Spy & Family に今更ながら

はまっている。

ストーリーとしては正直穴だらけである。世間に隠匿した政界の大立者というターゲット設定も、最愛の姉が1年前に結婚していたという話やロイド・フォージャーが”妻”と死別して娘を育てていたという話を、国内治安とスパイ摘発を本業とする者が鵜呑みにしているとか、選抜試験なのに在校生をワザとどぶに嵌めて、それを手助けしようとする者が服を汚したら落とすつもりだという判断基準とか、まあよくぞここまで矛盾しかないシチュエーションであるのに、そのあたりに突っ込む者は殆どいない。

確かに自分も面白がっているし、他人も同様である。

そして、OPの『ミックスナッツ』の歌詞をちゃんと読んで、腑に落ちた。

ピーナッツは"peanuts"とはいえ、実際には草であり、花が地面に落ちて土の中で実となるものだけど、nutsは複数年生きる樹木が成らせる実であるということ。決して知らなかったわけでもないけど、この歌を聴くまではすっかり忘れていたその真実。そして、内面には決して他に漏らせない秘密を抱えている人々は少なくない。、例えば精神的な不調、要求されていた労働適性の欠如、婚姻外のセックスなど・・・。そういう人々の、それでも問題無き生活を生きているかの如く身を処していく(幸せのテンプレートの上)という苦しみ。

このアニメとマンガは、結局の所語っている事は
今は仮初めの関係だけど、真実が知れるまでのつかの間でも、自分を信頼してくれる他人がいるという事こそ貴い時間である。そして願わくば、その”仮初め”が、十分長い時間保ってくれたら、と。
そして一旦神(作者)の視点に立ってしまった読者は、キャラ達の相互誤解をハラハラしながら見守りつつ、この仮初めをどこまでも見届けたいという気持ちを共有して、この作品を愛しいているということである。

この愛すべき作品と作者・享受者がいる空間を、いつまで維持していけるのか。その破綻はむしろ必然に思える(前提の矛盾!)からこそ、とてつもなくわくわくしながら見守っている。この作品こそ今の空気感を切実に伝えていると感じる。

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