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神宮外苑再開発への意見〜⑥「まちを市民がデザインする」ために、住民が主人公の長期的ビジョンを

2022年4月15日。「神宮外苑地区市街地再開発事業」環境アセスメントに
対して「都民の意見を聴く会」が開かれました。
17人の公述人からは、この再開発計画に対し様々な角度の問題提起があり、「緑豊かな歴史ある景観を守るべきだ」と提案を含めた計画見直しを求める声が相次ぎました。どの意見も多様で知見に富んだ素晴らしいものでした。公述人の声を、多くの皆さんに知っていただきたいと思います。
以下に、
千代崎一夫さんの意見を紹介いたします。

都市再開発法から逸脱した「神宮外苑地区まちづくり指針」は撤回を

神宮外苑地区再開発事業の「環境影響評価書案及び見解書」に対する意見を述べます。公聴人の先生たちには,お聞き頂く時間を取っていただき、ありがとうございます。また傍聴の皆様も雨の中をありがとうございます。報道の方もご苦労様です。
この会場は素晴らしいなと思いますが、あんなに広い外苑地区にはこういう施設は必要と思いますが、ないんですね。
この再開発事業は、一都民から見て決して環境を良くしていくものではない、ということをいくつかの点で指摘したいと思います。

この事業に対する環境影響評価の各項目がありますが、この事業を行なうとこのように都民にとっての環境が良くなるという評価が、基準になっているわけではありません、ここまでは悪くしてはいけないという基準でしかありません。
事業者の見解では何回も「『東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり指針』の「機能複合・高度化エリア」という上位計画に基づいて計画建物を配置しています。」と何回も述べています。(見解書P103)
しかし、さらに上位計画である都市計画法の目的は以下の通りです。

都市再開発法(目的)
この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。

ここでは、公共の福祉に寄与するような「土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新」と規定しているのだと思います。「健全でない高度利用」はしてはいけないというのが趣旨です。
このように進めば、他の地区でも、同じような「再開発」が進められ、
高層・超高層ビル・マンションが建てられていき、オープンスペースが
超高層ビルの谷間にあるという「箱庭」になってしまいます。
「神宮外苑地区再開発事業」の上位であるといわれている「『東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり指針』の都市再開発法からの逸脱を指摘し、撤回を求めます。
都市計画はドイツのように、もっと長期にわたってまちを見守る計画として考えるべきと思います。住民が主人公になる「まちを市民がデザインする」ためにはどのようにした良いかを考えて下さい。

環境影響評価の各項目について

1)大気汚染
いちょう並木は自動車を通さなくても良いと思います。
テレビで道路に写真撮影のために人が出て危ないなどの報道がありますが、あんなに長い並木で景色が良ければ歩道から出て、道の真ん中で写真を撮りたいと思うのは不思議ではありません。それほど素晴らしい景観です。
絵画館前広場の円周道も車の通行は不要と思います。
私も外国での自動車運転に慣れようと思って円周道路で右側運転の練習を
したことがありますが、入らなければならない車だけに制限すれば外苑全体がもっと素敵な場所になります。
外苑地区だけで自動車を減らしてもしょうがない、ともいえますが、
外苑に来たときに排気ガスの少ないことの良さを知ってもらうことも大切と思います。交通について、排気ガスが出るから自動車を入れないだけというのでは周辺に迷惑が拡散するだけです。
公共交通を便利に、また駅などへのアプローチも快適にできるようにする
ことが必要です。JR千駄ヶ谷の駅前の信号などは何の工夫もないような気
がします。公共交通を利用したくなるような仕掛けをもっと考えましょう。

2)騒音・振動
ラグビー場は屋根付きなので、屋外への著しい騒音の発生はないものと考えられるために、予測の対象外としました(P29)と、あります。
後楽園の東京ドームでも相当なものです。評価をしないなど専門家の意見とは思えません。コンサートなどの場合は実際の演奏時間だけでなく、事前も事後も、ものすごい音量で音楽が流れています。東京ドームに「鍵付き常設記録付き音量測定器」を取り付けて実情のデータをつくって欲しいです。

3)土壌汚染 4)地盤 5)水循環 6)生物、生態系
樹木は寿命があるのは理解できます。寿命が来たら植え替える、大きさは
そろわないかも知れませんが自然です。若しくは列で植え替えたいときは、一つおきとか次列を植えておき、ラインを移すなども考えられます。
どうして造園のレベルでは考えていると思います。
新宿御苑、神宮外苑、青山墓地に抜ける南北軸の緑地帯、外堀である弁慶濠、豊川稲荷、迎賓館、赤坂御所である赤坂御用地、神宮外苑、神宮内苑と代々木公園という東西軸の交差点が外苑です。
緑のクロスポイント、シンボルが神宮外苑です。ここを広げていくことこそが「人間のための都市再開発」といえます。

