続ける技術2

例えば、お菓子が好きな人がお菓子を我慢するのは大変で、私もしょっちゅう誘惑に負けてスナック菓子を一袋まるごと食べてしまうし、でっかいアイスなんかも一口だけのつもりが一箱完食し、最後はフタの裏までなめてしまうぐらいだ。「もうこれ以上食べない!」と決めてゴミ箱に捨てたかっぱえびせんを、ゴミ箱から拾って食べたこともある。そんなバカみたいに食べてしまうのは、今日一日食べても、体にすぐに異変が起こるわけではないからだ。

もし、お菓子をちょっとでも食べたら即座に15キロ太る体質の人がいたとしたら、おそらくその人はお菓子を食べない。そしてその状態が3ヶ月も続けば、食べないことが普通になるだろう。

しかし「お菓子を食べると太っちゃうし、将来の健康に悪いんだよなあ」というぐらいだと、「まあ今日は特別だから」とか色んな理由をつけて食べてしまう。実際に、今日一日だけお菓子を食べても、それだけで急激に太るということはないし、目に見えて健康状態が悪化するということもない。実はそこが一番の問題なのだ。

瞑想も同じで、別に今日瞑想しなかったからといって、目に見える損があるわけではない。まあ、明日からやればいいか、てなもんである。で、明日にも同じことが起こる。基本的に、今日と明日の自分は同じ人間だから、今日あることをある理由でやらなかった場合、明日も同じ理由でやらない可能性が高い。明日も全く同じようにやらない理由が出てくるし、明日一日やらなかったからといって大した違いはないのは今日も明日も同じなのだ。

しかしそのようにして、今日やらないことが明日やらないことに繋がり、明日やらないことが明後日やらないことに繋がると、実は、今日一日やらないことが向こう数ヶ月やらないことに極めて近いことに気が付く。今日と明日の自分が基本的に同じ人間だとすると、今日できないことは明日もできない、その繰り返しで数ヶ月間やらない可能性が高いわけである。

だから、今日の私がやるべきことをやらなかったら、私は向こう数ヶ月間ずっとそれをやらないのだ、と考えることはそんなにおかしくない。お菓子の例で言うと、今日お菓子を我慢せずに食べたら、多分明日も食べる。数ヶ月間は平気で食べ続けてしまう。さすがに数ヶ月も食べ続けると、健康に影響が出てくるだろう。そう考えると、今日一日ぐらい、の恐ろしさがわかる。

・・・うん。理屈はそうなんだが、こんな理屈をいくら考えても、やらないときはやらないし、食べるときは食べる。「明日の自分は今日とは違う意志の強い自分である」と考えるバイアスが人間の中にあって、今日一日やらないことが、明日以降数ヶ月やらないことと同じだ、と真剣に考えることができないからだ。

こんなことを頭の中でいくらこねくり回しても無駄なので、私は思い切ってこんな風に決めて、2020年11月6日の日記にデカデカと書いた。

「この国にいる間、一日の例外もなく2回瞑想をやると決める。瞑想をやったら、その証としてビットコインにほんのちょっと投資する。逆に瞑想をやらなかった場合、どんな理由であっても、1回につき8万円を自分が最も忌み嫌う団体に寄付することにする」

つまり、「一日ぐらいいいか」をなくすために、やらなかった場合に自分が明確に損をするように自分で先に決めておくわけだ。コツは、本当に自分が大嫌いで最も応援したくない団体に、自分が明確に痛みと後悔を感じる金額を寄付する、ということである。絶対嫌だ、と思うルールを先に作っておく。

逆に、ちゃんとやったら投資が積み上がっていって、「これだけやったのだなあ」ということが目に見えてわかる、という仕組みを作る。私は別にビットコインのこととか全然詳しくないし、投資もほとんどやったことない。たまたま私の仲の良い友人でビットコインの熱烈な信者がいて、あまりにも熱く語ってくるので、お付き合いで投資してみることにした、という感じである。投資対象はなんでも良くて、やるべきことをやった回数が数字で積み上がっていくようなものならなんでもいいと思う。100円玉貯金のようなイメージだ。

本来、瞑想ってこんな感じで自分を縛り付けながらやるようなものでは絶対ないんだけど、どんな形であってもやらないよりはやった方がいいはずだ。めちゃくちゃ邪道感があるが、このルールを自分で決めたその日から、一回も飛ばさずに一日2回、計4時間の瞑想を数ヶ月欠かさずにやることができた。なんせ、やらなかったら8万円が吹っ飛ぶ。しかも役に立つ使われ方をするのではなくて、自分が一番嫌いな人たちにそのお金が渡って、不愉快極まりない思いをすることになる。そんなのは絶対に嫌なので、やらない言い訳を考えることがなくなった。言い訳をしても8万円は払わなければならないから。

逆に、めちゃくちゃちょっとずつだがビットコインの投資残高が増えてくると、「おお、これだけ瞑想の日数を積み重ねてきたのだな」と分かって、励みになった。

少なくとも私には、この方法は明確に効いた。その他のさまざまな方法論は全く効き目がなかった。私みたいな性格の人もいると思うので、共有しておきます。コツは、この8万円は絶対に払うというということを、真剣に決めておくこと。私は少なくとも本気で払うつもりでいたし、「絶対応援したくない」と思える団体も事前に見つけていました。結局一回も欠かさずやったので払わなくてすみましたが、ここがナアナアになっちゃいそうな人は、先に友達に預けておくとか、もうちょっと工夫が必要かも。


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