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わたしと僕とゆめ

今日は、37℃台の微熱がずっと下がらなくて食欲もなくて、なんだか人肌恋しい日だった。

いつもは眠剤がなければ朝方まで眠れないはずなのに、22:30頃には瞼の重みに耐えきれず眠りについた。


こわいゆめをみた。

わたしは最初、わたしとしてゆめのなかにいて、今にも切れてしまいそうな大切ななにかを目の前にそのままにしていた。
ゆめのなかのわたしはマンションに住んでいたようで、上階の家に住むおばさんがやってきて“他のもっと頑丈なもので結ばれているから、もうその今にも千切れそうな糸は切っていいんだよ”と言いながら、わたしの目の前で糸をはさみで切った。
大切だったはずのそれは、下にすとんと落ちていった。

そのときのわたしはゲームをしていて、5000万スキルのキャラクターがいるのにも関わらず初心者セットはそのまま、最初にしておくべきレベルアップやスキルアップのようなものもそのままで、上階のおばさんから笑われていた。

その辺りからわたしは僕になった。

僕は会社で働く外国人、恐らくフランス人で20代くらい、なんとなく冴えないような印象で、自分に自信なんて少しもなかった。
ゲームをしていたことだけはわたしから僕に引き継がれていて、会社の社長のようなえらいひとにも同じように嘲笑されていたのをおぼえている。
そのえらいひとは金髪の髭をはやして、シルクハットのような帽子を被りマントのようなスーツを着ていた。
僕は、欠勤であるべき日が出勤表記になっているのを見つけて「なんでですか、」とそのひとに問いただした。
だけど、『いいじゃんいいじゃん、そういうものなの』なんて様子で適当に流されて、もうそれ以上は何も言えなかった。
隣にきた後輩の女の人は、「すみません、今日家にスマホ忘れちゃったのでお互いがんばりましょうね。」と一言添えて笑顔で手を振ったあと、すぐに会社を出てしまった。
ガラス張りのビルから出てすぐ、その女の人はポケットから忘れたはずのスマホを取り出して誰かに電話をかけている様子だった。
外はパリのような雰囲気で、僕はそこで「仕事」をしていたらしかった、街に繰り出してなにをしていたのか、わたしにはわからなかったけれど。
後輩の女の人は、男の人とカフェのような場所でいちゃついていた。
僕はそれを横目に見ながら、なにもできない、なにもしないような小心者だった。
街中を歩いている途中、周りのビルが崩れ向こうからは火花が散って、慌てて入ったお店の中もパズルのピースのような形に黒くくすんでそのままバラバラと崩れていった。

そこでハッと目が覚めて、僕は会社のデスクにいた。
横を見るとさっきの社長みたいなシルクハットのおじさんがにやついた顔で僕を見つめていて、今僕が見ていた夢の内容をすべて知っているようだった。そして、それに恐怖を感じて呼吸も整わないままの僕を冷やかして笑っていた。

僕は呼吸を整えようと必死に息を吸っては吐いて、そのままわたしになって、いつの間にか現実にもどってきた。


現実にもどってきた、つまりは眠りから覚めたわたしは、ゆめと現実の境目がわからず一体どのタイミングから起きていたのかも理解ができなかった。
そして、夢の中でのふたりの自分。“わたし”と“僕”はどちらも自分でありながらも別の存在で、そんな不思議な感覚から未だに抜け出せずにいる。

大切なものが呆気なく下に落ちていったときのかなしさや虚しさ。
人に笑われて、見下されてばかりの自分。
目の前に広がっていたはずの綺麗な街が、激しく崩れていくのを目の前にしたときの恐怖。
“わたし”のときも“僕”のときもなにも、本当になにもできなかった、自信がなくて小心者な自分への虚しさや憤り。
そんなものが心の中で渦巻いて、まだ眠気は残っているはずなのに眠れずにいる。そんな、深夜2:00。

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