7)日影 8)電波障害 9)風環境
今までの高・層超高層建築物で、「風害が起こりますといった建物はなく」、みんな風害は起こりませんといっていたのに起こっています。
風洞実験の精度には疑問があります。
 人にどのように影響を与えるか、35年前に板橋区加賀という地域で14階建てのマンション建設時に風害が問題になり、風洞実験をおこないましたが、その時は1/300で、不正確だとして問題にしました。
今回は1/600では、子どもの頭高さ1,2mは2mmで、中低木3mの木で
ようやっと5mmです。本当は精度の問題より、科学がねじ曲げられているのではないでしょうか。

10)景観
「超高層から見下ろした外苑は素晴らしい景観です」と正直にいったら
いかがでしょうか。その向こうの同じように建てば眺望は阻害されてきます。こんな軍拡のようなことをやっていて、戦争がなくならないのと同様に、東京が良くなるわけがありません。
いちょう並木から絵画館へは景観は確保したといいますが、廊下みたいな
景観は喜べません。絵画館前の広場を並木らの延長スペースはオープンスペースとしては残るものの東西両側に建物が建設され、廊下状になってしまいます。
銀杏並木を歩いて行って抜けたところの広場の大きな開放感が、素敵なのです。そこが建物に挟まれた廊下ではそれがなくなってしまいます。
広大な敷地ですが、大きな施設が詰め込まれているので、近隣の集合住宅にも環境悪化を及ぼしマンション管理組合法人も現計画に対する反対を決議されています。壁面緑化など工夫の案でも示して欲しいです。

11)史跡・文化財
全体が史跡であり文化財だということを無視していることに、問題の出発点があると思います。これを広げることが史跡・文化財を守り、活かしていくことになります。

12)自然との触れ合い活動の場
人と自然とのコミュニティと読み替えて考えています。この地区において
本当の意味での自然はどこにもないと思います。
しかし都市では、長く存在しているもの、大きなもの、万人が親しみをもてるものを「自然」と呼ばざるを得ないと思います。それなのに、空も空気も緑も地面も、大地も地下水を含めて、今回の再開発はそのすべてを狭める
計画だと思います。

13)廃棄物 14)温室効果ガス
この地域での、エネルギー消費を減らすことが必要と思われます、一つ一つの建物を今までの同規模施設と比べて、省エネになっています、だけでは
話になりません。
今までよりオープンスペースは広く、建物は低くなっていく計画こそが、
温室効果ガス削減の真の再開発として求められています。

事業計画全般についての考え

ベルリンオリンピア・シュタディオンの廻りのバッファゾーン(緩衝地帯)は広く、スタジアム本体より広い広場です。
ロンドンのオリンピックスタジアムは、ここでいえば東京都体育館と
スタジアムの間の道を、新宿御苑から渋谷川河跡を渋谷駅まで運河にしたような風景の規模です。
神宮外苑もこの2つの国くらいの密度を低く計画されるのが良いと
思います。他の地域の条件を作りこの密度を下げていくことが望まれます。
都民全体のものであるオープンスペースを利用して超高層にしてつくる計画と考えていますが、どこからその要望が出されて、誰が了解をしているのでしょうか。神宮内苑と外苑という地域に超高層というのは、利益本位の新しい社殿を建てるような気がしています。

現状のほとんどの施設は歴史的な背景もあり、なじんでいる施設もありますが、高密度に各施設が詰め込まれ過ぎていると考えています。
解決として高層化しているだけでは能がありません。
私にとっては心地よいオープンスペースであると同時に、高校生になるとプールやスケート場に通いました。国立競技場の下にあった練習用プールは穴場で好きでした。温水風呂もあってとても快適でした。

東京23区の一人当たりの公園面積は他の国の大きな都市と比べれば本当に小さなもので千代田区の28.3㎡を入れても4.5㎡です。(2017年データ)
おとなりの韓国のソウルの半分以下です。
私の育った豊島区は、23区では最下位で0.7㎡です。
私の少年の頃は0.36㎡でした。60㎝角の座布団1枚です。
それでも23区中ビリではなく、22位でした。最下位だった中野区の間で、
逆転したのは刑務所の利用方法でした。
豊島区はサンシャインビルを建て、中野区は区民の憩う平和の森公園に
しました。最下位がどちらかという競争の話ではなく、このように一つ一つの計画を少しでも緑地を、少しでも公園を作っていく積み重ねが大切で、
それが都市の本当の価値を高め、CO2削減につながりSDGs的といえると考えています。

今回の再開発は近隣の町会からも、私のように東京都の他の地域からも反対されている計画です。
今からでも遅くないです。住民の声を聞き、その内容を委員会でご自身も
納得するまで論議をしていただき、東京をよくしていく先頭に立っていただきたいと思います。私たちも考えていることを広げていきます。
よろしくお願い致します。


デザイナー、美術家、料理家。イタリアはヴェネツィアに通い、東京においても小さなエネルギーで豊かに暮らす都市型スローライフ「ヴェネツィア的生活」を実践しています。ヴェネツィアのマンマから学んだ家庭料理と暮らしの極意を伝えます。