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神宮外苑はその場所も樹木も公共の財産です

「神宮外苑は明治神宮の私有地だから、その事業計画に口出しすることはできない」という事実誤認によるミスリードが広がっています。
小池都知事の言う「神宮外苑再開発は民間事業だから、都は関係がない」という責任逃れを、一生懸命誰かが補強しようとしているようです。

神宮外苑の市街地再開発地区は、そのうちの約66%が明治神宮ですが、
約25%が日本スポーツ振興センターという文科省の独立行政法人が所有しています。つまり国立競技場と同じく私たち国民の財産であり、その運営には税金が投入されています。
そして、それ以上に重要なのは、神宮外苑は法律で定められた公益性の高い都市計画公園であり、誰が所有者であっても勝手に高層ビルを建設することができないように、また緑地を守るためのルールが決められています。さらに風致地区、文教地区でもあるので、その規制に従って樹木伐採や建築許可も必要です。(実際にはそれらのルールを捻じ曲げ、あるいは公園部分そのものを削除するという脱法的行為が行なわれていますが)
神宮外苑の146本の銀杏並木も、都道に沿った2列64本は東京都の所有、港区道にある18本は港区のものです。明治神宮の所有は残りの64本。
もちろん、都道も区道も公道で、私有地ではありません。つまり、神宮外苑はその場所も樹木も公共の財産なのです。

また、神宮外苑は明治天皇崩御後、その遺徳を称え、国民の憩いの場となることを目的として創建されました。国費を充てて造られた内苑に対し、外苑は広く国民からの献金、献木、勤労奉仕、まさに国民の力によって造られ、1926年に明治神宮に奉献されました。奉献といっても、その土地はすべて国の所有のまま「国が無償貸与」している状態でした。
戦後のGHQによる接収解除後、一旦は国が運営するという案がまとまりますが、これに明治神宮が内苑と外苑は一体のものであると反発し、外苑の獲得を熱望します。結局時価の半額で払い下げられるのですが、その際、国(当時の文部省)は、明治神宮に対し、国民が公平に使用できること、アマチュアスポーツの趣旨に沿った極めて低価格の使用料・入場料、施設を絶えず補修するための経済的見通し、そして民主的運営をすること、という譲渡4条件を申し入れています。つまり、明治神宮は外苑を利益優先の場にせず、国民によって造られた国民のためのものであるという、極めて民主的な創建の精神に適うものでなければならないという戒めを受け入れています。このことは広く皆さんに知ってもらいたいと思います。

以下に明治神宮外苑七十年誌の本編の巻末「外苑将来への展望」と題された一節より引用します。この言葉通りであって欲しいと願いながら。

(明治神宮外苑七十年誌:平成10年(1998年)3月発行)
神宮外苑は、四季を通じて、銀杏並木をはじめとする緑濃き樹木や色とりどりの花々で、訪れる都民にオアシスを提供してきた。 都市公園法で都市計画公園と規定されてはいるが、一般の公園とは異なり、昔も今も 「神苑」であることに変わりはない。

将来のビジョンも、やはり外苑創建の精神に則ったものでなければならない。すなわち、都市再開発や建築物の高層化などへの安易な同調を排し、緑を大切にしながら、文化施設やスポーツ施設の充実という枠組みにおいて、「人間の心と身体が活性化していける環境づくり」に貢献していくことである。
また、都市の環境保全、地震・災害時の安全確保の面でも、神宮外苑の担う役割は重要である。
これについては、皇居・東宮御所・日比谷公園・新宿御苑といった都心の緑地全体を視野におき、国や東京都、都市計画に精通した専門家と歩調を合わせて、総合的な将来計画を摸索していくことになろう。

デザイナー、美術家、料理家。イタリアはヴェネツィアに通い、東京においても小さなエネルギーで豊かに暮らす都市型スローライフ「ヴェネツィア的生活」を実践しています。ヴェネツィアのマンマから学んだ家庭料理と暮らしの極意を伝えます。