Coupaの製品構成(ソリューション体系)~(2).パワーアプリ

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1-2.パワーアプリ(Power Apps)

コアアプリの周囲に位置し、さらにCoupaの機能を強化しているのが、一連のパワーアプリです。コアアプリを強化する機能群がどんどん追加・増強されていています。コアアプリとパワーアプリを合わせると、購買、特に間接材購買システムで保有しているべき機能の概観を把握することにもつながります。

1-2-1. Analytics(分析)

購買業務がどのように行われたのか、どこに改善点があるのかを、取引明細データを一元的に集計し、状況を可視化して、分析するための機能がAnalytics(分析)、特にSpend Analysisです。例えば、発注先サプライヤーを集約し、発注量を増加すれば、購買価格の低減につながります。あるいは、自社内で同じものを複数の部署でバラバラに購入している場合には、発注する部署をまとめれば、同じように発注量が増加し、有利な取引につながります。一夫で、部署単位に集計しみると、飛び抜けて購入額が多い部署が見受かることがあります。必要性がないのに予算があるからという理由でムダ買いが粉われているのならば、是正してもらえる可能性があります。取引明細データを、品目カテゴリー、サプライヤー、地区、購入部署(コストセンター)などの集計軸で集計してみると、このような改善に向けた様々な気づきが得られます。CoupaのAnalytic機能は、その都度のニーズに合わせて、インタラクティブに集計方法を指定して、集計レポートを作成することに加えて、事前定義したダッシュボードにその時点の状況をリアルタイムで表示させることもできます。

さらに2018年にAnalitics(分析)に機能追加されたのが、Spend Guardです。購買業務はお金に関わるものですので、どうしても不正行為が発生する余地があります。しかし膨大な取引データの中から、不正が疑われるデータを見つけ出すのは至難の業です。Spend GuardはAIの力も活用しつつ、不正の疑いがある取引を自動抽出してくれる機能です。このような機能は会計監査法人のデータ監査ツールなどとして発展してきました。Spend Gaurdは、監査法人ツールと同等もしくはそれ以上の機能を、自社の仕組みで提供し、不正の可能性を自動監視し、不正の発生を予防してくれる機能です。

さらにCpupaの各機能に組み込まれているインサイトと推奨事項(Insight and Recommendation)も、Analiticsの一部と考えてもよいのではないでしょうか。自社の目標に比して、あるいはCoupaのユーザー全体(Community Intelligence)に比して、どのような位置づけにあるかを明示し、それに対する推奨対応策を示してくれる機能です。

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またこれに加えて、次のような励ましのメッセージが出てきたりもします。

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1-2-2. Contract Lifecycle management (契約ライフサイクル管理)

パンデミックの影響から、紙の契約書を電子化する検討の必要性が叫ばれるようになっています。しかしその際には、登録されている契約書の標準雛形に対して誰がどのように修正を加えていったかの履歴が明確になった上で、適切な商人ワークフローを経て、都度のニーズに合った個別契約が締結できなければなりません。もう1つ重要なのは、契約書の期限(Expiration)管理です。いつの間にか契約期間が終了していたなどの事態が、紙の場合には起こりがちでした(特別な注意が必要でした)。このような契約締結から契約終了までの全ての段階を取り扱う機能が、Contract Lifecycle management(CLM) Standardとして従来より提供されてきました。さらに締結された電子契約は一元管理され、個別取引で必要な際にはいつでも参照可能です。

それに対して2019年に追加されたのが、Contract Lifecycle management(CLM) Advancedです。契約書文面内に使われている文言をAIの機能も活用して分析し、契約書のリスクを分析するなどの機能が強化されました。

1-2-3. Suppliers & Risk(サプライヤー情報&リスク管理)

見積を取得したり、発注できるに足るサプライヤー群が確保できていないと、購買業務は成り立ちません。このように適正なサプライヤーを確保しておくことは、購買部門の責務であり、サプライヤー管理の業務目的でもあります。

取引を行うサプライヤーに対しては、その情報を把握し、最新状態で管理している必要があります。それを担うのが Supplier Information Management (SIM)です。収取すべき情報項目は雛形が用意され、それに項目を追加して自社特有ニーズに合わせて調整できるようになっています。また、エンドユーサーが新規サプライヤー登録を申請したり、サプライヤーに登録情報の更新を依頼するワークフローも備えています。サプライヤーが更新を怠っている場合には、購買受注(PO)や請求書発行(Invoice) の際に、「まずは情報更新してください」とメッセージが出るなど、情報を最新に保つ工夫もされています。2020年のForreater Researchの評価ではCoupaのサプライヤー管理機能全体がが断トツ1位になるとともに、Supplier Information Management(SIM)機能が高評価を得ていました。

サプライヤーのリスク判定および業績評価に関わる部分を担当しているのがRisk Awareです。サプライヤーのリスクと業績(パフォーマンス)を統合して、サプライヤーの健全度(Supplier Health)として総合評価するという考え方をCoupaは取っています。サプライヤーの業績は過去の実績ですが、サプライヤーのリスクとは将来の可能性です。どちらか片方で評価してしまっては、片手落ちになりかねません。ゆえに統合して総合評価するという考え方になていると考えます。サプライヤーは、情報提供会社(サードパーティ)のデータと、Coupaユーザーの評価結果の双方を使って評価されます。ユーザーの皆が「いいね」しているサプライヤーは、その時点でリアルタイムに良いサプライヤーだと思います。逆に「いいね」されていないサプライヤーは危ないのかもしれません。みんなの評判は、今現在の状況をリアルタイムに表す「集合知(コミュニティ・インテリジェンス)」です。サプライヤーは「高リスク」、「信頼できる」、「ベスト」、「分類不能」の4つに区分され、その時点での取引額が各区分ごとにいくらあるのかなどが表示されるなどの管理機能が提供されています。

