産休育休中、日本茶インストラクター認定試験挑戦記① 受験感想文

日本茶インストラクターに認定された。
この1年は出産・育児の一方で、試験対策に楽しく明け暮れた。受験しようか迷っている方のために、そして自分の記録のために、振り返って体験記を書いておきたい。

ここで突然私事だが、2019年4月後半から産休、そのあと2020年4月まで育休を取ることが決まっていた。約1年間、会社に行かずにお金が入ってくる身分を手に入れたのである。ここで、自分の気分転換になるような自己投資がしたかった。せっかく会社に行かなくてよいのに、そして、育休取得後に保育園に入れずに失職する恐れがあるのに、会社の役に立つだけの勉強をするのは面白くない。将来の役に立たないかもしれないけれども、出産・育児・自分の健康に差し支えなく、楽しく勉強できるものがよい。

それに日本茶インストラクター通信講座はぴたりとはまった。毎年通信講座の開始は4月からで、産休に入るタイミングとほぼ合致する。通信講座だから自分のペースで勉強ができる。ひとまず通信講座だけ受けて、いけると思えば試験を受ければ良いし、無理そうだと思ったら試験は受けずに日本茶アドバイザーだけ取得すれば良い。(結果的には、えいっと気合を入れて受験することにした。)そして、お茶はおいしい。やればできる。やれば。

日本茶インストラクターとは、日本茶の中級指導者の民間資格。一次試験は筆記(マークシート5択)で、茶の歴史から栽培方法、製造方法、健康科学などなど、多岐にわたる分野からかなりマニアックな問題が出題される。二次試験は実技で、日本茶の鑑定と日本茶の淹れ方のインストラクションを行う。両方を突破すれば晴れて日本茶インストラクターとして認定される。ちなみに、公式ホームページによると合格率は約35%の難関。

難しい試験だが、公式問題集は一般販売されていないし、過去問も公開されていない。試験の受験料は21,600円(消費税8%当時)で、二次試験で実技試験を行う=その分人件費が必要であることを考えれば仕方がないが、一度受けて落ちて様子を見るにはちょっと高い。唯一の公式の受験対策である通信講座の受講料は71,280円(これも消費税8%当時)で、これもかなり高い。通信講座を修了すれば日本茶アドバイザー資格は取れるので、資格をお金で買ったと思えば良いのだろうが。高いけれども、これ以外に試験対策をするすべはなさそうだ。

中古で通信講座のテキストを手に入れるという手はあるが、個人が販売する以上、中身が揃っていない可能性がある。一応調べたけれども、そもそも流通している絶対量が少なく、手に入らなかった。

総じてお茶関連の資格はお金がかかる。茶道は言うまでもないし、ティーインストラクターという紅茶の資格もなかなかである。対面で教えるとそれだけのコストがかかる。日本茶インストラクターは通信講座だからこれだけで済んでいる、ということかもしれない。

育休明け初年度は育児と仕事の両立で忙殺されることだろうから、今回の受験で失敗しても、次回の受験はしないつもりだった。一発勝負である。試験直前は緊張し、試験直後は精神的に不安定だった。でも、総じて勉強中は楽しかった。

「サードプレイス」という言葉がある。自宅(ファーストプレイス)でも、職場・学校(セカンドプレイス)でもない、第三の居場所。私にとって、サードプレイスのひとつがバーだったけれども、妊娠してから行きづらくなった。酒が飲めないのだから当たり前である。そして、産休に入って会社に行かなくなると、セカンドプレイスもなくなった。というよりも、家事・育児をやる職場が自宅になり、ファーストプレイスとセカンドプレイスが合体してひとつになった。

公園、児童館、支援センターなど、母親の居場所は自宅以外にもある。でも、常に母親の顔をしていないといけないし、話題は育児のことに限られる。我が家の0歳児は大変ありがたいことに、丈夫で、体も大きく、よく動き、よく飲み、よく食べ、よく眠る。家族のサポートも得られ、ひとりで外出できる時間もある。きっと、悩みを共有するとママ友たちと仲良くなれるのだろうけれども、そもそも育児について悩んでいることがあまりない。

「離乳食、食べてますか? うちの子全然食べなくて……。」
と話しかけられて、
「めっちゃ食べてます! 食べるの好きみたいで!」
と答えて、気まずい雰囲気になってしまい、
(しまった。これは、「そうなんですね、大変ですね。」と話を聞くか、「うちも悩んでます。」って共感すべきだった! 教科書でやったやつ!)
と思っても、もう遅い。コミュニケーション、ムズカシイ……。

発達もどうやら目安よりやや早いのだけど、「もうずりばい上手にできるんですね!」とか言われても、それは私が教えたわけではなく、0歳児本人の素質と努力によるもの。もちろん、育児は手がかかるけれども、手をかけた分と子どもの成長は比例しない。

親が子どもの成長に依存するのはよくない気がしている。例えば、以前、東大に入れた親の教育、とかが話題になったりしたけれど、頑張ったのは子ども本人だろう。親の思う通りに育つ子どもが素晴らしいとは限らないし、子ども自身がなりたいようにしか育たない。なぜなら、子どもと親は別人格だから。

別人格なのに、子どもを通して母親として見られることが多いのが育休中である。その中で、日本茶インストラクターの試験勉強の時間は、間違いなく自分の努力を自分の成果として見られる貴重なひとときだった。私が頑張った分は私の物。目論見通り、育児の気分転換となったのである。

ツイッターでお茶界隈の方々とつながったのも大きい。これもサードプレイスである。試験の助言や応援の言葉をいただいた。孤独に勉強するよりもよほど心強かった。感謝。感謝。

茶業従事者でもないので、日本茶インストラクターがコストに見合う資格かどうかは分からない。(今でも、結構高い出費だったなと思っている。)でも、勉強した時間や勉強と称してお茶をいただいた時間は、本当に楽しい得がたいものだった。

(断り書き)
出産・育児は心身に負担がかかる大仕事です。この投稿を読んで、妊娠中・育児中に他のことをしなくてはいけない気分になった方には、妊娠している、育児している、それだけで大変なことですので、ご無理なさいませんように。また、身近な妊娠中・育児中の方に「あなたもせっかく休みなんだったら資格でも取ったら?」などと安易におっしゃいませんように。この投稿の執筆者はバカに体力があり、出産に際し母子ともに超健康、しかも家族は割と育児に協力的と、条件が揃っていたことを付け加えておきます。

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手習茶屋
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