乾燥して張り付いている。布団はまだ畳まれていない。

これらを全てまとめるは部屋。私が夢を見ている間も部屋は存在した。

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