前述のRisk Awareでは取引を実施しているサプライヤーの良否判定をする機能です。しかし、そもそも取引してを良いのかをきちんと判定することが、昨今は企業の責任とされるようになってきました。例えば、米国の取引禁止リスト(Entity List)に掲載されているサプライヤーと取引してしまったら、その企業のビジネス実施に制約が加えられることがあります。またCSR面や倫理面で問題がある企業と取引していたら、企業の評判が著しく傷つきかねません。情報セキュリティに甘い企業と取引し、情報漏洩事故が発生した場合も責任を問われかねません。このように取引するにふさわしいサプライヤーなのかを買い手企業も判定する責任を負うという考え方が、一般的になってきました。英語ではQualificationなどと呼ばれまています(私は「適格性認定」という訳語を当てています。一方Coupaでは「Evaluation-Supplier On-boarding」などと呼んでいたりします)。
この適格性認定を行うには、社内やサプライヤーから判定材料情報を収集して、それを根拠に判断を下さねばなりません(そのためのワークフローが必要になります)。そしてその結果によっては、取引禁止と判定したり、条件付き許可(但し改善状況は監視)などの判断を下さねばなりません。Coupaは、このような業務に対応する機能としてRisk Assessを提供しています。
サプライヤーの新規採用時に財務情報などで適格性認定(口座審査)を行う日本企業は数多くあります。しかし、定期的に繰り返し実施しているところは少ないと感じます。しかしサプライヤーの状況や判定基準は時間の経過とともに変化するため、これでは危険と感じています。

1-2-4. Inventory (在庫管理)

オフィスの引っ越しの際に、各部門が各々のロッカーを開けてみたら、全体で驚くほどの文房具の山がでてきたなどという話もあります。予算があるので買いこんでしまい込んでおくのだけれど、姿が見えないのでまた買い込んで、結果は在庫の山という話を聞くことは少なくありません。それに対して、購入品の在庫管理をして、在庫があるものは発注せずに在庫から払い出すようにしよう。このような対応を行うための機能がInventory(在庫管理)です。おそらくどこかのユーザーからのリクエストに応えて付加した機能と思いますが、2013年頃から既に存在していました。かゆいところに手が届いた便利機能として、私のお気に入りです。

1-2-5. Strategic Sourcing (戦略ソーシング:Sourcing Optimization) 

例えば、異なる品物を複数種類購入するとします。サプライヤーから提示された値段は、各社ごとに異なります。品物Aは高いが品物Bは安いサプライヤーもいれば、品物Aは安いが品物Bは安いサプライヤーがいるといった状況です。このような条件下で、馴染みのサプライヤーX社には発注金額の4割がいくようにしたい。その際、各サプライヤーに品物それぞれをいくつずつ発注したら最安値になるのだろうか....このような制約条件を「ソーシングシナリオ」と呼びます。そして「ソーシングシナリオ」を最適に充足する発注配分を求めるような機能などを提供するのが Sourcing Optimizationです。
個々の品物のソーシング(見積取得)ではなく、品目カテゴリーマネジャーなどが一定の条件(ソーシングシナリオ)を設定して、担当品目と担当サプライヤーに発注をどう配分したら、最適な買い方になるのかなどを求めるときに使う機能です。手作業でExcelベースでは大変なことになりますので、自動的に最適解が出てくると重宝します。

1-2-6. Contingent Workforce (派遣・業務委託社員管理)

派遣社員や契約社員の稼働管理、その作業実績からの請求書発行などの業務を担当する機能です。日本の派遣業界のデファクトスタンダードになっている「e-staffing」に該当する機能を提供しています。

1-2-7. Treasury Management (現金及び流動性管理)

Coupaは、近年CFOへのアプローチを強めています。例えば、Coupa Payは実際にキャッシュを支払う財務管理の側面を担当しています。
その方向をさらに進めて、2020年6月にBELLIN Groupを買収して強化されたのが現金(キャッシュ)および流動資産・負債の管理機能です。経費支出(Expense)を含めた購買業務は、企業の外部支出の大部分を占めます。また、従業員の給与のように固定的ではなく、状況に応じて変動します。ゆえに購買業務の観点から始めて支出管理(Business Spend Management)に取り組んできたCoupaとしては、その路線の延長にある機能と位置付けています。ゆえにBELLIN Group買収のプレスリリースでは、CEOのRob Bernshteynがこうコメントしました。「現金および流動性の管理は、企業の支出管理戦略の不可欠な一部であり、サイロ化した機能として運用するべきではありません(Treasury can no longer operate as a siloed function as it is an integral part of a company’s spend management strategy)」。そのような考え方に基づいて、現在の手許キャッシュや短期資産・負債はどれくらいあり、また将来はどのような状況になるのかを的確に予測し(前述のように経費を含めた購買業務での支出がこれに大きく影響します)、必要な対策を打っていくための機能が提供されています。


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