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低緯度オーロラ発生、なぜ注目された?

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本記事では、先月8日から11日、日本でも見られた低緯度オーロラを取り上げます。オーロラは主に高緯度地域で見られるものですが、なぜ日本などの低緯度の地域でも見ることができたのでしょうか。本記事では、太陽活動の解説を基に低緯度オーロラ発生の原因や観測できた地域について詳しく紹介します。


低緯度オーロラはなぜ起きる?

オーロラは太陽活動によって発生する現象です。太陽活動とは、太陽の表面でさまざまな変化が起きる現象を指します。ここでは主な2つの太陽活動を紹介します。


  • 黒点の変化

太陽黒点とは、太陽の表面に現れる黒い斑点のような部分を指し、黒点には磁場が集まっていてフレアの活動が活発化します。太陽黒点の数は約11年の周期で変動し、周囲よりも温度が低いため黒く見えます。その中でも太陽黒点の数が多い時期は太陽活動が活発で「黒点極大期」と呼ばれます。一方、黒点が少ない時期は「黒点極小期」と呼ばれ、太陽活動は低下します。太陽活動の変化は地球の環境の変化にも影響する可能性があることがこれまでの研究によって指摘されています。因果関係はまだよくわかってはいないのですが、例えば、1650年から1700年頃には黒点がほとんど観測されず、この期間にヨーロッパや日本では寒冷化による農作物の不作で飢饉が頻発したという記録が残っています。


  • フレアと太陽風


出典:太陽・太陽のしくみ│宇宙ワクワク大図鑑│宇宙科学研究所キッズサイト「ウチューンズ」

太陽表面では、黒点の周りでフレアと呼ばれる爆発現象が頻繁に発生します。フレアが起きると、太陽の大気層である彩層が急激に明るくなり、温度約100万度の希薄なガスからなる太陽大気の最外層のコロナの温度は1000万℃以上に達し、強力な電磁波が放出されます。さらに太陽は、陽子や電子などの高温の荷電粒子(プラズマ)を太陽風として常に放出していますが、フレアが起きると放出されるプラズマの量や速度が増加することが確認されています。

詳しく後述しますが、太陽風が地球の大気に衝突することで大気が光るのがオーロラです。大規模なフレアが発生すると、通信衛星やGPSの位置情報、短波無線通信などにも影響が出ることもあります。
今回のオーロラの発生も5/8から5/11にかけて起きた大規模なフレアによるものでした。

以上の2つの太陽活動は頻繁に発生しますが、では、なぜ今回のオーロラ発生が注目されたのでしょうか。

それは、低緯度地域でもオーロラが観測されるという稀な状況が発生したからです。
低緯度オーロラの解説の前に、まずオーロラの発生原因について詳しく解説します。


出典:【太陽風との関係】オーロラとは?光る仕組みをわかりやすく解説! | ちーがくんと地学の未来を考える

前述で少々触れましたが、オーロラの元となる物質は「太陽風」です。この太陽風は、磁力を帯びている地球の磁場が最も強い北極・南極に引き寄せられていくのです。


出典:【太陽風との関係】オーロラとは?光る仕組みをわかりやすく解説! | ちーがくんと地学の未来を考える

そして、地球に到達して大気圏に入ったプラズマは酸素原子や窒素分子とぶつかり、それがエネルギーの高い状態(励起状態)になります。この状態は非常に不安定なため、安定した状態に戻る際に光を放出します。この光がオーロラの正体です。

プラズマは電気を帯びているため、磁力を帯びている地球の磁場が最も強い北極・南極に引き寄せられていきます。
通常はオーロラが北極や南極近辺の寒い地域でしか観測できないということも、このメカニズムで納得です。

ではそれを踏まえた上で、低緯度オーロラについて解説します。
前述の通り、オーロラは高緯度地域、例えばアラスカやカナダ、南極大陸などで観測することが可能です。しかし、大規模なフレアが発生し、大量のプラズマが地球に到達すると、地球の磁場が乱され、日本のような低緯度の地域でも見ることができる場合があり、これを低緯度オーロラと呼びます。オーロラは赤・緑・青の三色あり、高度によって異なります。低緯度オーロラは地上から約200kmの高さで発生する赤色のオーロラになります。

低緯度オーロラの観測

今回の低緯度オーロラは日本だけでなく、様々な地域、場所から観測されました。ここからは、世界で地上から低緯度オーロラを観測できた場所や宇宙からのオーロラの観測について解説します。

2024年5月8日から11日にかけて、大規模なフレアが連続発生し、日本をはじめ、アメリカ、イギリス(ストーンヘンジ)、フランス(モンサンミッシェル)、中国、オーストラリア、ノルウェーなどで低緯度オーロラが目撃されました。ハワイでも164年ぶりにオーロラが目撃されました。

この期間中、日本では11日夜から12日未明にかけて、北海道から兵庫県や愛知県に至るまで、広範囲でオーロラと見られる現象が観測されました。山の端や水平線上の空がピンクや赤紫色に染まり、その様子が写真に記録されました。


出典:天体写真ギャラリーの特集ページ

翌12日夜にもオーロラが発生する可能性がありましたが、全国的に雨や曇りの天気で観測は難しい状況でした。

ウェザーニュースでは低緯度オーロラの報告マップを出しています。
こちらを見ると、北海道から兵庫県や愛知県に至るまで、ピンク色のオーロラが綺麗に見えることが分かりますね。


出典:ウェザーニュース
  • イギリス(ストーンヘンジ)

出典:X
  • フランス(モンサンミッシェル)

出典:X

地上からのオーロラは幻想的で非常に綺麗ですね。しかし、地上観測では極域全体にわたって出現するオーロラの一部しかとらえることができません。では、宇宙から見たオーロラはどのように見えるのでしょうか?

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