第45回『男塾の中で奇人変人№1の幸太郎から学んだ「相手を理解する」とは?』

うぃす! 大阪男塾の塾長です。

僕は大阪男塾というトリオでお笑い活動をしてるんすけど、メンバ―の編成は次のとおり▼
・塾長(ホストクラブのオーナー)
・幸太郎(元ホストで、現在はホストクラブの経理)
・レオン(現役ホスト)

一見、現役ホストに見える僕がオーナーで、オーナーに見えるレオンが現役ホストなんで、ちょっとややこしいビジュアルっすね。

幸太郎については前にnoteでも書いたっすけど、ほんの少しだけ現役のホストをしていたことがありましたが、今日はまた別のエピソードをお伝えするっすね。

「冷静沈着」がキャッチコピーの幸太郎ですが、彼にはある疑惑がかけられていました。

それは「そもそも心がないんじゃないか?」という疑いっす。

僕も周りから散々サイコパスって言われてますが「これが楽しい!」「これに熱中したい!」という欲望はあるんすよ。

どうやら幸太郎は、それすらなく毎晩バーでマスター相手にオチのない話をしたり、女性客しかおらん店でひとり黙々とパスタを食べ続けて、そのまま死んでいきそうな気配なんす。

幸太郎が水商売の世界に入った話に戻りましょう。彼はホストとして働き始めたのはいいものの、あまりに適性がなさすぎて、すぐにクビになりました。

幹部が集まる会議で僕が「幸太郎は真面目なんで、裏方として残した方がいいと思います、なんやったら僕が個人的に給料払うんで残してください。」と頭を下げて、業界へ残ることに。

幸太郎は見た目が、まあまあシュッとしてるんで「ホストをやってた」と聞いて納得する人がいるかもしんないんすけど、主体性ゼロのヤツなんすよ。

ホストになったのも繁華街を歩いていて、「君ホストやらない?」と声を掛けられて「スカウトをされた。これは俺にだけ言ってる、俺は選ばれた特別な人間だ」と勘違いをしたのがきっかけ。全然「何が何でもホストになりたい!」ってタイプでもなかったんすね。

ホストって「どれだけ積極的に自分からアプローチできるか?」が問われるんすよ。

自らアクションを起こせない人間には無理。

一度、その頃、仲良くしていた秀吉や歌舞伎町元№1のシムケンと「幸太郎のやる気を引き出そうプロジェクト」をやったことがありました。

僕らができるかぎりバックアップし女の子を紹介して、幸太郎の女性への興味を引き出そうとしたんすよ。あいつの奥に眠るであろう、女性への関心さえ引き出せられれば「何かが大きく変わるんちゃうか?」という予感があったんすよ。

結果からいうと惨敗。

幸太郎の無関心さは、群を抜いてましたね。

何人もの女性を紹介したんすけど、絶対に自分から連絡しないんす。しかも「俺はそんなこと最初から求めてないんで」みたいなスタンスなんで、僕らの働きかけに、みじんの感謝の気持ちもない。

ある日こんなことがあったんす。
キャッチ中の人通りが少ない時間帯、僕と秀吉、シムケンは暇つぶしにコンビニに売られてる「かち割りの氷」を買ってきて並べた空き缶にぶつける的当てみたいな遊びをしてました。

その時にシムケンがふざけて、幸太郎に氷を投げたら見事的中。絶対痛いのに、それでも幸太郎は微動だにせず無表情を続けます。

「なんでリアクションせぇへんねん、こいつ?」となんかおもろくなってきて、気づけば3人とも幸太郎に氷を投げまくったんす。

あまりにもノーリアクションなんで、投げてる僕らもだんだんむきになってきて、コンビニにある全ての氷を買ってきてひたすら投げ続けました。僕は投げながら「幸太郎は心が凍りついてるんで、氷投げられても平気なんやろな」と思ってました。

かちわりの氷は、あっという間に最後の1袋に。
僕らの好意を全く意に返さない幸太郎に対し、最後の1袋にやったのは、僕がシムケンを肩車して1袋分まるまる上から落としたんす。もはや荒業っすね。

「さすがにこれは、なんかリアクションあるやろう?」と思い、3人で「どうや!幸太郎!」と言うと、それまでゆるやかに逃げ回っていた幸太郎がふいに立ち止まったんす。

「なんやろ?」と幸太郎の顔を見ると、一筋の涙がつつ〜っと頬をつたってたんです。

180cmを超える大の大人が、耳と鼻を真っ赤にしてクスンクスン泣いてるんす。鼻水も垂れてました。人通りの多い御堂筋でですよ。

「幸太郎、どないしたんや?」って尋ねても、無言で泣きながら店に帰って行きました。

どうやら氷をぶつけられた時、ほんまはめっちゃ我慢してたみないなんすよ。「その悲しみが最後の1袋の全落下で洪水のように押し寄せダムが決壊した」というのが僕が察した幸太郎の心の動きでした。

ほんま、わかりづらい男っすね。嫌なら「氷投げるなよ!」と、怒ればええのに。

まあこんな感じで幸太郎は、とことん自分の気持ちを言葉にできないやつなんすね。

これは幸太郎が23歳の時の話なんすけど、このこともあってか、42歳になった今は喜怒哀楽の「怒」だけは表に出せるようになりました。

幸太郎みたいに主体性皆無な地蔵野郎は、僕らみたいにガンガン相手の内側へ入っていく人間と相性がいいっすね。

幸太郎と関わって「こういうタイプはこっちから入っていかんと何も始まらん」と学んだっす。

あと、幸太郎に関して、もうひとつ大きな学びがありました。

それは「こいつをわかろうとせん方がいい」ということっすね。もっというと、相手のことを簡単にわかったつもりになること自体、大間違いっすよ。

ほら人間て、すぐに相手のことを知りたがるじゃないっすか?

ほんで「この人のこと、全部わかった」って思い込んで、気持ちよくなりよるっすけど、はっきり言ってこんなのは錯覚も錯覚。

正確には、相手の一部がほんの少しわかった程度なんすよ。

それやのに「全部わかった」って勘違いしてまうから「私の思った人じゃなかった…」「こんなことする人やとは思わなかった…」って、裏切られた気持ちになるんすね。

「相手をわかった」と思い込むこと自体、傲慢っすね。

「人間なんか自分のことも客観的にハッキリわかってないねんから、人のことをわかった気になんなよ!」って声を大にして言いたいっす。

まあ地蔵野郎の幸太郎からでも、こっちが興味を持てば学べることはあるっていうことっすかね。

ちなみに幸太郎が店に帰ったあと、異変を感じた店の取締役が「なんで、お前泣いてるねん?」と問い詰めた結果「1時間くらい氷投げられました。」とすぐにチクりよったんすよ。おかげで僕、秀吉、シムケンの3人は営業終わりVIPルームで正座させられて、2時間も説教されるはめに。

翌日、逆ギレしたシムケンが「なんでお前、取締役にチクるんだよ!」と全力で幸太郎に氷をぶつける姿を見て「さすが歌舞伎町の元№1やな」と戦慄しました。

シムケンには、反省のかけらもなかったっすね。

最後まで読んでもらって、あざしたぁ!!

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