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神宮外苑再開発への意見〜10.天空率という景観評価と事業計画の進め方について

2022年4月15日。「神宮外苑地区市街地再開発事業」環境アセスメントに
対して「都民の意見を聴く会」が開かれました。
17人の公述人からは、この再開発計画に対し様々な角度の問題提起があり、「緑豊かな歴史ある景観を守るべきだ」と提案を含めた計画見直しを求める声が相次ぎました。どの意見も多様で知見に富んだ素晴らしいものでした。公述人の声を、多くの皆さんに知っていただきたいと思います。
以下に、
石原重治さんの意見を紹介いたします。

環境影響評価書案及び見解書について、現地を見て感じたこと

「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」の環境影響評価書案及び見解書について、現地を見て感じた事をふまえて意見を述べる。

①ラグビー場棟 ⇒p16,17,19,21,24
高さ55m(w=150m,d=170m,110万?)、屋根付き
7)日影(圧迫感)⇒ p325,326,327,345(NO4),346(NO5),p392,397,398,413,416,417
9)風環境 ⇒ p373,378,379,380,383,384,385
10) 景観(圧迫感) ⇒ p387,389,390,391,392,393,

現在、ラグビー場棟が建設される第二球場は、新国立競技場側に向けて、
高30mほどの防球ネットが張られており、透過性のものだが少なからず圧迫感がある。ラグビー場棟が完成すると、新国立競技場の南東面に高さ55mの巨大な屋内施設ができ、建物の周りには恒久的な壁が出現し、圧迫感はさらに増すだろう。ところが、評価書では天空率を用いて実感とはかけ離れた図(p345,413)で示され、評価書(p416,417)では、「(全体としての)評価は指標を満足する」としている。
そもそも、天空率は「平成14年建築基準法改正において斜線制限の緩和条件として盛り込まれた」もので、「適合建物の天空率≦計画建物の天空率となっていれば斜線制限の緩和を受けることが可能」とされる指標であるが、実際には、魚眼レンズで撮影したものをプラネタリウムの天空に映し、さらに、平面に表示するようなものであり、ボリュームのある建築物が小さく
表現されるとの批判もある。
そうした点でも、今回は天空率を用いずに、24mm程度の広角レンズ(p390 表8.10-4撮影諸元では眺望写真は28mm)を用いて、
フォトモンタージュなどの写真処理で比較検討、評価すべきである。

 この場所は、国内外から多数の人々が訪れており、心安らげる新国立
競技場の南庭である。それが東側に目を転じると、突如、55mもの壁が
現れるとしたら違和感を抱くのではないでしょうか。
また、風環境では、北東側から両方の間を強風が吹き抜けることは評価されていないが、防風対策のためにも現在の第二球場周りの高木など
(既存樹木)を伐採すべきではない。

天空率(てんくうりつ)とは、おもに建築設計において、天空の占める立体角投射率のことをいう。ある地点からどれだけ天空が見込まれるかを示し、100%が「全方向に天空を望む」状態、0%が「天空がすべて塞がれた状態」である。(出典: ウィキペディア)


②複合棟A⇒ p16,17,18,21,24
オフィス等、地上40階 最高高さ約185m、延床面積127,300㎡
9)風環境 ⇒ p371,373,378,379,380,383,384,385,386 (資料) p224,226,227

評価書(p385,386)では、完成後の強風対策やビル間及び通路部分等でのすき間風改善対策として、防風植栽、パーゴラ等を実施したうえで「管理者への説明、引継ぎを行う」としているが、これだけで対策としては不十分である。懸念すべきことがあれば、先延ばしではなく事業中に実施すべきだ。

③野球場棟 ⇒ p16,17,19,21,24、
野球場・宿泊施設など、高さ約60m、延床面積115,700㎡
10) 景観 ⇒ p387,389,390,391,392,393,397,398,401,415

青山通り交差点の南側歩道から、イチョウ並木の中心線に絵画館を見た時、野球場の南・東側外壁が、イチョウ並木の上に見えるので、景観を台無しにしている。p401眺望の状況では「現況とほぼ変わらない」、評価書(p416,417)では、「景観形成等の基本理念との整合性が図られる」と、
極めてあいまいな表現
である。野球場の外壁が見えないように高木を植えるなど、外苑地区のメインストリートの入り口にあたる場所なのだから、
事業者や東京都は、積極的に景観改善を目指すべきだ。

事業計画と環境影響評価のすすめ方について

1)国民・都民の大多数や来訪者(内外の競技者、スポーツ愛好者、旅行・観光客など)に関わる神宮外苑地区の事業計画が、計画段階では、国民・都民のほとんどには知らされなかったので、事業段階になって「寝耳に水」とばかりにクローズアップされ、賛否が渦巻く事態はおかしいのではないか。
まず、国民・都民の関心事になることが明らかなのだから、事前に十分に
周知し、賛否を含めて議論をしたうえで、事業計画を練るべきだ。

2)事業実施段階の環境影響影響評価の手続の前に、計画段階での説明・
手続き(計画アセス)が必要だが、本事業の場合は、対象外なのだろうか? 手間と時間をかけて、建物や施設については、調査・計画をし、都市計画手続を進めているのに、環境影響影響評価はおざなりでは困る。

1)の議論をすすめるためにも、これだけ大規模な事業計画なのだから、計画アセスを実施し、計画段階での環境影響影響評価資料を、賛否両論、議論の資料として活用してほしい。

デザイナー、美術家、料理家。イタリアはヴェネツィアに通い、東京においても小さなエネルギーで豊かに暮らす都市型スローライフ「ヴェネツィア的生活」を実践しています。ヴェネツィアのマンマから学んだ家庭料理と暮らしの極意を伝えます。