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神宮外苑再開発への意見〜11.次世代につなぐ「市民のためのスポーツ拠点」への見直しを求める

2022年4月15日。「神宮外苑地区市街地再開発事業」環境アセスメントに
対して「都民の意見を聴く会」が開かれました。
17人の公述人からは、この再開発計画に対し様々な角度の問題提起があり、「緑豊かな歴史ある景観を守るべきだ」と提案を含めた計画見直しを求める声が相次ぎました。どの意見も多様で知見に富んだ素晴らしいものでした。公述人の声を、多くの皆さんに知っていただきたいと思います。
以下に、
柳澤泰博さんの意見を紹介いたします。

市民スポーツ施設を排除し、商業施設優先する「スポーツ拠点」への疑問

建築設計事務所を構えております、柳澤泰博と申します。
中学時代にはバレーボールに、大学時代にはラグビーに明け暮れ、
そして今は剣道を楽しむスポーツを愛する者として、意見を述べさせて
いただきたいと思います。

今回の再開発の事業の目的には、『明治神宮外苑の「スポーツ拠点」としてのブランドを次世代につなげるべく、既存のスポーツ施設の役割を尊重しつつ、時代の変化に合わせたスポーツ施設の更新と新たなアクティビティの場を形成し、一体的にスポーツとの親和性が高い地区の形成を図る。』としています。
「スポーツ拠点」としてのブランドを次世代につなげるべく、既存スポーツ施設の役割を尊重しつつ整備にあたるということであれば、現在使用されている施設の利用状況や、利用者の意見などを踏まえた整備を行うべきです。現在利用されているスポーツ施設としての利用のし易さ、スポーツ観戦の
楽しさ高揚感、そしてスポーツが本来持つ競技としての特質を踏まえた施設環境の整備などを第一に考えるべきです。
しかしながら、今回の事業はスポーツ施設の整備と銘打ちながら、
市民スポーツとしての施設を排除し、ホテル、商業施設など収益施設を造ることが目的ではないかと思えます。
施設建設にあたり建設順の玉突き状態により、高校球児たちの神宮第二球場を潰し、テニスコート施設に押されるように、絵画館前にある軟式野球場、フットサルコート、など市民スポーツ施設を潰しています。

オリンピック時には苦肉の策として国立競技場のサブトラックとした、
絵画館前の緑地を恒久的なテニス施設とすることにより、結果として
仮設サブトラック用地を取り上げてしまい、国立競技場を陸上競技施設と
しては使えない
ものにしています。

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イチョウ並木を圧迫する野球場

野球場の配置については、複合棟Aと、球場にホテルが一体に計画されて
いることにより、本来の野球場部分がイチョウ並木側に近づいてしまい、
外野スタンドをイチョウ並木に沿ってちょん切ることまでしていますが、
それでもイチョウ並木を圧迫しており、イチョウ並木側からの完成パースの図(評価書案P401写真8。10-3)では球場がほとんど見えないように作図されていますが、実際にはもっと高く見え圧迫感があるはずで、断面図との錯誤があります。(見解書P8 図3.2-3 配置計画図 P9 図3.2-4(1)断面図)

野球場メインエントランスにはエントランス広場もなく、大変に窮屈な配置計画となっています。その為このようなエントランス動線では、これからゲームを楽しもうという高揚感と、ゲームを楽しんだ後の満足感を得るゆとりあるスペースとはなっていません。(見解書P15 図3.2-7 歩行者動線計画)野球場へのエントランス経路ついても、今回計画されている事務所棟、複合棟Aの高層ビルに阻まれており、大勢の入退場者の経路として大変に不備です。(同上歩行者動線計画)。

ラガーマンの憧れ、レガシーとして守られるべき秩父宮ラグビー場


ラグビー場について―大学時代にラグビーをやっていた立場から
私事ですが
・観戦者の思い出(バックグラウンドは土手でした)
・大学地区代表決勝戦
・創部50周年記念事業の件(関東理工系リーグ)

西の花園、東の秩父宮、と言われるように、秩父宮ラグビー場はこの場所
この施設だからこそ、ラガーマンの憧れの地でありレガシーとして守られるべきものなのです。
秩父宮ラグビー場は、先人たちの不断の努力と情熱によってこの地に
築き上げてきました。そして創建時から多大なご尽力をいただいた秩父宮様の御逝去にあたり、親王の遺徳をしのびその名を戴いたことに由来します。我々はこうした先人の熱い思い、積み重ねてきた歴史と日本のラグビー文化の殿堂として、この場所この施設を守り継承していく義務があります。施設の老朽化などによる、設備対策、バリアフリー対策、耐震性などの安全性、利便性には充分注意を払うべきですが、これまでと同様に改修改装により充分に対応が出来るものであり、日本スポーツのレガシーとして維持するべきものです。
そもそもラグビーは全天候型の屋外スポーツであり、その日の天候、風向、太陽の方向などを踏まえたプレーが求められるものです。
そこにラグビーフットボールの面白さ醍醐味があります。
ラグビーは室内競技ではありません。室内競技になってしまっては
それはもうラグビーと呼べる競技ではないとさえ思います。
ラグビーを愛する者にとって現在の秩父宮ラグビー場の全天空感は、
競技者としても観戦者としても必須の物なのです。

以上ここに今回の事業計画の根本的変更再考を求めるものです。

デザイナー、美術家、料理家。イタリアはヴェネツィアに通い、東京においても小さなエネルギーで豊かに暮らす都市型スローライフ「ヴェネツィア的生活」を実践しています。ヴェネツィアのマンマから学んだ家庭料理と暮らしの極意を伝えます。