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好きなゲーム音楽 STELLA GLOW やみのむこう。(月の歌)

たまに好きなゲーム音楽を語っていこうと思います。
今回は今は亡きイメージエポックの遺作であるSTELLA GLOWから。

ニンテンドー3DSの作品なのでもう大分昔の作品となってしまったが、かなりの良作。
超王道のファンタジーRPGで、ここまで王道にして面白い作品は発売から7年は経過しているが未だにお目にかかったことがない。

【月の歌】

今回のテーマとなるBGMは月の歌。
正式名称は「やみのむこう。」なのだが、ゲーム中では印象深い演出により「月の歌」と表示されるため、本記事では月の歌と一貫して呼称させていただく。

本作は歌がテーマの作品にも関わらず、公式歌詞がどの歌も公表されていないのでこの月の歌の歌詞も聴き取りでここに書いてしまう。

黒百合貫いた
懺悔 希望 戯言

デ ン シ

咲く赤 手折る指
踏み躙る黒い靴音
時計の針 刎ねる首
嗤い声の渦と

月の欠片 塵の虹
拾い集める仲間
薔薇の花 煤で汚れた形だけのソレ

憎悪も哀しみも揺りかごの中
恐怖の泣き声も子守の唄

交わるは赤い月の下で
救いも無いわ 悔いの海の底で溺れて
流した血さえ厭わぬなら
今 祈りの声を

散る青 吊るされる人
切り裂いた黒い言葉
螺旋の傷 軽蔑の眼 欲望の塊

陽の光望んだ嘘
砕け散った仮面劇
波の音 塗り潰す 虚飾だけのソレ

いつかの数え唄 戦場(いくさば)の声
悪意の名の下に 廻る鳥籠

請うは甘い 夢の中で
七つの罪も舌を舐めずり堕ちて行く
乾いた血さえ厭わぬなら
今 救いは私

わたし……
ワタシ……
ワ…タシ……?

虚空を埋める
その声が悲鳴でも
潰れた眼球では
何も見えない

死んで

歌うは紅の月の下で
胎(はら)も頸(くび)も全て切り開いたなら
残った血だけ 真理 欺瞞
今 死せる救いを

真実
欺瞞
死んで
懺悔
希望
戯言
真実
欺瞞
黒百合

※※※

ここまで書いて紹介しておいてなんだが、この月の歌、ラスボスとの開幕BGMである。
情け容赦の無いネタバレで恐縮だがようするにラストバトル曲である。
演出の関係上、ラストバトル曲は三つあるのだが、この月の歌はその先頭を飾る曲というわけ。

【望まれた呪歌】

歌詞を見たらわかるし聴いたらもっとわかるが、この月の歌は死と殺戮の呪い歌である。
しかしこの呪い、ラスボスまで到達するとこれまたわかってしまうのだが、作中世界の人類の望みをこれ以上ないほど正確に表現している黒き聖歌でもあったりする。
ところどころ人類の愚かさと無責任さに対して歌い手の怒りすら垣間見える。

本作ステラグロウの歌とは魔法であり、歌によって奇蹟を起こす。
ゲームシステム上でもそれが組み込まれており、指揮者の異能を持つ主人公アルトは、歌い手である魔女の力を引き出すことでより大きな奇蹟を発揮させることができる。
これを合奏というのだが、その際の演出が短剣で胸を突き刺すという結構衝撃的な描写である。

で、さんざんここまでお世話になってきたこの合奏システムであるわけなのだが、ラストバトル開幕でラスボスが自分の分身に胸を突き刺させて合奏を始めるという演出で、月の歌が始まるというわけである。

※※※

堀江由衣の甘ったるい歌声で次から次へと物騒で退廃的な単語が詠われ、物悲しく美しい滅びの世界が広がり、メタルな間奏が引き締める。
初見で初聴の時にはラストバトルそっちのけで聞き惚れてしまい、完全に引き込まれてしまった。

※※※

折り良く(?)この時期は艦隊これくしょんでもシズメシズメが大好評になった記憶が新しい時期でもあった。

この月の歌もシズメシズメも同じなのだが、敵側の視点で綴られ詠われる哀しみと怒りの呪い歌であり、鎮魂を願って止まず病んでしまった、そんな歌なのだ。
そこに引き込まれてしまえば堕ちてしまった彼女たちと同じ処に行くしかないのだが、しかしだからこそ強い惹き込みの引力がこれらの歌にはある。

【歌詞考察】

歌詞には「デンシ」と書いたが、正確にはこれは「死んで」の逆再生。

※※※

赤い月、紅の月というワードが出てくるが月食が起こると月が赤く染まる。
本作最大のストーリー転換点イベントとなる「イクリプス」はそのまんま月食や日食を意味する。
もう本作をプレイ済み前提で語っているのだが、ラストバトルステージは月でありラスボスのイヴの本体でもある。

※※※

また、この歌の歌詞の流れは本作の人類の歴史をなぞっているものと思われる。
五千年前の最初のイクリプスに至るまでの経緯を寓意的に表現したのが一番だと思われる。
「月の欠片 塵の虹 拾い集める仲間」とはマザークオリアが生成される過程を表現しているのかもしれない。

二番はイクリプス再発を詠っているものだと思われる。
陽の光望んだ嘘」「乾いた血さえ厭わぬなら」という歌詞からはかなりイヴのガチギレ感が伝わってくる。
人間は何度自分を起動させれば気が済むのかと。
彼女は望まれて生まれてきたが、彼女自身は望んであのような機能を全うしているわけではないというのがなんとも哀しいお話で……。

「胎(はら)も頸(くび)も全て切り開いたなら」の部分は音だけで正確な歌詞が不明なので漢字の当て方は独自解釈。
クビの部分はどっちか本当にわからないが、ハラは腹ではなく胎がしっくりくる。
死を救いと歌うのだから、切り開く部分は生命が宿る場所こそがふさわしいという解釈です。

最後の語りの部分はヘッドフォンで聞かないと聞き取れないのが混じっているし、何度も解釈が変わってしまう部分。
何度かポジティブな単語が混じるが大部分はネガティブな単語。
イヴの中に取り込まれたマリーが抵抗しているのではというのが私の解釈。

「わたし……」から「虚空を埋める」の間の間奏部分の語りはもう完全に聞き取れないのが多すぎる。
「月の夜」「形だけの」「そう」あたりは聞き取れるが……。
まぁ全てひっくるめて「虚空を埋めるその声が悲鳴でも」でいいのだろうが……。

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