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世界ランキング「PGRU」を大いに加速させるためのスマブラ大会、"EGS Cup" 開催の目的

WiiU時代の4年間に、プレイヤー世界ランキングといったシステムがアメリカから整備されました。その間は日本はまだまだ不遇な時代を過ごしたのですが、今回の ウメブラ Japan Major 2019 が、スマブラSP時代を通して競技を追究する日本プレイヤーにメリットをもたらすことを切に願います。 アユハ 恋心は超グリーディ スマブラSP:日本で今1000人大会が必要な理由

ウメブラJapan Major 2019や数々のプレイヤーの遠征を経て、12人の日本人選手がPGRUv1にランクインしました。その事実と、次期PGRUv2の集計方法変更のニュースを受け、スマブラ配信クルー「EastGeekSmash」設立者わをん (@wawon_ss)と私、てんぷらは今後TO(大会運営者)としての立ち回りを見直す機会を得ました。

EVO2019を戦い抜いたスマブラプレイヤーたちが、様々な思いを胸に続々と帰国報告をしていた頃の話です。

結論から先に述べます。
今期の "EGS Cup" 大会運営の目的の一つを、「コンスタントにB〜C Tierの大会を開催し、PGRUv2における日本人上位ランカーをさらに増やす」こととしました。

まずそのためには、PGRについて学ぶ必要がありました。 

** PGRとは **

Kudさんが簡潔な解説をツイートしています。もしまだ読んでいなければ、ぜひ目を通してください。

また、アユハさんのこの記事でも分かりやすく説明されています。こちらももしまだ読んでいなければ読んでください。
スマブラSP:日本で今1000人大会が必要な理由
http://ayuha167.github.io/blog/2019/04/23/
本記事の問題意識は、このアユハさんのブログで記された未来予想図の続きにあたります。

さて、PGRについて解説しましょう。
PGR (Panda Global Ranking) とは、半年に一回、世界のスマブラforWiiU競技シーンにおけるTop50をランキング化したものです。
これまでスマブラDXで3回(2018夏、2018、2019夏)、スマブラ4で6回(1-5期、PGR100)、スマブラSPで1回集計されています。
PGRは、各大会をランク付けします。最高ランクは「S Tier」、そして「A Tier」「B Tier」「C tier」と続きます。ランクが高い大会での勝利は、ランキングにより大きく影響します。
大会のランク付けは、「参加者数」「参加するPGRに値する(PGR-eligible)プレイヤー」によって決まります。(PGRv3からこの方式です。)
ランキングの集計方法は、数々の大会結果をアルゴリズムで処理しています。これはPGRの客観性を担保する重要なファクターであり、これによりPGRは信用に値するものとなっています。
アルゴリズムへの入力は試合の「勝ち負け」と「PGRに値する(PGR-eligible)プレイヤーかどうか」です。単純な順位だけでなく、全ての試合の勝ち負けが集計されます。誰が誰に勝ったのか、負けたのか、ということも集計対象となります。また、大きな大会であるほどその結果の重みがポイントに反映されることとなります。
集計アルゴリズムの詳細は公開されていません。プレイヤーが過度にランクを気にして大会への出場をコントロールしたり、ランキングがリークして興が醒めるような事態を避けるためだそうです。
ちょっと驚きだったのは、Bo3とBo5の結果は同じものとして扱われるということでした。Bo1の試合は集計されません。
ローカル大会、すなわち週大会と隔週大会は集計対象になりません。
週大会や隔週大会でPGRが変動してしまうとすると、地域格差が生まれてしまったり、逆に上位勢がUpsetを恐れて週大会に参加しなくなり、ローカル大会文化を破壊してしまったりすることを危惧しているそうです。
ローカル大会の定義がいまいち分かっていないので、有識者の方ご教授願います……。
大会ランク付けの方法(Tournament Tier System, 略してTTS)やポイント集計方法は回を重ねるごとにより良いものへとアップデートされてきています。

