見出し画像

美女⑩ー➀

麻里子は目を覚まし愕然とした
この人は狂ってる
信一を見て恐怖を通り越して
憐れだとそして自分の命はもう無いに等しい
と思った

麻里子は死刑台に居る気持ちでいっぱいだった
切り札として尖らせてたフォークももう無い
体がもう動くのを止めてしまった様だ
助けも来ないだろう
こんな僻地に私は畑に埋められ
人間薔薇にされるんだわ…
信一の手によって…

でも待ってこんな華奢な優男に人は殺せる腕力はあるのかしら?
下手したら私の方がいくら信一より背が小さくても勝てるかも?
大体注射しか彼には武器はない
まだ私に出来る事はないかしら
でも体が動かなきゃ意味はない
麻酔がきれるまで答えをみつけなきゃ
時間はない

それにしても彼は本当に華奢だわ
手先も細くてかよわそうに見える
彼って何者?

段々と興味を抱いてしまった

「漸く目が覚めたかい?」

信一は麻里子に声をかける

土をはらう仕草でパサパサと振り払う「
あっこれかい?さっき畑に行ってたんだ」

嘘ではなさそうだ
麻里子は咄嗟に自分を埋める場所を掘ったのかと思ったがどうやら違っていた

「麻里子 君に良い知らせがきたよ」

麻里子は嬉しさより先程同様膠着状態になった

「僕には先生が居てね そろそろ迎えに行かなきゃいけない これから向かう それに…僕は殺人鬼でもないよ 本当だよ」

麻里子は今度は信一の素直な心が垣間見え安堵した

何故だろう…

次に発せられる言葉が怖かった

「先生は僕とは違うから気をつけて逃してあげたいけど何人も助ける事は出来ない だから 麻酔が切れたら電話するんだ ここは山奥だから僕が電波の通る道路に着いたら滝田警部補か西条巡査を呼んでここにきてもらえるよう伝えるんだ 地図とスマホ置いとくね君の横に置いとくね 最後の約束だよ じゃあ僕は行くよ」

と伝えると信一はドアをわざと大きく開き
出ていった

半信半疑ではあったが数十分後指先がピクっと動いた

麻里子は慌ててスマホを取ると
電話する

ツーツーこちらは電波の悪い場所か電波の届かない場所にあります

苛立ちを隠せられなかったが
麻里子はスマホを握りしめ
とにかく電波の届く位置へあちこち移動した

外には出られなかったが
窓際ギリギリで漸く電波の届く所を発見した

地図の横には滝田警部補の名刺と西条巡査の名刺があった

漸く手元に届き電話すると

繋がらない

麻里子はまた苛立ちを隠せられなかったが
一呼吸して

かけ直す

漸く何回目かのコールで滝田警部補に繋がった

「もしもし 滝田警部補ですか? 
私の名前は新崎麻里子と申します 山小屋に数名拉致監禁されてました 地図読めないので現在地は解りません とにかく迎えにきてください!一刻も早く!家に帰りたい!」

最後は苛立ちから開放されたのか
それとも外界へと繋がった安堵感からなのか
助けがくるのかで大号泣した彼女だった

電話はまだ繋がったままだったが
もう充電も20%しかない

最後に聞こえたのは

滝田警部補の声で
 「必ず迎えに行きますから」
だけが届いた

電話を切った滝田警部補
近くの女性巡査に逆探知をお願いした。

地図には記載されてなかった

孤立無援かと思ったが
麻里子にまた電話をすることにした

着信音を聞いた麻里子
「もしもし? 滝田警部補どうされましたか?」

滝田警部補は麻里子はしっかり者と見て
「麻里子さん残念なお知らせをしないといけない。 落ち着いて聞いてほしい 先ず確認だが麻里子さん含め数名の女性が居るんだね?ここからが重要だよく聞いてほしい 何か目印になるものとかないかい?建物や風景とか落ち着いて周りを見渡してほしい できるかい」

滝田警部補の落ち着いた話し方で麻里子も落ち着きを取り戻し

周りを見渡した

目印と言えば人間薔薇だが先日の雨で流れてしまったと信一はがっかりそうに言ってたのを思い出した

それを伝えると

滝田警部補と西条巡査は目と目を合わせ頷いた
「麻里子さん あなたは勇気のある方だ貴重な情報をありがとう もう少しの辛抱だ 必ず迎えに行くから頑張ってほしい」

電話を切り
以前有彩と信一を追った時の山だと互いに認知したので

急いでヘリに乗った

上空からなら解るだろう

必ず身柄確保及び救出すると胸に刻み
トントンと叩いた


  次回 最終話

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?