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神宮外苑再開発への意見〜12. 温室効果ガスと地区計画における容積率の考え方メモ

2022年4月15日。「神宮外苑地区市街地再開発事業」環境アセスメントに
対して「都民の意見を聴く会」が開かれました。
17人の公述人からは、この再開発計画に対し様々な角度の問題提起があり、「緑豊かな歴史ある景観を守るべきだ」と提案を含めた計画見直しを求める声が相次ぎました。どの意見も多様で知見に富んだ素晴らしいものでした。公述人の声を、多くの皆さんに知っていただきたいと思います。
以下に、
江国 智洋さんの意見を紹介いたします。

はじめに〜自己紹介と自分としての神宮の利用


*足立区に27年在住。52歳。仕事は、建築設計・まちづくりの仕事。
*主には東京都や23区からの依頼で、木造密集地での共同建替え事業の
コー ディネート。
*大再開発事業の数字と桁が2つ違うが、同じ仕組みの小規模な再開発事業を手 がけてきた。
*子どもが都立高校生で野球部に入っている。神宮第2球場は、東京都高校野球 の聖地。
*小さい頃から、毎年神宮球場でヤクルトの試合を楽しみに観戦してきた。
*高校野球の東東京では、数少ない本大会ができる球場が無くなる。
*秋・春の大会では、八王子や町田、昭島などへの遠征になり、都大会では
近隣 の西東京の学校に負ける可能性が高くなる。
*軟式球場は、少年野球チーム時代に使った事があり、無くなるのは非常に残念。地元のチームは、今後練習グランド確保に苦労すると考えられる。

ライフサイクルCO2で検証すべき「温室効果ガス」について

1)温室効果ガスの算出・検証は、ライフサイクルCO2で検証すべき
評価書案に係る見解書>p38
○施設の共用に伴い、新建物は20%以上の温室効果ガスの排出抑制が
図られる。
○また回答で、CO2の排出量は施設の用途が異なるため、現況との比較は
していない。
築42年の伊藤忠ビルが新しくなるので、設備等の進歩により新建物の
運用時に20%抑制するのは、当たり前
である。
○ライフサイクルCO2を考える時に、運用時だけでは不十分であり、仮説であるが以下のような考え方を示す。
*3000㎡規模の庁舎モデルでのライフサイクルCO2(※)は、建設時23%、運用時 52%、修繕・更新時22%、廃棄時3%である。
*"新・事務所棟は38階建て、延床面積213,000㎡で、現・伊藤忠ビル22階建て、101,941㎡の約2倍の床面積となる。
*新・事務所棟の運用時に20%抑制するのであれば、52%の20%で10.4%の抑制、実際床面積が2倍になるので、絶対量としては20.8の抑制と考えられる。
*しかし、新・事務所棟の建設に23%排出、床面積2倍なので46の排出をし、旧建物の廃棄に3%排出するので、合わせて49のCO2を排出する事になる。
つまり、20.8を抑制するために49排出しているので、トータルで環境負荷を増大させている。

2)使い続ける優位性~建替えしない場合のCO2排出量の比較
※先述の国交省報告書p4「事務所ビルの寿命実態が30~40年という
調査データ」 の考え方を基に
現建物を今後35年、もう1サイクル使い続けた場合、運用時52%、修繕・更新 時22%、最後に廃棄で3%、合計77の排出量となる
*新・事務所棟は床面積2倍となるため、建設時46、運用時104の20%抑制で83、 修繕・更新時44も20%抑制と考えて35、廃棄時6で、合計170となる。
⇒つまり、今後35年を考えると、77 対 170で、過大な環境負荷を与えることになる。地球への環境負荷を考えるならば、できるだけ高寿命に維持修繕していくべきで ある。

※「CO2排出量が増大する民生部門における新たなCO2削減技術の
策定調査報告書」
国土交通省住宅局 H20年p14

地区計画における容積移転について

地区計画によるこの大再開発事業についての指摘
R3.12.14 東京都、新宿区、港区、渋谷区 神宮外苑地区に係る都市計画案の
説明会 資料1から

*現在の新宿区・港区の用途地域による指定容積率は、青山通り沿いが商業地域で600%、その他の地域は、住居系でほぼ200%となっている。
*"地区計画での容積率は、事務所棟があるA-9地区は1,150%、複合棟Aが
ある A-8-C地区は900%
となっている。
スポーツ施設部分で余した容積率を、この2つの地区に集めたようだが、こん な巨大な容積率にする必要があるのか
*このような地区計画での容積移転の考え方は、都市整備局が令和3年に出した 「東京都再開発等促進区定める地区計画運用基準」に則るべきです。
*これによると「容積の適正配分」として、容積率の1.5倍までという基準があ る。このA-9地区ならば、従前600%×1.5の900%がMaxで、1150%はおかしくないか。
*またラグビー場などの床面積の考え方は、床面積だと1階建ての算定と
なり、 今回のような施設の場合、床容積率の考え方はそぐわない。
*"ボリュームで考えれば、ラグビー場は高さ55mの屋根付きで、階高4m
ビル で換算すると13階建てなので、平面積25,000㎡×13階で、325,000㎡の建物と考え るべきである。
"計画ラグビー場の床面積は65,200㎡なので、325,000㎡から引き算して、 259,800㎡分は、事務所棟・複合棟Aに容積移転できないことになる。
つまり、スポーツ施設だけで相当な容積ボリューム建物を造る事になり、移転 できる余剰容積率はなく、従来通りの商業地域600%と考えるべきである。

デザイナー、美術家、料理家。イタリアはヴェネツィアに通い、東京においても小さなエネルギーで豊かに暮らす都市型スローライフ「ヴェネツィア的生活」を実践しています。ヴェネツィアのマンマから学んだ家庭料理と暮らしの極意を伝えます。