Twitterアカウント集
公式アカウント:@ThePGstats
ディレクター:@PG_suar
ビデオグラファー:@cooder_ssb4
などなど
Ultimate PGR Fall 2019 TTSの右下に載っている方々も。

PGR用語

X-Factor
公の意見を反映する指標。正の値が大きければそのプレイヤーをより評価する意見が大衆の中にあり、負の値が大きければその逆がある。公の意見を具体的にどう評価しているかまでは分かりませんでした。

Area 51
PGRを公開する前に発表される、一番Top50に入りそうで入らなかった惜しい人たち。その中でランクづけされていないので、実質全員51位です。今回ここは全員アメリカ人だったのもあって、日本ではあまり話題になっていなかったと思われます。私も今回調べて初めて知りました。 

前期「PGRUv1」

新作「スマブラSP」初のPGRでした。
期間:2019/02/01 ~ 07/04 (Albion 4まで)

前作PGRからの変更点として、「アメリカ」と「国外」で大会のランク付け方法が変わりました。大きな大会が開かれやすいアメリカと諸外国の格差を是正するため、国外大会で高Tier認定を受けやすくなるように参加者の条件が緩和されました。

新作初回のプレイヤーランキングであり、過去のデータが存在しないため、「PGRに値する(PGR-eligible)プレイヤー」は存在しません。よって、大会のランク付けは参加人数のみで決まっていました。

集計方法など公式の発信
PGstats公式
SmashWiki

今期「PGRUv2」

先日PGRUv2の集計方法の中でも、「PGRに値する(PGR-eligible)プレイヤー」に関する詳細が明らかになりました。
大会のランク付けに関して、「参加者数」「参加するPGRに値する(PGR-eligible)プレイヤー」のうち、どちらか高い方をランク付けのための基準として採用することが明らかになりました。
Kudさんのツイッターを参照してください。紐づいてるリプライツリーも全部参照。


つまり、参加者数の要件を満たしていなくとも、PGRに値するプレイヤーの要件を満たしていればC, B Tierの大会を開催することが可能になりました。

この仕様変更と日本勢ランカーが増えたことで、PGRUv2ではPGRUをとりまく環境は大きく変わりました。
国内ランカーが増えたことは、国内のPGRポイントの総量が増えたことを意味します。これにより、選手は国内の大会に出ているだけでもPGRの集計対象になりやすくなったと言えるでしょう。
また、大会ランク付けの基準が変わり、特に上位勢がひしめく関東近郊でB~C Tier大会を開く難易度が下がったことは、ポイント稼ぎの場である大会の母数が増えることに他ならず、さらなるポイント稼ぎが加速します。

B~C Tier大会で結果を残すことがPGRのポイント稼ぎになる根拠があります。しゅーとん選手はB Tierのスマバト2回、Stun Festでそれぞれ優勝しています。PGRUv1 Top10の選手のうち、B,C Tier大会の欄が優勝で埋まっているのはしゅーとん選手のみでした。高いランクを得るためにはS,A Tierの大型大会での華々しい活躍はもちろん重要ですが、コツコツと中規模の大会で実績を積み重ねることも大切だ、ということを示していると言えるでしょう。
Spring 2019 #PGRU: 10-1

また、この環境の変化は最上位層だけでなく、中堅上位層への追い風にもなり得ます。前期PGRUのTop50に入っていなくとも、PGRUを作成する上で考慮に値するプレイヤーは恐らくたくさんいます。惜しくもPGRUにランクインしなかったもののJPRでは上位層のプレイヤーや、普段の平日大会などで上位層に食らいついているプレイヤーが、PGRUを作成する上で考慮に値するプレイヤーへ、そしてランカーへと上り詰めるための環境を作りやすくなりました。

大会運営の方向性、 "EGS Cup"

EVO2019でこれだけ日本勢が上位を占めたにもかかわらず、PGRUではまだそうなっていない。競技としてのスマブラで日本勢がより活躍するために、大会運営者として私たちがやりたいこと、それを実現するための手段としての大会、そして最後に、参加者に知っておいて欲しいことを共有します。

私たちがやりたいこと

次期PGRUランカーとなる日本勢をさらに増やす。
日本国内でのPGRポイント稼ぎを加速させる。
日本国内の「PGRに値する(PGR-eligible)プレイヤー」を増やす。

実現するための手段としての大会、"EGS Cup"

PGR・JPR・大型大会の戦績に基づく招待枠を設けた、平日大会以外の大会として "EGS Cup" を開催します。

"EGS Cup" とは
海外大型大会のDay2を意識し、Top32以降をBo5(三本先取)にて進行した、96人規模のダブルイリミネーショントーナメントです。2019年5月6日に会場はRedBullGamingSphereTokyoにて開催されました。第1回 "EGS Cup" はあばだんご・ザクレイ・MKLeoの強豪を下しKEN選手が優勝しました。

PGRのポイントを多く持つプレイヤーの招待枠を設けることで、確実にC~B Tierの大会の基準を満たすことを狙います。

規模感としては、96~300人で開催します。理由としては、(1)既存の平日大会とは異なる大会であることを示すため、(2)大会のランク付けにはプレイヤーのポイントの要件さえ満たしていればいいとはいえ、さすがにある程度の人数は必要だろうと考え、大会に信頼性を持たせるために中規模の大会として開催します。

頻度としては、理想を言えば月に一度ですが、会場の空き状況に左右されるためにもう少し頻度は落ちます。月に一回よりも頻度が上がると「ローカル大会」と見なされ、PGRの集計対象から外れます。

直近では、"EGS Cup#2" が 8/25(日)に東京都中野 RedBullGamingSphereTokyoにて開催予定です。

参加者に知って欲しいこと

"EGS Cup" は上記のような目的を持った大会として開催します。

PGRのランカーを目指すプレイヤー、より強い相手と対戦したいプレイヤーは是非参加して、その実力を試してください。

一方で、 "EGS Cup" は初中級者を蔑ろにしません。スマブラで勝負をしたい全てのプレイヤーの研鑽と交流の場所という機能を、"EGS Cup" は相変わらず持っています。どうか「少ない参加枠を初心者の自分なんかが取ってしまっていいのか」などとは考えないでください。招待枠を設定し、参加枠を管理するのは運営の考えるところです。思う存分、勝ち取った権利を楽しんでください。

ともあれ、様々な大会がある中で、"EGS Cup" はPGRを志向することに高い優先順位を置いた大会であるということを知っていただけると嬉しいです。

なお、既存の大会であるスマパや上スマは据え置きます。

おわりに

以上が、今冬のGenesis 6を経て、日頃大会を開き続け、今夏のEVO2019を経ていてきた私たちの考えと大会の方向性です。

ひとまず次回のGenesis 7まで。

次期PGRUが楽しみです。

[てんぷら(わをん共著) 2019/08/10]

参考文献

恋心は超グリーディ「スマブラSP:日本で今1000人大会が必要な理由」
http://ayuha167.github.io/blog/2019/04/23/
Ultimate PGR Fall 2019 TTS
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1k6oeHKoBq55X7QCD95dR_bVNJBP3g_2Zy9GngPqBTns/edit#gid=1116292982
Spring 2019 #PGRU Frequently Asked Questions
https://www.redbull.com/us-en/pgru-spring-2019-faq
Spring 2019 #PGRU : 10-1
SmashWiki
https://www.ssbwiki.com/Panda_Global_Rankings
https://www.ssbwiki.com/Panda_Global_Rankings_Ultimate
https://www.ssbwiki.com/Spring_2019_PGRU
PandaGlobal -Youtube
SmashCenter Ep. 004 - Smash Ultimate Results Recap Weekend of 2.1-2.3!
https://www.youtube.com/watch?v=Ysbs4buArJk&t=323s

まだ全部は観ていないけど役に立ちそうな動画
PGRU Roundtable - 10-1 Review + PGR Q&A on Smashcenter ft suar, coney
https://www.youtube.com/watch?v=ebeuldtY4sw&t=10s


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